支援機関の方へ
株式会社ジィ・シィ企画
社会にとって「なくてはならない会社」を目指して
会社概要
- 事業内容
-
情報システム開発事業、パッケージソフト販売、システム保守・運用事業
- 本社所在地
-
千葉県佐倉市王子台一丁目28番8号 ちばぎん臼井ビル3階
- ホームページ
-
- 設立年
-
1995年
- 資本金 (2016年6月)
-
186百万円
- 売上高 (2016年6月)
-
1,089百万円
- 従業員数 (2016年6月)
-
67名
- ファンド事業
-
地域中小企業応援ファンド出資事業
- 同社に投資を行った出資先ファンド名 (無限責任組合名)
-
ちば新産業育成投資事業有限責任組合(ちばぎんキャピタル株式会社)
事業概要
柔軟性・コストに強みを持つ決済システム
当社はカード決済処理システムの開発及び運用代行サービスを中心に事業を展開している。当社の開発しているカード決済処理パッケージ「CARD CREW PLUS」の特徴は、顧客固有の業務とシステム的な非業務を分離したプラットフォームを自社開発しているため、コストを抑えて顧客(小売業の加盟店等)のサービスに合わせたカスタマイズができるところにある。カード決済分野に特化してきた実績と、対面販売のシステム構築に力を注いできたノウハウにより、大手SIベンダーのPOSやクレジット会社への接続対応を得意とする。これまでに導入した実績は、全国の小売業をはじめとする加盟店約180社、また、POS及び決済端末の接続台数は約5万台以上にのぼる。
近年、ネット取引の急拡大や外国人旅行客の増加により、クレジットカードの取引高は一貫して増加している。このため、クレジットカードを消費者が安全に利用できる環境整備や海外発行クレジットカードの利便性向上等に向けた方策として、関係省庁や業界団体が、節目である2020年までにクレジットカードのIC化100%の実現等の目標を掲げている。
これに伴い加盟店ではカードの読み取り装置をIC対応化することが必須であるものの、現時点においてはコスト面の問題から特にPOSシステムのIC化が遅れている。しかしながら国家的社会的ニーズの高まりに伴いIC化の商談は活発化しており、当社の製品やサービスに対するニーズも一層高まっていくと思われる。
創業からVCに出会うまでの経緯
サラリーマンからの創業
当社の創業者である金子会長は大学卒業後、自動車部品会社に入社し機械設備の制御業務に従事していたが、次第に起業意思を持つようになった。ただ、経営者であった父親から「技術がどれだけ素晴らしくても、営業を経験せずに会社を作ったら潰れる」と言われて、営業のノウハウを学ぶために大企業系列のシステム会社に転職し、そこで営業に加えて、経営改善チームの一員としてバランスシートの改善等の仕事にも従事した。そして、それまでの実務経験を活かして、システムを開発する会社を1995年に創業した。
しかしながら、サラリーマンからの創業であり、大株主になるようなスポンサーもいなかったので、資金集めには大変苦労した。当時の状況を金子会長は、「創業当初は資金が乏しく、当時は銀行も生きるか死ぬかで頑張っていて、貸してくれなかったから、直接金融で調達するしかないと思い、サラリーマン時代から付き合いのあった同僚や知人から一人当たり数十万円を出資してもらい、最大で一般の株主80人位から資金を集めることができた。」と、多くの人の協力があって、創業することができたと振り返る。
地道な戦略によりシェア拡大
現在当社の主力製品となっているカード決済処理システムの開発は1997年に開始した。当時はバブル崩壊後、依然として日本経済が低迷している中で、決済等の中継処理を行うシステムにコストをかけられないという顧客が多く存在した。当社の主な取引先であったPOSベンダーについても、決済という分野に関してはどちらかというと腰が引けており、自社で決済システムを持っている先もあったが、システムの性能や運用面で豊富な実績を持つ他社の製品を使用するという動きがあった。そのような状況下で、各社のPOSと当社のシステムとを繋げるためのモジュールを無償でPOSベンダーに提供したり、また大手システム開発会社と提携し、会社規模が小さい等信用力の面で当社との取引に二の足を踏んでいたような顧客に対しては、同社を窓口にして取引を行うようにした。そのような地道な戦略が功を奏して、当社のシステムが多くのPOSベンダーに採用されるようになった。
その後、事業がある程度軌道に乗ってきた段階で、昔から目標としていたIPOを本格的に考えるようになり、それに向けた株主構成を検討している中で、一部の株主から株式の買取要請があり、その引受先となる安定株主を探していたところ、当時地元野球チームの監督をしていた繋がりで親交のあった千葉銀行の役員から、ちばぎんキャピタル(株)の紹介を受け、2009年に中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が出資し、ちばぎんキャピタル(株)が運営するちば新産業育成ファンドに株式を引き受けてもらえることとなった。
VC等を活用した事業の拡大と成長
VCという外部の目を入れる
ちば新産業育成ファンドからの出資は、既存株主の株式を引き受ける形での出資となったため、当社にとって新たな資金調達にはならなかったが、東証一部上場の銀行の子会社であるVCが株主になるということで、「経営の中身をきちんと開示しなくてはいけない」のと、「数十人いる株主に対して、株式を適切に管理しなくてはいけない」ということで、早い段階から証券会社に証券代行事務を委託し、監査法人とも契約した。当然、費用面では大きな負担とはなったが、金子会長は「きっとそれをやらなかったら放漫経営になって、もうとっくに会社は無くなっていた。」と語るように、それまでは個人株主が中心であった当社にとって、VCという外部の目が入ることは、良い意味での牽制が働き、経営管理体制の強化にも繋がった。
