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2026年1月7日
コネクテッドロボティクス株式会社(農工大・多摩小金井ベンチャーポート卒業)

食品ごとにロボット制御を最適化し人手不足の問題を解消

コネクテッドロボティクス株式会社ロゴ

食品を盛り付けたり、調理したりする食品工場では、労働環境が過酷で人手不足が深刻な問題となっているにもかかわらず自動化が進みませんでした。コネクテッドロボティクスは、食産業向けに特化したロボットを開発、食品ごとにロボットの動きを最適に制御することで人の作業を置き換え、「多くの人の喜びに貢献する」ことを目指します。同社の代表取締役である沢登哲也氏に、ロボットの技術的な特徴と将来展望について伺いました。(2025年12月取材)

インタビュー

  • お話
  • コネクテッドロボティクス株式会社 (農工大・多摩小金井ベンチャーポート卒業)
    代表取締役 沢登哲也

起業、会社のおいたち

沢登哲也代表取締役の写真
沢登哲也代表取締役

会社設立の経緯をお聞かせください

コンピュータ科学を研究する大学院生の時に英国のスタートアップにインターン留学をする機会があり、そこで起業に興味を持ちました。日本に戻ってから友人とWebサービスの会社を立ち上げたのですが、私自身が本当にやりたいことではないと感じ、そこまでのキャリアを忘れて外食チェーンに就職し、新規店舗の企画や運営に携わりました。そこで飲食業界における過酷な労働環境を目の当たりにし、自分が専門としていたコンピュータ科学、特にロボット制御技術が生かせないかと考えました。一旦、ロボット制御のソフトウエア開発会社にエンジニアとして入ったのですが、もっと直接的に自分の技術力を使って人の役に立つ仕事がしたいと思い、起業することを決意しました。

飲食産業向けロボットの開発という方向性は最初から決まっていたのでしょうか

最初の3年ぐらいは、ロボット制御のソフトウエア受託開発などをやりながら一人でビジネスの方向性を模索していました。2017年頃、仲間や資金を集めてインキュベーション施設「農工大・多摩小金井ベンチャーポート」に入居し、スタートアップとして成長していくために何をすべきかの選択を迫られました。自動車の組み立てなどに使われる産業用ロボットは成熟していたため、そこでは自分たちの強みを発揮することは難しいと思いました。一方で飲食産業は当時、人手不足が深刻化しているにもかかわらず自動化が全く進んでおらず、自分たちの知見やノウハウが生かされる領域であることから、その領域に先駆的に取り組むことにしました。

「食産業をロボティクスで革新する」というミッションを掲げていますね

食は万人が関わる巨大な産業であり、多くの人の喜びに貢献したいという私の想いにも合致します。ロボットによる自動化により、今まで実現していなかった生産性の改善だけではなく、よりおいしいものをより安く、より健康的に食べることができるところまで含めて食産業の課題を解決したい、このミッションにはそういった意味合いが込められています。

事業の展開と現在

御社の技術の特徴について教えてください

自動車産業や電機産業など、従来のロボットを使った自動化の多くは、扱うものの大きさの違いはありますが基本的に固いもの、形状の定まったものが対象でした。これに対し、私たちのロボットが扱う食品は、種類が様々で不定型だったり、温度によって柔らかさが変わったり、性質も変わる生き物みたいなものです。こういったものを上手く扱えるロボットは、ほとんどありませんでした。特に私たちの食品盛り付けロボットは、様々な食品に対して高い精度で素早く盛り付け作業を自動で行うのですが、それまでのロボティクスの世界では実現が困難とされていました。

私たちは大きく三つの技術により、その実現を可能にしました。第1に、ロボット制御技術です。ある食品を適量だけつかみ、移動させるだけではなく、周囲に散らばらないように適切な場所に持っていくことを素早く行うための技術です。第2に、センサーから得た情報を上手く利用する技術です。カメラと重量計を使って食品の位置と重さのデータを蓄積し、データが貯まるほど様々な食材についてのロボットの動きの精度が高まり、素早く正確に盛り付けができるようになるというわけです。第3にロボットハンド技術です。ロボットハンドの形状や材質、動かし方の組み合わせによって多様な食品に対応できます。これによって確実に対象物をつかみ、落とすことで見た目良く盛り付けることができます。このロボットハンド設計の最適化で人工知能(AI)を活用しています。

これらの技術が揃っていないと、ポテトサラダではできるけどひじき煮ではできないなど食品ごとにバラつきが出てしまいます。私たちはスーパーマーケットで売っている主要な食品を7種類に分類し、3種類程度のハンドの置き換えで様々な食品に対応できるようにしています。また、同じ種類の食品でも顧客ごとに食材特性が異なるので、実際にテストしないと、なかなか満足できる結果には至りません。かなり試行錯誤が求められる技術でもあります。

