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株式会社ポテトかいつか

さつまいもの新しい価値を育む

会社概要

事業内容

さつまいも加工卸売事業、直営販売事業、通信販売事業

本社所在地

茨城県かすみがうら市男神240番地18

設立年

2017年2月(創業1967年)

資本金

1億円

売上高

非公開

年間取扱数

約19,000トン

従業員数

約250人(2020年3月時点)

ファンド事業

中小企業成長支援ファンド出資事業

同社に投資を行った出資先ファンド名 (無限責任組合名)

J-GIA1号投資事業有限責任組合(日本成長投資アライアンス株式会社)

事業概要

「プロフェッショナル集団」として、さつまいもの「リーディングカンパニー」を目指して

ポテトかいつかは茨城県かすみがうら市に本社を置くさつまいも専門の会社である。1967年(昭和42年)創業以来、さつまいもの卸売事業を中心に成長してきた。現在では450軒の契約農家とともに年間約19,000トンのさつまいもを取り扱い、国内から国外まで幅広く販売している。

焼き芋機器を量販店に貸与し、焼き芋用の生芋を供給するビジネスモデルを確立して事業が急拡大した。全国に1,000台以上の機器を設置している。また、2012年(平成24年)からは直営販売事業を立上げて、焼き芋専門店として店舗事業、通販事業を展開している。

  • 店舗の写真

オリジナルブランド「紅天使」、新たなブランド「華むらさき」

茨城県は全国でも有数(都道府県別2位)のさつまいも生産地であり、同社が提供する「紅天使」は全国でも非常に名の通ったオリジナルブランドである。「とても甘く、しっとりとして、まるでスイーツのようだ」と評価されることも多い。

また、2020年からは、紫芋の品種改良から生まれた新品種オリジナルブランド「華むらさき」を販売開始した。紫芋はもともと色素原料として使われる芋であったが、品種改良を重ねることで鮮やかな紫と上品な甘さを持つ「華むらさき」の開発に成功した。食用としては、これまでにないおいしさの紫芋が開発された。消費者ニーズに合わせた、新たな品種の探索をこれからも続けていく。

  • オリジナルブランド「紅天使」の写真
    オリジナルブランド「紅天使」
  • 新品種オリジナルブランド「華むらさき」の写真
    新品種オリジナルブランド「華むらさき」

女性が買いやすい商品・パッケージ・店舗

焼き芋と言えば屋台というイメージを払拭するために、ブランド戦略として商品開発・パッケージ開発・店舗開発に取り組んできた。干し芋、大学芋、ジェラートなどを開発し、店舗販売、通信販売を行っている。店舗は、かすみがうら本店直売所、プレイアトレ土浦店、イオン土浦店、つくば店、流山おおたかの森店がある。

  • 店舗の写真
  • 干し芋や大学芋の写真
    干し芋・大学芋等

中小企業成長支援ファンドに出会うまでの経緯

家族経営から脱却し、企業への転換を目指す

貝塚みゆき氏(以下、貝塚社長)の父である貝塚照雄氏(以下、先代社長)が19歳で創業して以来、祖父母が手伝い、嫁いだ母が手伝い、家業として始まり、その後は長女の貝塚社長はじめ兄弟たちが加わり、家業の延長線上の家族経営の企業として成長してきた。

貝塚社長はもともと美容に関する仕事に就いていたが、父の後姿を見て育ち、父にあこがれていたこともあり、同社の経営に関心を持つようになっていた。15年以上前に同社に加わることになったが、従業員は50名に満たない程度の企業規模であり、家族経営の延長でもなんとか運営できていた。

貝塚社長が同社の一員になってからは、先代社長とともに焼き芋機器を開発し、量販店に機器と生芋を一緒に販売するビジネスモデルを確立した。そして、直営販売事業を立上げて、焼き芋専門店として店舗事業、通販事業を展開し、売上高が急増していったが、企業として中身が成長しているかと言われれば決してそうではなく、事業の成長に組織体制、管理体制が追い付かない状況であった。同社の家族経営にはバランスや役割の面でメリットもあれば、デメリットもあった。持続的経営のためには、家族経営がボトルネックになりかねないと考えていた貝塚社長は、家族経営から企業経営に変わらなければいけないと強く感じるようになっていた。この時期、先代社長も事業成長と同時に危機感をいだき、事業承継を模索している時であった。

ファンドの決め手は、経営理念と支援体制

先代社長は、事業承継だけでなく売却も視野に入れて情報収集するようになった。以前からM&Aのオファーを受けることも多かった。貝塚社長も複数のファンドと面談を行ったが、本当に納得できるご縁はなかった。そうした中で、代表取締役社長立野公一氏(以下、立野社長)が率いる日本成長投資アライアンス株式会社(以下、J-GIA)からの提案に魅力を感じた。「J-GIAとだったら、新しい企業に生まれ変われるかもしれない」と直感したという。

