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株式会社MS&Consulting
「精神的に豊かな社会の創造」を目指して
会社概要
- 事業内容
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顧客満足度・従業員満足度の向上のためのリサーチ業務及び経営コンサルティングに関する業務
- 本社所在地
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東京都中央区日本橋小伝馬町4-9 小伝馬町新日本橋ビルディング
- ホームページ
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- 設立年
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2013年
- 株式公開年
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2017年
- 市場名
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東証マザーズ
- 資本金 (2018年3月期)
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570百万円
- 売上高 (2018年3月期)
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2,810百万円
- 従業員数(2018年3月期)
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156名
- ファンド事業
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中小企業成長支援ファンド出資事業
- 同社に投資を行った出資先ファンド名 (無限責任組合名)
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TMCAP2011投資事業有限責任組合(東京海上キャピタル株式会社)
事業概要
「精神的に豊かな社会の創造」を目指して
2008年5月、「長期にわたってお客様に愛され、働く人たちが自分の仕事に対する誇りと、会社へのロイヤルティを持ち続ける。そんな企業やお店を増やすご支援をしていきたい」という想いのもと、現代表取締役社長である並木昭憲氏(以下、並木社長)によって経営コンサルティング会社から事業を分社化する形で設立されたのが同社のはじまりである。
その後、同社は幾度かの組織再編を経て、現在、“消費者と店舗、現場と経営を結ぶ企業活動を通じ、「精神的に豊かな社会の創造」に貢献”するという理念のもと、「サービスプロフィットチェーン」という考え方を基軸に、顧客満足度・従業員満足度の向上に資するリサーチ業務及び経営コンサルティング業務を行っている。
「サービスプロフィットチェーン」を実現するサービスの提供
同社が基軸に置いている「サービスプロフィットチェーン」とは、“多くの従業員が働きがいを持てば従業員満足(ES)が高まり、このようなESの高い企業は安定的に高い顧客満足度(CS)の獲得へ繋がる、その結果業績の向上をもたらす。そして、業績が向上すると、従業員の更なる成長に向けた教育や福利厚生の充実等に投資が回り、より一層ESが高まることで、CSや業績の向上をもたらす”といった好循環サイクルを生み出す経営の考え方である。
同社では、この「サービスプロフィットチェーン」を実現するために、クライアントに対して顧客満足度・従業員満足度の向上に資する各種サービスを展開している。
創業以来、同社の基幹サービスとなっているのが、顧客満足度を測る覆面調査「ミステリーショッピングリサーチ」である。本サービスでは、“ミステリーショッパー”(同社に会員登録された一般消費者である調査員)が、クライアントである顧客企業の運営する店舗等へ一般消費者に扮して訪れ、実際に購買活動を通じて商品やサービスの評価を行う。具体的には、“ミステリーショッパー”がサービスの利用前に抱いていた期待と実際にサービスを受けて感じた印象の差異がどのようなものであったか、自分がまたお店に行きたいと思ったか、誰かにお店を紹介したいと思ったか、といった事項を心理状況の変化も交えながら詳細に記述する。したがって、クライアントは、規定どおりのサービスが行われているかだけでなく、その時々の状況におけるサービスの具体的なやり取り、サービスを受けた消費者の心象といったものを詳細に知ることができる。