取引先紹介等、更なる成長に向けた支援に期待
ちばぎんキャピタル(株)からは主幹事証券や上場に向けたコンサルの紹介等の支援を受けているが、VC単体ではなく、銀行のグループ会社からもさまざまな支援を受けており、例えば(株)ちばぎん総合研究所が実施している研修を通じて、人材の育成や内部統制の構築に取り組んでいる。また、2016年4月からは社外取締役の派遣を受けており、当社の一員として会社を成功させるための体制を共に構築できるようにしている。
一方で資金調達に関しては、第三者割当等の直接金融で調達したのは、中小機構が出資するファンドから出資を受けた前後位までで、現在は千葉銀行等からの融資で調達しており、銀行本体とも良い関係を築いている。
今後VCに期待する支援として、2016年4月に社長に就任した矢ヶ部社長は、「我々が今までターゲットとしてきたマーケットは、流通や小売業の加盟店に対しての製品やサービスの提供が中心であったが、今後は金融機関やクレジットカード会社という先に対して、商売を広げていきたいと考えている。そういう中で、地方銀行等に対するチャネルを持っているということで、そこに期待する部分は大きい。」とVCの積極的な支援を期待している。
今後の事業の展望について
2020年に向けた成長と課題
大手携帯キャリアの共通ポイントゲートウェイシステムに当社のシステムが採用される等、順調に業績を拡大している。一方で、海外の企業とインバウンド向けの決済システムの開発に取り組む等、新しい事業にも果敢にチャレンジしており、エンジェル的な立場でベンチャー企業へ出資する等、自社とのシナジーや、人脈や視野を広げるためのさまざまな取り組みも行っている。また、ものづくり補助金(通称)等、国や地方自治体による公的支援も積極的に活用しており、施策情報に関しては常にアンテナを高く張っている。
今後の事業の展望について、矢ヶ部社長は、「会社の安定的な成長という側面からすると、システムに係るサービスや保守等、月々定額で発生するストック売上を増やしていくというのが、大きな目標である。中長期的には、まずは2020年という所を一つの目標として、IC化対応の決済システムの導入促進等、せっかく国の後押しもあるので、うまくそれに乗って成長していきたい。」と語るように、盤石な営業基盤を構築するため、今までにない新たな価値を創造し、さらなる成長に向けて歩みを進めていく。
新たな出発点となる上場を目指して
将来、上場も視野に入れている当社。金子会長は上場を目指す理由について、「オーナーである私が65歳ということもあるが、一番の理由は経営理念。社会に貢献するというのはどこの会社でもあるけど、「なくてはならない会社」という理念は当社にとって最も大事。ただ、自分がなくてはならないと思うのではなくて、世の中にとって、なくてはならないものということが重要で、次の世代というものが、私の子供とかそういう形で継いでいくのではなくて、パブリックカンパニーとして常にそれを追い求めていって欲しい。」との思いを語っており、公開企業になることは当社にとって「なくてはならない会社」を目指すための新たな出発点でもあると捉えている。
また、矢ヶ部社長は、「会社が千葉の佐倉にあるということで、人材の採用では苦労している。やはり東京を中心にしていかなくてはいけないという考えもあるし、一方で本社は佐倉に置いておきたいという希望もあるが、人集めという側面では、公開企業となって会社の価値を上げていかないと、優秀な人材というのが当社のような小さな会社の支えですから、そこは本当に力を入れていきたい。」と、人材の採用面に関して大きな期待を寄せている。
起業家を志す方へのアドバイス
サラリーマン時代に培った営業力や経営改善のノウハウを活かして起業し、当初は資金調達等の面で大きな苦労をしながらも、持ち前の行動力やネットワークで幅広い人脈を築き、一代で売上10億円以上までの会社に成長させた金子会長は、起業する上で3つのアドバイスをする。
-
まず大事なのは、人のやらないことを夢中でやるという事である。それだと他者からの邪魔も入り難い。
-
それから、起業をしたならば、自分の思う通りにやる。自分の思う通りに会社を経営してみて、それをずっと続けるというのが大事である。
-
最後に、銀行ときちんと渡り合えるということが重要である。例えば、資金繰りに関しては、銀行の先をいくような位の気持ちで把握しておくことが大切である。
ベンチャーキャピタルの声
我々VCは、創業者である金子会長は、自身の豊富な人生経験や苦労から多くを学び、それを最大限生かしてきた方だと思っております。そのような人生経験に裏打ちされ、当社の経営理念「社会にとって、なくてはならない会社」が生まれ、その理念を社員全員が共感しています。
その理念や、金子会長、矢ヶ部社長の先見性があったからこそ、当社独自の「CARD CREW PLUS」の開発や、大手携帯キャリア向け共通のポイントシステムの大規模な開発が成し遂げられたと思います。
今後も、ユーザー目線の決済処理システム開発の強みを生かして、我々金融機関グループ向けの提案や連携も期待しております。また我々VCも、御社の経営理念の更なる具現化に向けた、上場や一層の成長に貢献したいと考えております。
ちばぎんキャピタル株式会社
2016年度取材事例
掲載日:2017年1月5日
-
※
この事例は取材した当時の内容をもとにとりまとめを行っているものです。
従いまして、現在の企業様の事業内容等と異なる場合がございますので、予めご了承くだいますようお願いいたします。