立野社長は以下の4つのポリシーを掲げている。1つ目が成長投資のプロとして、成長余地のある企業を見出し、積極的な支援を提供し企業成長を実現することにこだわること、2つ目が、JTや博報堂という強力なパートナーと自らコンサルティング部隊を擁し、具体的な事業支援を実施できるということ、3つ目は成長企業に投資できるようにバイアウトのみならずマイノリティ投資(株式の過半数を超えない投資)も積極的に行うこと、そして4つ目がJ-GIA自身が成長企業であることであった。

貝塚社長によれば、「J-GIAは、短期的な利益だけを求めるという従来抱いていたファンドのイメージとは違った。中長期的な視点で、ポテトかいつかの良い部分を引き出して、一緒に解決して成長していこうという姿勢に共感した」とのことである。そして、2017年4月、独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資し、J-GIAが運営するJ-GIA1号ファンドより、出資を受け入れる決断に至った。

中小企業成長支援ファンドを活用して

組織体制構築と経営管理強化

成長支援ファンドの支援を受けるにあたっては、JTからの出向者に執行役員として支援いただいた。始めに、家族経営で抱えていた課題から脱却するために、組織体制の構築や経営基盤の強化を図った。新しい風を入れることで、多様なチームが生まれ、経営の見える化が実現できた。J-GIAは論理的、分析的、ファクトベースで仕事をするということを同社に根付かせた。見える化、仕組化、課題抽出、解決をするという非常にシンプルな手法で、支援を受ける前とは全く違う会社になっていった。

以前は、組織図や役職もなかったが、組織設計を行い、人事制度も確立した。優秀な管理職人材も採用することができた。J-GIAが募集をかけて首都圏からも採用することができた。現在の組織はマーケティング開発部、研究開発部、仕入本部、製造本部、品質管理部、営業本部、直販本部、管理本部、企画本部の9つの部門構成で、各部門の長に権限が委譲されている。

JTからのその他の支援は、テーブルマークの品質監査と5Sプロジェクトを立ち上げ、工場視察により受けた100項目に及ぶ改善項目の改善に指導を受けながら、改善に取り組んだ。新工場と一貫生産ライン構築に当たっても、テーブルマークの新潟魚沼工場を見学し、品質向上、省人化、生産性向上を実現する新加工工場を完成することができた。

  • 新加工工場の写真

ブランド構築

博報堂にはブランド構築に関する支援を受けた。特にB to Bに関する事業に関してはブランド構築に悩んでいた。プロジェクトチームが結成され、議論を重ねた結果、日本をやきいもであたたかくする。そんな大きな志を持って進んでいく会社という思いを込めて「ほくほく山KAITSUKA」という新ブランドが生まれた。ロゴデザイン、パッケージデザイン、東京に焼き芋カーを走らせるなど、ブランド発信、プロモーションに関する提案、計画立案から実行まで支援を受け、現在はブランド認知活動を継続している。

  • 新ブランド「ほくほく山 KAITSUKA」のロゴデザイン
    「ほくほく山KAITSUKA」のロゴデザイン

企業文化が変わった

2018年に社内でプロジェクトチームを立ち上げ、経営理念を掲げた。

  • ミッション:さつまいもの新しい価値を育む
  • ビジョン:私たちは、「プロフェッショナル集団」として、さつまいもの「リーディング カンパニー」を目指します
  • バリュー:常に探求心を持ち、常に誠実に行動し、常に一体感を大切にします

新たに採用する人材も経営理念に共感できる人材が県内外から集まってきた。同社で働く正社員は2017年時点では60名、繁忙期でも従業員250名の規模であったが、新規に正社員を70名登用し、現在では繁忙期には460名の従業員が働いている。以前は、平均年齢が60代であったが、現在は40.7歳と若い会社になった。今でも、一体感のあるチームを目指して、浸透活動を行っている。

貝塚社長によれば「3年前までは、事業承継とファンドの組み合わせは聞いたことがなく、ファンドのイメージもよく思わないという人が多かったと思うが、今の時代は違う。この地方に新たな多様な価値観を持った人を取り入れることで、新しい文化も生まれた」という。

今後の事業の展望について

世界一のさつまいもリーディングカンパニーを実現したい

2020年2月28日、株式会社ポテトかいつか株主は普通株式及び新株予約権の全てをカルビー株式会社に譲渡する契約を締結した。同社が独自にIPOを果たすという選択肢もあったが、カルビーの完全子会社になる決断をした。

