支援サービス一覧

全国のインキュベーション施設

2024年3月29日
Letara株式会社

推進力と安全性を兼ね備えた 宇宙機用エンジンで世界に挑む 北大発のスタートアップ

推進力と安全性を兼ね備えた 宇宙機用エンジンで世界に挑む 北大発のスタートアップ

Letara株式会社ロゴ

ロケットで打ち上げた人工衛星や探査機を宇宙空間で移動させるには、その十分な推進力を得るためのエンジンが必要ですが、これまでは安全に制御できるエンジンがありませんでした。北大ビジネス・スプリングに入居するLetaraは、北海道大学で培われた技術を生かし、推進力と安全性を兼ね備えた宇宙機用エンジンを開発、北大発のスタートアップとして世界に打って出ます。その技術の特徴と今後の応用展開について伺いました。(2023年11月取材)

インタビュー

お話          Letara株式会社(北大ビジネス・スプリング入居)
            代表取締役 平井 翔大氏

起業、会社のおいたち

平井 代表取締役

会社設立の経緯をお聞かせください

私には北海道大学の学生の頃から、大学発の技術を研究で終わらせたくないという想いがありました。素晴らしい研究成果が出ていてもそこで終わってしまっているものが多い中、自分の研究については、社会実装に向けて動きたいと思い続けていました。一方で、私がいた大学の研究室では、宇宙航空研究開発機構(JAXA)との共同研究プロジェクトが2017年から始まり、2019年頃には基礎的な技術実証ができたことから、それを応用した製品化の動きが出てきました。私の想いと相まってその技術の社会実装の実現に向けた会社を、2020年6月に設立するに至りました。

以前には、2社のスタートアップを立ち上げた経験もあると聞いています

2社とも同業種の宇宙系スタートアップであり、その立ち上げに関わることで会社立ち上げのノウハウを得ました。当時は足りなかった知識も色々な人に意見を聞きながら補充し、そうした経験がLetaraの設立にも生かされました。

他の創業メンバーの2人とは、どのような出会いだったのですか

KAMPS Landon氏は、私と同じ時期に修士課程の学生でした。研究テーマも同じで、二人三脚で研究をしてきた仲です。北海道大学の永田晴紀教授は、私達の恩師です。永田教授の下で一緒に研究をしながら開発を主導してきました。

事業の展開と現在

御社の技術は、どのような課題を解決するのでしょうか

宇宙空間で移動するあらゆるものに対してエンジン(推進系)を提供したいと考えています。中でも、一番数が多いのが人工衛星用になります。小型の人工衛星はロケットに相乗りする形で搭載され、多い時には1回の打ち上げで100~200機がまとめて打ち上げられ、ほとんどを同じ軌道上に持って行きます。ところが、各人工衛星がその軌道から動くための最適なエンジンがまだありません。そこで求められるのが、推進力が高く、かつ安全なエンジンですが、そこを私達の技術で解決します。

具体的には、どのような技術でしょうか

宇宙機用の推進系で有力なのが、燃料と酸化剤を使って燃焼させる「化学推進」です。大きく分類すると、(1)燃料と酸化剤が共に液体、(2)燃料と酸化剤が共に固体、(3)燃料が固体、酸化剤が液体のハイブリッドの3種類があります。(1)の場合、燃料としてヒドラジンという爆発性、毒性、可燃性が大きく、かなり危険なものを使うのが一般的です。(2)の場合、火薬を搭載し、爆発を起こして燃焼を継続させることからその制御が難しく、これも危険性が高いと言えます。一方で私達が採用する(3)のハイブリッドは、燃料と酸化剤が別々に貯蔵され、燃料自体もプラスチックなので燃えにくく、酸化剤の制御で燃焼も安全に継続させやすいという特徴があります。推進力と安全性の両方を兼ね備えているというわけです。

こういった「ハイブリッド化学推進」は、米国でも研究開発が進んでいますが、私達には、点火の技術や性能予測の部分で、他ではできないレベルに到達しています。2019年には、世界最高峰の米国航空宇宙学会(AIAA)で、私達の研究グループが最優秀論文賞を受賞しました。専門家にもそこまで評価されるほどの高い技術力を持っていることが実証されたわけです。

北海道に拠点があることも有利に働いています。宇宙機用エンジンの燃焼試験は、大きな音が出てしまうことから東京のような都会でやろうと思ってもなかなかできません。北海道には広大な土地があり、試験の場所を確保しやすく、そこで設備を持つ北海道内の企業と共同研究している点も私達の強みと言えます。

製品モックアップ

製品としては、どのようなものがありますか

まだモックアップですが、2種類の推進系モジュールを作っています。一つは、ナノサイズの10cm角のキューブ(立方体)の人工衛星に収まる推進系です。もう一つは、それより大きいマイクロサイズの人工衛星向けの推進系です。基本的な燃焼の仕組みや構造は、どちらの推進系も同じですが、大きさが変われば使う部品は異なります。

