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あの川の未来を創ろう 株式会社フィッシュパス

ITを活用して漁協業務の効率化と自然環境の保全に貢献

FISH PASSとは

株式会社フィッシュパス(福井県坂井市)は、福井県立大学発のベンチャー企業。代表取締役の西村成弘氏が故郷竹田川の環境悪化の原因を追求する中で、魚の放流や河川整備といった環境保全を担う漁協組合(以下漁協)の経営不振や高齢化が、環境悪化につながっていると分析し、アプリの開発に着手。

  • 写真:スマホ画面トップと西村社長

24時間いつでもどこでも遊漁券を買うことができる「遊漁券オンライン販売システム」や計画的な河川環境保護を支援する「河川環境管理システム」など、釣り人と漁協にとって便利な機能を搭載したアプリ「FISH PASS(フィッシュパス)」を2016年3月から配信。漁協の業務負担軽減と経営改善を実現することで自然環境保全につなげている。

  • 写真:スマホ画面2

FISH PASSを利用することにより、これまで各販売所にて手売りされていた遊漁券を釣り人はオンライン上で「いつ」でも「どこから」でも購入することができる。深夜早朝を気にすることなく、場合によっては川の状況を確認した後で買うことも可能だ。

またGPSと連動しているため、漁協の監視作業ではタブレット端末にて遊漁券の所持を確認することができ、目視後、遠距離からでも釣り人一人ひとりを効率的にチェックできる。高齢化した漁協監視員の業務を軽減し、また釣り人にとっては、釣りの最中に遊漁券確認のため呼びかけられるストレスもなくなり一石二鳥となっている。

  • 写真:スマホ画面3
  • 写真:釣りの風景

FISH PASS開発から完成まで

「ITの知識が全くなかった」という西村氏。福井県の産業支援センターの窓口で「こんなサービスを考えているのですが・・・」と投げかけたところ、中小機構のアドバイザーを紹介され、面談時に否定せず「面白い!」と話を聞いてくれたことからこの事業がスタートした。

まずは福井市のビジネスプランコンテストに申請し、事業評価を受けてみようということになり、審査に向けて計画の内容や今後の展開などのアドバイスをうけ、最終的にはそのコンテストでグランプリを受賞。実現化に向け本格的に走り出すこととなり、各方面の専門家やスタッフ、施設なども紹介いただいた。

また、事業資金についても、国や様々な自治体がやっている補助金なども紹介していただき、着実に事業を進めていくことができたという。

窓口で最初に事業を説明してからビジネスコンテストまで3ヶ月、その後事業の見直しや補助金の申請に半年、システム開発や初期のプロトタイプの完成まで3ヶ月、トータル約1年で事業の実現にまで漕ぎつけ、竹田川での実証をスタートさせた。

2019年3月現在、6県(秋田、岐阜、京都、静岡、福井、石川)19漁協と連携、今後プラス40漁協の約60漁協との連携を見込んでいる。また事業を進めていく上で、福井県水産課にも注目していただき、同じような悩みを抱える他県の漁協を紹介していただくなど日々広がりをみせている。

FISH PASS 3つのコンセプト

漁協と釣り人を便利にするアプリケーションサービス「FISH PASS」には3つのコンセプトがある。

一つ目は、漁協が抱える課題を解決し、また釣り人が安心して川に集まれるきっかけをつくること。遊漁券購入以外にも、これまでは漁協事務所や釣り仲間からしか得られなかった詳しい川の情報もスマートフォンから手軽に得ることができる。

  • 写真:スマホ画面4

二つ目は、FISH PASSが利用されることで川人口が増え、地域にお金が落ちる仕組みをつくること。2016年3月~9月末までシーズンを通し竹田川で実証を行った結果、これまで毎年8%~9%減少していた遊漁券収入が、FISH PASS導入後、前年のおよそ1.5倍の売上げを達成。これは漁協をはじめ、多くの釣り人や自治体が当サービスの普及に向け積極的に情報発信してくれたおかげもあり、その後同様の悩みを抱える他県の漁業関係者にも関心を寄せていただくきっかけとなった。

そして三つ目は、FISH PASS導入により増えた漁協の収益と拡大した釣り人のコミュニティで自然環境を良くしていくこと。財源と川への関心が集まることで、放流活動や河川整備などにも力を入れることができるようになり、結果魚も増えることで釣り人も増え、川がより楽しくなる。「釣り人」「漁協」そして「自然環境」の三方良しの好循環で更に川が潤う。

漁協の反応は

「当初FISH PASSの導入に対して漁協内の反応は半々でした」と竹田川漁協の山岸事務局長。利用者も組合員も高齢者が多いため、IT活用で利用者が増えるかどうか不安があった。しかし西村氏と地元の美しい川を残していこうという思いを共有していく中で、FISH PASSを上手く活用し、釣り人を川へ呼び込むために何ができるか、そして川を中心とした地方の魅力作りのため何ができるかを共に考える様になった。実際に導入してみると、若い利用者はもちろん年配者の利用も見られ、時代の変化を感じた。

  • 写真:竹田川漁協山岸事務局長

「遊漁券販売だけじゃない。フィッシュパスは禁漁区や通行止めなどの交通情報を発信したり、安全面ではGPSで場所の特定ができるので、いざという時にも役立つ。今後は川だけでなく、山登りなどにも活用できるのでは」とコンテンツの充実から利用場面の拡大など更なる進化も期待を込めて話す。

今後の展開は

今後は自然環境の保全の観点も入れながら事業を進めていかなければならない。地方の最大の魅力・財産は自然。そんな自然を守り、国内外から人を呼び込むことで地方を豊かにする。川を基点にフィッシュパスでそんな展開ができればと話す。

  • 写真:竹田川

これから新ビジネスを始める方に向けて

この事業を始めるまでITの知識は全くなかったが、むしろそれが武器になった。ある程度知識や仕組みを知っていると弊害も見え、はじめの一歩がなかなか踏み出せないこともあるが、「知らないので教えて下さい」と素直にいえれば、教える側も体系的にポイントをついて分かりやすく丁寧に教えてくれる。安心して迷うことなく一点突破することができ、物事が開けていくという体験をすることができた。知らないということがいい意味でプラスになって前に進めていけたと思う。

まずは「教えて下さい」というスタンスで半歩でも前に進むことで、物事はどんどん開けていく。またその行動に対し多くの人が支援してくれる体制が世の中には整っている。物怖じせず、まずは踏み出し、中小機構へ相談してみてはいかがだろうか。

【会社概要】株式会社フィッシュパス

代表者

西村 成弘

住所・電話

福井県坂井市丸岡町熊堂3-7-1-16(Tel:0776-67-7335)

創業

2016年

従業員

7人

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