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2026年3月31日
株式会社オーディオストック(岡山大インキュベータ卒業)

テクノロジーの力を活用しあらゆるクリエイターが活躍できる世界をAudiostockによって実現する

株式会社オーディオストックのロゴ画像

SNSや動画プラットフォームの広がりにより、映像コンテンツは以前にも増してあふれ、誰もがより日常的に触れる存在となりました。一方、映像に欠かせない音楽は、利用者にとっては権利関係がわかりにくく、制作者にとっては収益化が難しいという状況がありました。同社は、この構造的背景を踏まえ、音楽をより手軽に使い、届けられる仕組みを構築しました。現在では100万点を超える音源が集まり、クリエイターを支えています。サービス誕生の背景と今後について伺いました。(2026年3月取材)

インタビュー

  • お話
  • 株式会社オーディオストック(岡山大インキュベータ卒業)
    代表取締役社長 西尾周一郎氏

起業、会社のおいたち

会社設立の経緯をお聞かせください

幼少期から楽器が身近にある環境で育ちました。エレクトーンを約10年間習い、中学からはギターもはじめました。次第に作曲にも興味を持つようになり、自分で作ったりもしていました。大学入学後も2人組のユニットでバンド活動を行い、CDも自主制作していました。一方で、父親の仕事の関係で、幼い頃より自宅にパソコンがあり日常的に触れていました。大学ではプログラミングを学び、その延長で音楽投稿サイトを立ち上げました。当初は収益化を目的としたものではなく、純粋に楽しく、夢中になって取り組んでいました。

西尾周一郎 代表取締役社長

そうした経験を重ねる中で、「自分が音楽を作りたい」という思いは、次第に「音楽家を支援したい」という考え方へと変化していき、起業を意識するようになりました。その後、キャンパスベンチャーグランプリ中国というビジネスコンテストにて受賞の機会をいただき、賞金として得た100万円を資本金に、株式会社オーディオストックの旧社名である株式会社クレオフーガを設立しました。

最初はどのようなビジネスモデルだったのでしょうか

当初は、音楽コンテスト事業を展開していました。企業から対価をいただき、指定されたテーマに基づいて楽曲を募集し、コンテストで入賞した楽曲をその企業の使用楽曲として採用する仕組みです。当時、大手料理レシピサイトが実施していたコンテストモデルの「音楽版」をつくりたいと考えていました。

しかし、事業の成長を見据えたとき、レシピコンテストとは異なり、企業が楽曲制作に割ける予算規模は限られており、市場規模に限界があることが明らかになってきました。こうした中で事業転換を検討するようになるなか、多くの企業から共通して聞かれたのが、BGMなどの楽曲を利用する際の著作権処理が非常に煩雑だという声でした。

一方で、音楽家は優れた楽曲を制作できても、必ずしもプロモーションや営業が得意とは限らず、自ら音楽を売り込みに行ける人は多くありませんでした。そこで、企業と音楽家を適切につなぎ、著作権の扱いをシンプルにできれば、大きな商機が生まれるのではないか。そう考えたことが、現在のビジネスモデルへ転換するきかっけとなりました。

事業の展開と現在

御社のサービスの特徴を教えてください

Audiostockは、映像制作やイベント、音効業務などでBGMや効果音を必要とするお客様に向けて、ロイヤリティフリーの音楽を提供するプラットフォームです。現在、100万点を超える音源を掲載しており、映像用途を中心に幅広く利用されています。

  • 同社 サービスページ

東京オリンピック以降、「和」をテーマにしたサウンドの需要が高まっています。たとえば、観光地の事業者が日本のグルメや文化を紹介する映像を制作する際、映像の雰囲気に合った音楽を探す目的でAudiostockが活用されています。「和風」といった抽象的なキーワードからも楽曲検索ができる点も強みの一つです。海外のBGMプラットフォームでは、日本風をうたった楽曲を探したとしても、実際にはイメージとかけ離れたサウンドが出てくることがあります。当社では、日本と認識できるサウンドをとりそろえており、直感的に探すことができます。

一方、音楽クリエイターにとっては、自身が制作した楽曲をAudiostockに登録し、審査を経て掲載されることで、楽曲が販売された際に収入を得られる仕組みとなっています。音源のジャンルも、BGMや楽曲、効果音まで多岐にわたり、クリエイターも色々な方がいます。特定ジャンルを得意とする方もいれば、ご自身の世界観を表出されている方、プラットフォームのニーズに応じて楽曲を制作する職人気質の方もいます。音質については一定の基準で審査を行いますが、音楽性そのものを評価するものではないため、プラットフォームの楽曲には多様性が生まれています。

  • 同社ホームページ BGM音源の一覧

ユーザーから求められている音楽のイメージはどうやって具現化していくのでしょうか

お客様との日々のコミュニケーションの中で、どのような音楽を求めているのかを丁寧に聞き取るようなことも行いますし、展示会などのイベントの場での何気ない会話から、映像のイメージや音楽に対するニーズを探ることもあります。

加えて、当社では月に一度のペースでレコーディングを行っています。クリエイターから募集した楽曲をもとに、プロの奏者をスタジオに招き、演奏していただきながら録音を行うスタイルです。その場で奏者の意見も取り入れながら、ライブ感のある曲づくりを進めています。

