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2023年3月29日
リジェンティス株式会社(農工大・多摩小金井ベンチャーポート卒業)

ポリリン酸の機能を応用したオーラルケア製品を市場投入

リジェンティスロゴ

歯周病は、日本人が歯を失う最大の原因とされながら、その治療薬がないのが現状です。農工大・多摩小金井ベンチャーポート卒業企業のリジェンティスは、生体内に存在するポリリン酸の働きに着目し、その作用を高める技術を駆使したオーラルケア製品で高齢化社会の健康維持に寄与することを狙います。同社の代表取締役であり、技術開発を主導した柴 肇一氏に、製品化に至る経緯と将来展望について伺いました。(2024年1月取材)

インタビュー

お話

[em]リジェンティス株式会社[/em]
 (2008年10月から2011年6月まで農工大・多摩小金井ベンチャーポートに入居)
[em]代表取締役 柴 肇一氏[/em]

起業、会社のおいたち

柴 肇一 代表取締役

[em]会社設立の経緯をお聞かせください[/em]

北海道大学に助手として赴任した後、1993年に「DNAの複製」でノーベル生理学・医学賞を受賞したArthur Kornberg教授がいた米Stanford大学医学部に博士研究員として留学し、ポリリン酸の基礎研究に取り組みました。ポリリン酸は、複数のリン酸が鎖状に結合した生体高分子物質ですが、当時は、人の体内でポリリン酸がどのような働きをするかは未知の状態でした。
 北海道大学に准教授として戻ってからも継続して研究を重ねていく中で、ポリリン酸には生体の組織再生機能を促進する働きがあることが分かってきました。そこでポリリン酸を再生医療の分野で応用すべく「産学官連携イノベーション創出事業」など国の補助金事業のバックアップの下、さらに研究開発を進めることになりました。そのまま大学にいてもよかったのですが、当時、再生医療の分野では誰も注目していなかったポリリン酸の可能性にかけてみようと考え、大学発ベンチャーとして2004年1月に起業しました。社名の「リジェンティス(RegeneTiss)」は、組織再生の意味を込めて、組織(Tissue)と再生(Regeneration)を逆にしてつなげました。

[em]当初は組織再生の再生医療薬開発で立ち上げたのですね[/em]

組織再生促進のターゲットとして、まず人々のニーズが高い歯周組織再生に取り組むことを考えました。歯周病は長年の国民病で、歯を失う原因の第1位となっていますが、一度衰えた歯周組織を再生させる治療薬はいまだにありません。もし、歯周組織が再生し、歳をとっても歯が抜けない歯茎が維持できれば世の中に大きく貢献できる、そういう想いがありました。

事業の展開と現在

[em]そこからどのようにして製品化につなげたのでしょうか[/em]

まず、ポリリン酸を配合した歯周組織再生誘導材料(医薬品)の開発を目指しました。ただ、医薬品として承認を得るためには、膨大な費用と長い開発期間が必要です。提携できる製薬会社もなかなか見つからない中、承認されても歯科医向けのビジネスでは市場の拡大にかなりの労力がかかる懸念もあって、このまま医薬品開発を進めるのは難しいと考えるようになりました。せっかくのポリリン酸の機能をいち早く世の中に広めたいという想いもあり、ハードルの高い医薬品開発はやめて、承認が取りやすく一般市場で販売できる医薬部外品のオーラルケア製品の開発に方向転換しました。
 研究を進めると、ある特定の長さ(鎖長)のポリリン酸が、歯の表面の汚れをよく落とし、さらに汚れをつきにくくすることを見つけました。この作用が口腔内に汚れを残さないオーラルケアにつながると確信し、ポリリン酸を配合した全く新しいオーラルケア製品を完成させることができました。薬用歯磨き剤としてテレビ通販で紹介したところ、当初定価3800円(税込)と歯磨き剤としては高価ながら、歯の健康を気にする高齢者を中心に売れ行きが伸び始めました。現在ではテレビショッピングにおいて1日で約2億円を売り上げるヒット商品に成長しています。

ポリリン酸を配合した歯磨き剤

[em]ポリリン酸を配合したオーラルケア製品は、それまでなかったのでしょうか[/em]