食品盛り付けロボット「Delibot All in Compact」の写真
食品盛り付けロボット「Delibot All in Compact」

参入してくる他社に対し、御社の優位性はどこにありますか

ロボット制御とロボットハンド設計を最適化するためのデータの蓄積には時間がかかります。私たちが先行している分、他社がデータを蓄積している間に私たちはさらに先に行くことができます。ロボット制御やロボットハンド設計に関する特許と意匠を、合計で約160件出願済みですが、目に見えない部分でのノウハウも多くあり、簡単にはキャッチアップされないでしょう。食品という扱いが難しいものに対して私たちは大量にテストを行い、地道にデータを積み上げています。そこに私たちの大きな優位性があります。

また、ロボットは繰り返し動き続けることがとても重要です。自動車だったら1日当たり数百台作ることはありますが、食品はその20~30倍の量を作ったりします。それだけロボットが速く正確に動き続けるためには、それなりの耐久性や信頼性が求められます。これは他の分野、例えば物流で使う搬送ロボットに比べても厳しい使い方と言えます。

人と協調させながらロボットを動かす難しさもありますね

ロボットは、まだ人が使いこなさなくてはならないツールに過ぎません。その意味では、使いやすいだけでなく、安全性や衛生面も考慮して、清掃性を高めるためにくぼみやつなぎ目を少なくするなど様々な工夫が必要です。ほかにも人から置き換えるにはまだ難しい点があります。例えば、顧客から唐揚げを数個入れて1パックに200グラム±5グラムの重量に収めてほしいという要求があった時に、唐揚げが1個当たり30~50グラムとバラつきの許容範囲より大きいので、ロボットではなかなか合格ラインにたどり着けません。

これに対し、人の場合は唐揚げの一部をちぎったり、様々なサイズを組み合わせたりすることで調整できてしまいます。こういったこともパックごとに重量や個数が異なってもその重量に応じて価格を変える量り売りの習慣が許容されれば、ロボットでの製造も対応できるようになります。このようにロボットを適用しやすいような環境をユーザー側が整える「ロボットフレンドリー環境」を広めていくことも、飲食産業の自動化を進めるためには重要な取り組みとなります。

そしてこれから

今後の展開について教えてください

飲食産業は顧客ごとにプロセスが細分化しており、そういった様々な顧客に利用してもらえるように汎用性の高いロボットに仕上げていく必要があります。社内の様々な技術要素を組み合わせてプラットフォームを形成し、そのような新製品の開発につなげていきます。例えば、これまでは一つの容器の中に一つの食材が入れていたのですが、複数の食材が入るお弁当にも対応し、ピンポイントで食材を入れ分け、一部にはソースをかけることもできるようにしたいと考えています。

5年後ぐらいには人がやる以上に速く、きれいに盛り付けるロボットの実現を目指したいと思います。既に部分的には実現していますが、現状だと食品によっては数カ月かけないと対応できないことがあります。あらゆる食品ですぐに対応できるようにするためには、ロボットハンドの指先部分の構造やセンサーの進化などが欠かせません。

人の手を使わずに済むロボットの実現はありますか

それはまさに人と同じ動作をするヒューマノイドロボットかもしれないですね。人と同様の知能や体を持つ必要があり、究極は人の代わりに仕事をするロボットであることは間違いないですが、まだ要素技術レベルで足りないところがたくさんあります。ロボットは川上から川下まで幅広い領域でのアップデートが必要です。ソフトウエア面でのAIの進化だけではなくて、ハードウエア面の部品に関してももっと効率の良いモーターやセンサーも必要です。10年単位で考えれば実現するかもしれません。

インキュベーションの利用

入居のきっかけ、入居してよかったこと

まずキッチンアシスタントロボットの研究をしていた東京農工大学の教授を見つけて共同研究を申し込んだのですが、同大学の中にスタートアップが入れる施設があることをたまたま見つけて、ほぼ同時に申し込んだというのが入居のきっかけです。私たちは食品を扱うロボットを開発するスタートアップなので、実際に食品を使って実験するのにラボがあってとても助かりました。また、中小企業基盤整備機構(中小機構)の施設に入居していることが人の採用や資金調達の際に信用を得ることにつながり、そこは大きなメリットとして感じました。

今後インキュベーション施設を利用する方へのメッセージ

研究開発型のスタートアップにとって、大学との連携も含め、周囲とのシナジーを生みやすい環境にあります。中小機構のスタッフのサポートも手厚く受けることができるのも良い点です。時期によっては満室で入れないこともありますが、常に入るタイミングをうかがっていれば、ふとしたタイミングでは入れたりしますので、定期的にウォッチし続けるのが良いと思います。小金井市からの助成など経済的なメリットもありますので、ぜひ積極的に入居を検討していただければと思います。

会社情報

会社名

代表取締役

沢登哲也

所在地

東京都小金井市梶野町5-4-1

事業概要

食産業向けロボットサービスの研究開発および販売

会社略歴

2014年2月

コネクテッドロボティクス株式会社を設立

2017年4月

飲食店向けの調理ロボットシステムの開発を開始

2017年12月

「農工大・多摩小金井ベンチャーポート」に入居

2019年6月

経済産業省スタートアップ育成支援プログラム「J-Startup」に選定

2020年10月

食品工場向けの検品/盛り付けロボットの開発を開始

2023年2月

シリーズBラウンドで約17億円の資金調達を行う

2023年4月

本社(営業部門・バックオフィス部門)を東小金井駅前に移転

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