さらに、データ分析も活用しています。例えば、10月が近づくと「ハロウィン」といったキーワードの検索数が増えるなど、季節やトレンドに応じた需要の変化が見えてきます。こうしたマーケティングデータをもとに、求められそうな楽曲を予測し、レコーディングに反映することもあります。

プラットフォームビジネスを立ち上げるうえで、どのような苦労がありましたでしょうか

Audiostockのサービスを開始したのは2013年10月です。そこから事業が本格的に起動に乗り始めたのが2018年頃で、この最初の約5年間は非常に大変な時期でした。立ち上げ期には、コンテンツを集めるのにも苦労しました。音源が少なければユーザーは集まりませんし、ユーザーが利用しても「思ったより曲数が少ない」と感じられると、継続的な利用には繋がりません。

当時は潤沢な資金もなく、案内メールを送ったり、イベントに足を運んでチラシを配ったりと、いわゆる泥臭い営業活動も含め、できることはすべて試していました。2026年の今でこそ、YouTubeやTikTokなど個人がクリエイターとなってコンテンツを配信するサービスが盛んですが、2013年の当時はまだまだ今ほどではありませんでしたから。我々は音楽がもっと使われる時代が来るはずだと思っていたけれども、そうかといって、自分たちが思い描いている時間軸で都合よくその未来がくるはずもないので、途中で資金ショートしかかったりと、苦しい時期が続きました。2018年頃になると、1ユーザーがもたらす利益が顧客獲得コストを上回る水準への兆しが見えてきました。月数十万円を投じていた広告費に対しても、有料会員の獲得数で採算が合うようになってきました。さらに広告投資を重ねることで、売上が大きく伸びる見通しも立ち始めました。

この成長フェーズを加速させるため、同年にベンチャーキャピタルから約3億円の資金調達を実施し、Audiostockの事業に本格的に専念できる環境が整いました。

そしてこれから

今後の展開について教えてください

現在、オーディオストックでは海外市場に向けたサービス展開にも取り組んでいます。海外は音源サービスの市場規模が大きく広がっています。「日本の優れた音楽家のコンテンツを世界に発信していく」という点は、私たちのビジョンの一つでもあります。最初は、日本らしいサウンドを切り口に、海外で認知の拡大をできればと思います。

一方で、海外展開の難しさも強く感じています。当初は、国内版のAudiostockをベースに、言語のみを切り替えた形でサービスを展開していましたが、実際に利用してもらう中で、海外ユーザーが求めている体験は日本と異なることが明らかになってきました。そこで現在は、海外向けにUI(ユーザーインターフェース)の刷新を進めています。

  • 海外版ホームページ

たとえば、検索の仕方一つをとっても、日本ではキーワードを細かく指定して探すユーザーが多いのに対し、海外ではカテゴリーを起点に楽曲を探す傾向があります。また、海外ではサービスページの背景に黒を基調としたデザインが好まれるなど、ビジュアル面の嗜好も異なります。そのため、サムネイルを含め、全体の表現を海外市場に合わせて調整しています。競合の多い市場ではありますが、AdobeExpressやTikTokといったグローバルサービスとも提携しながら、試行錯誤を重ねつつ、海外での展開を進めていきたいと考えています。

インキュベーションの利用

入居のきっかけ、入居してよかったこと

岡山大インキュベータは、当社にとって開発部の拠点として機能していました。エンジニアが常駐し、ソフトウェアのプロダクト開発を行う場として活用していました。会議室では株主総会を開催することもあります。同時期に入居していたインターネットサービス企業との交流が生まれたり、岡山大学の学食を利用できたことも良かったです。
加えて、銀行から出向されていたインキュベーションマネージャーの方がいらっしゃり、融資に関する支援を受けられたことも大きな助けとなりました。採用面では、大学内に岡山大学の学生向けアルバイト募集を出すことができ、学内掲示を比較的低コストで活用できた点も魅力でした。

今後インキュベーション施設を利用する方へのメッセージ

やはり「環境」がとても良かったです。落ち着いて開発や研究に取り組める環境が整っておりました。インキュベーションマネージャーによるサポートも充実しており、入居者同士の交流もあります。岡山大学の学生は優秀です。外部で採用活動を行い、一からコストをかけるのであれば、大学内に募集を出して学生を採用する方が効率的なこともあります。そうした点も含めて、インキュベーション施設の活用は非常におすすめです。

会社情報

会社名

代表取締役社長

西尾周一郎

所在地

岡山県岡山市北区富田町1丁目6-10 東光第一ビル2F

事業概要

音源ライツビジネスプラットフォームの運営

会社略歴

2007年10月

株式会社クレオフーガを設立

2013年10月

ストックミュージックサービス「Audiostock」リリース

2019年8月

「Audiostock」海外版リリース

2020年5月

「Audiostock」TikTokへ楽曲提供を開始

2020年7月

株式会社オーディオストックに会社名を変更

2022年12月

「Audiostock」が第4回日本サービス大賞「総務大臣賞」を受賞

2024年6月

「Audiostock」コンテンツ制作アプリ「Adobe Express」と連携を開始

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