貝塚社長はこれを良縁と考えている。世界一のさつまいもリーディングカンパニーを目指すには仲間が多い方が良い。未来を見据えた場合に、カルビーと仲間になって一緒に世界一のリーディングカンパニーになることが良いと考えた。捨てるものもある一方で、得るものも大きいのであれば、それを選択することが重要である。カルビーと価値観が合致したことが最大の決め手であるが、両者のあらゆる技術、ノウハウ、人材、設備を活用し、シナジーを発揮することで、成長のスピードを加速することができると考えた。

今後はアジアと欧米での焼き芋の展開を考えている。欧米ではさつまいもはスイーツの材料という発想であるが、アジア圏では焼き芋文化がある。世界でナンバーワンのさつまいもリーディングカンパニーを目指す。

美と健康の追求とエビデンスの整備

さつまいもは昔から美と健康に良いと言われている。数年前、理化学研究所や文教大学と連携して腸内環境のデータを蓄積・解析した。日本国内が成熟する中で中食が増えている。食品に機能性を求め、美と健康を追求するニーズとさつまいもはマッチすると考えている。これらの需要に応えていきたい。特に女性の嗜好にあった品種・商品の開発が重要であると考えている。

また、高齢化社会を迎えるにあたり、さつまいもが貢献できる分野があると考えている。同社の商品にはアンケート用紙(返信葉書)がついており、その中には寝たきりで食の細っていた方が同社の焼き芋を食べることができて元気を取り戻した、一週間食べたら排便が良くなったといった生の声が寄せられる。これらの課題に対してエビデンスを整備して応えられるようにしていく。

国内にもまだまだホワイトスペースがあり、そのニーズに対応する使命がある。国内の需要に対して供給が追い付いていないという現状を打破する必要がある。焼き芋の工場を新設したが、生芋の工場はキャパシティーが限界に近づいており、現在増築を検討中である。

また、さつまいもは農作物であり、工業製品ではない。したがって、生芋の収穫量、調達量が事業成長のボトルネックになる。現在の成長は年率10%程度であるが、これをさらに引き上げて持続的なものにしていきたい。これを実現するためにも仲間づくりが必要であり、カルビーと向き合うことにした理由もそこにある。

貝塚社長から事業承継に悩む経営者の方へのメッセージ

貝塚社長の顔写真
貝塚社長

家族経営でやっていると新しいものを取り入れることが難しくなってしまうことがあります。しかし、自分たちがやってきた環境を変えないと次がないのではないでしょうか。私たちは持続的な経営の実現のために、変わることを選択しました。変わる勇気、覚悟、すべては経営者の勇気、覚悟だと信じています。

少し見方を変えると新しい世界が待っていることを体験しました。数々の改革に取り組みましたが、古くからの社員は一人もやめていません。新しく加わった社員と融合しています。新しいことに取り組むときに難しさもありますが、ネガティブなことは何もありません。社員一人一人が、お客様のために出来ることをしよう、ファンを広めたい、そのために頑張ろうと行動してくれています。経営者が勇気、覚悟を持って改革に臨むことの大切さを強く感じています。

ファンド運営者の声

【同社に投資をするに至った判断のポイント】

同社は、創業50年を超える国内最大規模のさつまいも専業の食品会社であり、成長市場である店頭焼芋市場におけるパイオニア企業です。同社は茨城県を中心とした契約農家から直接さつまいもを仕入れ、青果市場を通さずに、スーパー等の小売店に販売するユニークなビジネスモデルを有しております。

弊社の特徴であるアライアンス・パートナー(JT、博報堂)の人材やネットワークを活用することで、同社の成長性を更に高めることが出来ると判断し投資に至りました。

【事業承継ファンドの視点からみた同社の成功要因】

「さつまいも卸」から「さつまいも総合カンパニー」へとビジネスモデルを進化させた点と、「家業」から「企業」へと経営体制を強化させた点にあると考えています。弊社による出資前は生産者からさつまいもを仕入れ、さつまいもを小売店等に販売する卸事業が中心でしたが、近年は博報堂と連携したポテトかいつか独自の商品ブランドの浸透やJTと連携した加工品事業の強化、生産法人の設立による自社生産への参入等、卸事業以外にもさつまいもに関わる様々な事業を展開する企業へと進化しました。また、以前はオーナー社長が中心に意思決定をしていましたが、マネジメントがチームで会社運営を司る体制を構築し、より大きな事業を滞りなく経営できるよう成長しました。

こうした事業モデルや経営体制の変革によりポテトかいつかの付加価値が高まり、競合に対する差別化要素を創り出すことが出来たことが成功要因であると考えています。

日本成長投資アライアンス株式会社

  • この事例は取材した当時の内容をもとにとりまとめを行っているものです。
    従いまして、現在の企業様の事業内容等と異なる場合がございますので、予めご了承くださいますようお願いいたします。
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