一部のメーカーが、ポリリン酸を歯磨き剤の成分とした製品を出していますが、ポリリン酸はその鎖長によって異なる生理活性を持っています。ポリリン酸の長さを制御することで、歯の表面に付着した汚れを効率よく除去しつつ、コーティングして汚れを付きづらくする性質が生まれます。この鎖長を最適化した「短鎖分割ポリリン酸」を大量生産できるのは、われわれリジェンティスだけです。

[em]なぜ、そのような特徴のある技術開発を実現できたのでしょうか[/em]

一般のポリリン酸は長さがバラバラですが、人体に含まれるポリリン酸は一定の長さに揃っています。われわれは試行錯誤の結果、人体の持つポリリン酸と同じ長さの分子だけを分離・精製する技術を開発しました。体内と同じ長さの「中鎖分割ポリリン酸」には組織再生促進機能があり、それより長い「長鎖分割ポリリン酸」には抗菌や育毛作用もありました。また、短鎖分割ポリリン酸には歯の汚れ除去と沈着防止に効果的です。

[em]育毛剤として使えるのは興味深いですね[/em]

ポリリン酸を配合した薬用育毛剤は、ラジオ通販で販売しました。まず地方局でテスト販売し、全国規模に展開したところ、半年弱で月間1万本以上が売れるようになり、製造キャパシティをオーバーしたこともあります。その後、販売会社にOEM(相手先ブランドによる生産)で供給した薬用育毛剤は、累計600万本を販売しました。

そしてこれから

[em]今後の新たな展開について、教えてください[/em]

ペット用事業に力を入れていきたいと考えています。犬などのペットにも歯周病対策や口臭ケアが求められており、「分割ポリリン酸」はペットの歯周病予防にも効果があります。ペットのためにお金をかけたい飼い主は多いので有望市場と言えます。2023年2月には、東京都日野市にオーラルケアが受けられる動物病院を開院しました。ペット用の口腔ケアスプレーも販売を始め、好評です。

[em]大学や研究機関にも研究用素材を提供していますね[/em]

われわれは、長さをそろえた「分割ポリリン酸」を製造できる唯一の企業です。世界中の大学や研究機関に研究用素材として無償で提供し、ポリリン酸の機能を究明するための研究を支援しています。最近は、アルツハイマー病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)など神経系疾患へのポリリン酸の関与を示す論文も出てきており、こうした研究が進めば新たな用途展開につながるかもしれないと期待しています。

中小機構インキュベーションとの関わり

入居のきっかけ、入居してよかったこと

最初、民間企業のインキュベーション施設に入っていたのですが、そこが取り壊しとなり、研究開発スペースを探していた時に、当時のインキュベーションマネージャーに農工大・多摩小金井ベンチャーポートを紹介していただきました。建物がきれいで会議室もあり、設備面ですごく充実していたという印象です。大学の中にあるので、研究者との交流が盛んだったのもよかった点です。その交流が大学との共同研究につながったこともあります。

今後インキュベーション施設を利用する方へのメッセージ

スタートアップなど企業にとって、このインキュベーション施設はすごく良い環境と言えます。同じような立場の入居者同士の交流から、合同でイベントを企画したり、一緒に何かをやろうといった関係ができたりします。そうした関係は今でも続いており、自分たちの財産となっています。

会社情報

会社名

代表取締役

柴 肇一

所在地

本社・岡谷工場:長野県岡谷市川岸西1-4-1
東京事業所:東京都国立市東1-7-20

事業概要

医薬関連製品の研究開発と製造販売

会社略歴

2004年1月

リジェンティス株式会社を設立

2005年4月

「第5回バイオビジネスコンペJAPAN」にて優秀賞を受賞

2005年10月

長野県岡谷市にGMP(Good Manufacturing Practice)準拠工場を新設

2006年12月

医薬部外品、化粧品の製造業および製造販売業の承認を受ける

2008年11月

東京事業所を農工大・多摩小金井ベンチャーポートに移設

2009年10月

「日本バイオベンチャー大賞」にてフジサンケイビジネスアイ賞を受賞

2011年2月

「Japan Venture Awards」にてJVA審査委員会特別賞を受賞

2014年12月

東京事業所を国立市に移転

2023年2月

東京都日野市高幡不動に「たかはた動物病院」を開院

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