また、従業員満足度を測る「サービスチーム力診断」では、(1)リーダーシップ、(2)チームの遂行力、(3)チームの風土、(4)スタッフの主体性、(5)スタッフの満足度の5つの観点で調査を行っている。2011年9月のサービス開始から累積で51万件(2018年3月期時点)のデータが蓄積されており、業界平均値や調査結果の高い企業・店舗等の平均値と比較・検証することによって、クライアント企業・店舗等の良い点や悪い点を把握することもできる。
そして、「ミステリーショッピングリサーチ」や「サービスチーム力診断」の調査結果をもとに、ボトムアップ型でサービス改善を行うのが「HERBプログラム」である。改善活動をどのように実施し定着させるのか、従業員のモチベーションをどのように向上させるのか、働きがいのある職場をどのように作るのか等、調査によって見いだされた経営課題に対してコンサルティングを行っていくプログラムであり、店舗スタッフが自発的にサービス品質の向上に取り組む環境構築を目指す。
創業からベンチャーキャピタルに出会うまでの経緯
コンサルティング会社から分社化
同社の主軸となっている「ミステリーショッピングリサーチ」は、もともとは東証2部上場企業であった経営コンサルティング会社(株)日本エル・シー・エー(以下、日本LCA)において、外食向けコンサルティングのクライアントに対するサービスとして誕生した。
しかし、2002年、外食向けコンサルティングチームの解散により、宙に浮いた「ミステリーショッピングリサーチ」を当時日本LCAのインターネット関連の新規事業部長であった並木社長が引き継ぐこととなった。並木社長は、「もともとは採算度外視で行っていたサービスであったが、私が引き継いでからはストックビジネスとしての可能性を感じ、事業として成り立つようサービスや価格面を見直した。しかし、継続率は5割程と想定通りにいかなかったため、お客様の声を丹念に調べてみた。すると、我々のサービスが業務チェックではなく、スタッフのモチベーション向上のツールとして用いられている事を教えて頂いた。そこで、コンセプトを抜本的に見直し、“ツーストライク・ワンボール”の考え方、すなわち調査を行う際には良いところを二つ、もったいないところを一つ、といった形でスタッフのモチベーションを高めながら改善に繋げられるようなサービスに作り上げていったところ、事業として成り立つようになってきた。」と振り返る。
2008年5月、日本LCAは同事業を並木社長のもと分社化した上で事業会社へ売却、翌年には事業会社からファンドへ売却された。その後、同ファンドがさらなる売却先を検討していた際、東京海上グループの投資会社である東京海上キャピタル(株)が候補に挙がった。そして、2013年5月、(独)中小企業基盤整備機構が出資し、東京海上キャピタル(株)が運営するTMCAP2011投資事業有限責任組合が同社の株式を取得することとなった。
ファンド等を活用した事業の拡大と成長
初期の段階で考え方をしっかりと共有
投資直後から同社は、東京海上キャピタル(株)から様々な支援を得ることができた。
例えば、営業面では、東京海上グループが保有する顧客の紹介だけでなく、投資担当者が一緒になって営業に回り、若手の営業人員を育成してもらった。また、金融機関に対してもサービスを積極的に行った方がよいとの提言を受け、紹介してもらったコンサルタントと共に金融機関のニーズを汲んだサービス作りや販路開拓を行っていくための基盤を作っていった。今では、金融機関向けのサービスも同社の強みとなっている。上場へ向けた準備に関しても、主幹事証券を紹介してもらっただけでなく、例えば、総合職について新たに時間管理を導入するといった労務面の整備を行っていく必要があったが、その分野に特化した労務コンサルティングを紹介してもらう等、上場へ向けた体制作りも比較的スムーズに進めることができた。
並木社長は、「ファンドさんとは、入り口の段階で、どのような目的があるのか、どのような社風であるのか、どのように経営を行っていきたいかということをしっかり共有することが大事。我々の場合でいえば、創業時に全社員と議論して作った経営理念を基礎に置き経営を行っているが、その理念経営を第一に考えて欲しいこと、経済情勢にもよるが基本的に上場を目指していること、さらに、今まで目標数字はほぼ達成しており今後も着実な成長を目指していくが、仮に我々に急激な成長を求めるなら投資を行わないで欲しいといったことまでしっかりと共有させて頂いた。その結果、我々の目指す方向に合わせて、東京海上キャピタルさんから独自の専門的知見やネットワークに基づくご支援を受けることができた。」と述べており、投資の入り口においてファンドと考え方をしっかりと共有しておくことが、如何に重要であるかが伺える。
IPOによる経営効果と今後の展望
社会的に価値ある事業を継続的に行っていくため上場
