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生産性向上が急務 大義バケットの開発 株式会社大義林研

(1)日本の林業と担い手不足

日本では戦後や高度経済成長期に造林された木々が成長し利用期を迎えており、木材利用のために樹木を切って搬出する主伐を必要とする森林が各地に広がっている。また丈夫で利用しやすい樹木を育てるためには、間引き作業である間伐も重要で、周期的に手を加える必要がある。間伐することで森林土壌への日射量が増え、それにより根が丈夫に育つことで大雨や強風など自然災害に強い森林づくりにつながるのだ。

実際に主伐、間伐が必要な日本の森林だが、十分な施業に至っていないといった問題点を抱えている。福井市もそのひとつで、施業すべき面積約800ヘクタールのうち施業できているのはおよそ400ヘクタールほど。手が行き届かない森林がたくさんあるのだ。

また、バブル景気崩壊やリーマンショックの影響により木材需要は減少傾向だったが、近年の国産材の供給量は合板原料としての利用の増加、木質バイオマス発電施設での利用増加を背景に2002年を底として増加傾向にある。林業従事者が減少している中、需要に応じる工夫が必要となっている。

(2)生産性向上が急務 大義バケットの開発

そんな状況下、森林組合や林業企業はより効率的な施業による生産性の向上に努めている。今回ご紹介する大義林研(福井県福井市)が開発した「大義バケット」「大義爪バケット」もその一つだ。作業に使われる重機の一つ「グラップル」はものをつかみ動かす作業を担うが、このグラップルに「大義バケット」をアタッチメントとして接続させることで、森林作業道の整備スピードが格段にあがり、搬出までの時間短縮が可能となった。

そもそも伐採の工程は「計画」→「作業道の整備」→「重機搬入」→「伐採」→「造材(決まった長さの丸太に整える作業)」・「集材(整えられた丸太を集める)」→「搬出」といった流れで行う。作業道を整備することで重機の搬入を容易にし、また切り出された材木の集積場所を確保するのだが、そのためには土を掘り起こし、平らに均すためショベルなど別の重機が必要となる。またグラップルの先端部分を付け替えるといった方法もあるが、付け替えに慣れた人でも移動を含めて数十分以上かかってしまうのだ。「手間と時間がかかる作業道の整備をどうにかして簡単に、かつ短時間にできないものか」そんな課題を解決へ導く新アイテムが「大義バケット」だ。

  • 大義バケット・爪バケット
  • 作業風景

グラップルは樹木を挟んで移動させたり、切り出された樹木の積み上げ等を担うなど林業には欠かせない重機。まさにこの「つかむ」動きだけで大義バケットを接続することが可能であり、掘る、均すなどの作業を可能とした。またショベルと異なり、グラップルの先端は360度回転することが可能なため、傾斜面を整える法面づくりも可能。まさに「大義バケット」一台で3役をこなしてみせる。

(3)開発までの道のり

  • 大義林研・社長
  • 整地作業

開発までの道のりを、開発者の(株)大義林研 代表取締役 大泉雅人氏に伺った。

「そもそもの発想の原点は、作業で立ち入った山を所有者へきれいに整理してお返ししたいといったところからです。福井はそんな文化なんですよ。」

そう語る大泉氏。気持ちのいいほど商売っ気のない職人さんだ。

それまで図面など描いたこともなく、どうやって形にしていけばいいかまったく分からなかったが、何度も鉄工所に通い試作を重ね、強度や重さ、フィット感などを詰めていった。

法面施業、転圧施業に適した大義バケットと土壌掘削や切土・盛土施業に適した大義爪バケットを瞬時に付け替えながら、あっという間にきれいな作業道をつくる。
「快感。」と笑顔を見せてくれた。

  • 奥様

奥様の大泉優美子さんにもお話を伺った。

はじめて大義バケットの構想を聞いたときは「ん?」と疑心暗鬼だった。こどもの夏休みの工作みたいに紙で一生懸命作っていた。それが形になって、試作を重ねて、今では作業になくてはならないアイテムと語る。

そんな優美子さんも重機を操り作業を行う。グラップルを起用に操り、集材された材木をあっという間にトラックへ積んでいく。
「林業は力仕事で男のイメージがあるが、そんなことはない。重機の扱いは女のしなやかさが武器になる。ぜひチャレンジしてみたい女性の方!募集中です」と笑顔でアピール。夫婦ともに笑顔が絶えない。

  • ご夫婦

(4)認定事業と今後の展望

認定事業として、今後この「大義バケット」「大義爪バケット」を近隣の林業事業者を中心にレンタルする。大義爪バケット自体は強度に問題があるため、今一度材質を変えて強度の実験をおこない、2020年中のレンタル事業開始をねらう。

「人様に使っていただく商品にする。そのために絶対にあきらめずにやり抜く。当社のモットーは、為すべきことをおろそかにしないことが最善の近道」と力強い決心を胸に試行錯誤はこれからも続く。

「大義バケット」「大義爪バケット」は林業界だけではなく、土木業や産廃業等の異業種での活躍も期待できる。また、最近では局地的な豪雨が全国各地でみられるが、スピードが問われる災害復旧時に2種類併用の大義バケットなら、制約が多い復旧現場でたくさんの機械を投入しなくてもグラップル一台あれば様々な状況にも対応ができ、汎用性が高いのではないかと話す。

(5)中小機構の支援

アドバイザーの方に認定を受けるうえで必要なアドバイスをいただいた。また連携参加者を含めた連携体づくりの支援もいただいた。今後は全国への販路開拓に向けたアドバイスを期待する。

【会社概要】株式会社 大義林研

代表取締役

大泉 雅人

住所

福井県福井市和田中1丁目331

電話

0776-26-4123

創業

2012年

従業員

5人

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