人工衛星の市場では、ナノサイズの数が圧倒的に多いのですが、これは基本的にあまり推進力を必要としません。一方で、マイクロサイズはより大きな推進力が求められます。これまで衛星が小型化してきたのは、その方が開発コストが低くなるからです。大学の予算でも作れることから教育用には良いのですが、一方で分解能が足りないなど性能面での限界がありました。そこへ米SpaceX社が打ち上げるような巨大なロケットが登場することで、それほど小型でなくても打ち上げコストがかさむことがなくなり、最近のニーズはむしろ大型化の方に流れています。私達もこの流れに乗って開発を進めていきたいと考えています。
製品化に必要となるのが、実証試験あるいは品質管理のための試験です。実際に宇宙で作動させることが重要であり、そのための実証機の開発を進めているところです。実証試験の実施は2025~2026年頃の予定です。

資金調達の状況について教えてください

エクイティ(株主資本)では、2023年2月に約1億2000万円を調達しています。補助金に関しては、中小企業庁の「成長型中小企業等研究開発支援事業(Go-Tech事業)」で1億円程度、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ディープテック・スタートアップ支援事業」で約2億4000万円の補助金を得ています。

そしてこれから

メンバー

将来展望について、どのようにお考えですか

人工衛星に限らず、様々な宇宙機の推進系に携わりたいです。例えば、ロケットの上段部のエンジンや「はやぶさ」のような小惑星探査機、火星探査機などです。将来的には、有人宇宙機用のエンジンも視野に入ってきます。私達のエンジンは爆発しないため安全なので、その意味では有人機にも最適と言えます。推進系に特化し、そのような幅広い用途に展開していきたいと考えています。

高度な技術力を持つ部品企業の協力も必要ですね

これから宇宙関連の部品に参入したいと思う熱意のある企業であれば、地域は北海道に限りません。宇宙関連は失敗がつきものですが、それでも修正しながら何度もチャレンジし、短納期・小ロットでも対応してくれる企業であれば、ぜひ一緒にやりたいです。受発注の関係というよりは、パートナーとして共に夢を追うイメージです。

中小機構インキュベーションとの関わり

入居のきっかけ、入居して良かったこと

以前、別のスタートアップの立ち上げに関わった際、入居先を探している中で北大ビジネス・スプリングの存在を知りました。内部を見学し、自分が会社を経営する時にはこの施設に入りたいと思っていました。共同研究をする北大とも近く、補助金も出て、相談できるインキュベーションマネージャー(IM)もいることから入居を決めました。入居当時は、メンバーが私と共同創業者ぐらいしかいなかったので、ビジネス展開のアドバイスなどの支援や、色々なところを紹介していただけたのは良かったと思います。アルバイトとして雇っている北大の学生が来やすいという利点もあります。

今後インキュベーション施設を利用する方へのメッセージ

特に北大発のスタートアップは、ぜひ入居することをお勧めします。期間は決まっているのですが、入居しているうちは会議室も自由に使え、IM室の方に相談して外部と色々つないでいただくこともできます。北大とは無関係でも入居できますので、北海道内でこれから起業しようとしている人に、この施設はとても良いのではないかと個人的に思っています。

会社情報

会社名

代表取締役

平井 翔大、KAMPS Landon

所在地

北海道札幌市北区北21条西12丁目2
北大ビジネス・スプリング307号室

事業概要

宇宙機用推進システムの開発・提供

会社略歴

2019年8月

米国航空宇宙学会(AIAA)で最優秀論文賞受賞

2020年6月

Letara株式会社を設立

2021年12月

「S-Booster 2021」にてアジア・オセアニア賞を受賞

2022年1月

「Kawasaki-NEDO Innovation Center Startup(K-NIC)Hands on Program」支援対象者に選定

2022年7月

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)「1st Round」の支援先に採択

2022年8月

「NEDO Entrepreneurs Program」第1回公募の助成金交付先に採択

担当マネージャーからのコメント

北大ビジネス・スプリング チーフインキュベーションマネージャー 依田知則

世界的に成長を続ける宇宙関連市場において、安全で最適な「移動手段」の提供を目指すLetara。北海道大学の研究成果を基礎に、世界最高峰の技術に昇華させてきた同社は、技術の社会実装に向け、会社一丸となって情熱を注いでいます。そのさまは、ダイナミックなスタートアップそのものです。宇宙関連のものづくりは、資源調達、設計開発、宇宙実証など様々なハードルがありますが、同社は一歩一歩確実に前進しています。近い将来、世界の宇宙関連産業のリーディングカンパニーに成長するでしょう。

宇宙関連産業は、広大な大地を有する北海道の重点産業分野の1つでもあります。同社の成長は、地域産業の活性化にも直結しています。IMとしては、事業推進のサポートはもちろん、大きな課題に挑戦する同社を盛り上げる地域の機運醸成に貢献したいと考えます。

インキュベーション施設

ページの
先頭に戻る