2017年、同社は、東証マザーズに上場を果たした。並木社長は、上場の目的について、「社会的に価値のある事業を継続的に行っていくためには、上場によって社会に株主になってもらうことが最善の方法だった。また、付随して、上場による認知度の向上で信用力や営業面、採用面、従業員のモチベーション向上に繋がる点も目的としてあった。実際、上場によってマスメディアに露出する機会も増え、問い合わせが急増している。」と語っている。
志向する3つのビジョン
同社は、毎期売上の約9割が既存顧客で占められており、ストックビジネスとして順調に業績を伸ばしている。また、急増している訪日外国人客を対象とした満足度調査等、新たなサービスのほか、パート・アルバイトも含めて全従業員が時間や場所を問わず手軽に調査レポートを閲覧し、そこから得た気付きを瞬時に発信・共有できる「MSナビアプリ」といったシステムもリリースしている。
並木社長は、今後のビジョンについて、「大きく3つあるが、一つ目は、既存のお客様に対して、新たなサービスをクロスセルでご利用頂けるよう取り組みたい。二つ目は、調査を毎月行っている店舗もあれば、年間1~2回のところもある。しかし、調査をこまめに行っている店舗ほどリピーターの割合が増加しており従業員の満足度も向上している。調査頻度を高めることで、改善意識や帰属意識が高まり、顧客・従業員満足度も向上していく傾向にあることから、調査頻度を高めて頂けるよう取り組みたい。三つ目は、少し長期的な話になるが、当社が行った調査をスマートフォンで全従業員が見られるようになり我々も各店舗でどれだけ調査データが活用されているのかが分かるようになった。各店舗の業績データを各種調査や活用実態と組み合わせることで、店舗ごとの戦術に資する情報をコンサルティングを通じて提供するだけでなく、『MSナビ』等から自動でレコメンドできるようにしていきたい。」と意気込みを語っている。
代表者プロフィール
代表取締役社長
並木 昭憲
1963年7月18日生まれ。1986年、株式会社日本エル・シー・エー(現株式会社エル・シー・エーホールディングス)に入社。その後、1999年に取締役CIS事業部長、2004年に常務取締役外食業界担当役員、2007年に専務取締役兼CLOを経て、2008年5月に同社の代表取締役社長に就任(現任)。
起業家を志す方へのアドバイス
一つ目に、経営者は、短期の目と長期の目という複眼でみていくことを意識する必要がある。短期の目は、どのようなステージに立っているかによって異なるが、事業継続のため資金繰りに気を配ったり、短期の目標を達成していくといった目である。しかし、存続に差し障る場合は別として、短期の目によって長期の可能性を潰してはならない。しっかりと長期ビジョンを見据えた上で経営を行っていく長期の目が経営には必要である。二つ目は、なるべく早くナンバー2やナンバー3を作りマネジメントチームを形成すること。私の場合には、周りにどんどん任せて、何かあれば全て自分が責任を取るといったマネジメントスタイルを取ってきたこともあり、現在では経営管理に集中できる体制となっている。
投資会社の声
同社に投資をするに至った判断のポイント
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全国に40万人以上の登録モニターを有しており、全国レベルでの調査が可能
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早くからMSR(ミステリーショッピングリサーチ)市場に参入しており、IT活用による生産性改善ノウハウあり
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外食業界を中心に幅広い業界に分散した安定した顧客基盤
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コンサルティング・研修機能とのシナジー効果により、調査品質に優位性あり
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並木社長を中心とした、長期ビジョンで成長戦略を実行できるマネジメントチームの存在
以上の点を高く評価して投資に至りました。
投資会社の視点からみた同社の成功要因
同社では「精神的に豊かな社会の創造」を経営理念に掲げ、従業員満足度と顧客満足度の向上支援により、サービス産業の活性化に貢献することをゴールとしています。
この理念が同社社員にしっかり浸透しており、丁寧な顧客へのコンサルティングがクライアントの成長を確かなものとし、現在までの顧客基盤の拡大につながっていると考えています。
東京海上キャピタル株式会社
2018年度取材事例
掲載日:2019年1月31日
※この事例は取材した当時の内容をもとにとりまとめを行っているものです。
従いまして、現在の企業様の事業内容等と異なる場合がございますので、予めご了承くだいますようお願いいたします。