VALUENEX 株式会社

世界中に氾濫する大量の情報から新たな知を創造

会社概要

事業内容
情報解析による情報提要サービス業、ツールライセンス販売業
本社所在地
東京都文京区小日向4-5-16ツインヒルズ茗荷谷
URL
設立年
2006年8月
資本金
(2019年7月31日現在)
522百万円
売上高
(2019年7月31日現在)
557百万円
従業員数
(2019年7月31日現在)
28名
ファンド事業
起業支援ファンド(出資時点ではベンチャーファンド出資事業)
同社に投資を行った出資先ファンド名
(無限責任組合名)
早稲田1号投資事業有限責任組合(ウエルインベストメント株式会社)

事業概要

世界中に氾濫する大量の情報から新たな“知”を創造

2006年8月、現代表取締役社長である中村達生氏(以下、中村社長)は、「世界に氾濫する大量の情報を俯瞰的に可視化できないか」という視点に着想を得た解析テクノロジーを事業化するために同社を設立した。 現在、同社は、米国にある100%子会社と共に、「世界に氾濫する情報から“知”を創造していく企業」をミッションとして、中村社長が独自に開発したアルゴリズム(コンピュータ上の解を得るための具体的手順)を基盤とするビッグデータ解析ツールのサービス提供の他、解析ツールを用いたコンサルティングサービスやレポート販売といった事業を展開している。

同社IRよりサービス概要 (326KB)

未来に向けて新たな示唆を与える解析ツール

近年、膨大なデータ量であることから処理が困難として見過ごされてきたビッグデータの活用に注目が集まっている。同社のビジネスは、まさにこのビッグデータから新たな価値を見出すことにある。 同社は、自然言語処理・類似性評価・2次元可視化・指標化等の技術が盛り込まれた独自の解析ツールを用いることで、文書や新聞、ネット上の書き込み等の様々な文書情報を、短時間で正確に分類・マッピングして、下記のような一枚の絵に表すことができる。

株式会社VALUENEXのIR情報にて例示されている俯瞰解析図を掲載
<同社IR資料より俯瞰解関図の例>

このように膨大な情報を一枚の絵として表した「俯瞰解析図」では、既存の多変量解析手法とは異なり、情報の分布だけでなく、密度や重なり、情報間の距離、情報の時系列での動きといったものまで把握することが可能となる。
例えば、昨今スマートフォンの画面に採用されている有機ELについて、その技術動向を探るために関連する特許文書を集めるならば数万単位の数になる。これらの特許文書を解析しようとすれば、専門的知識を有する人が文書の中身を一つ一つ丹念に確認・整理していく必要があり、多大な時間と労力を費やすであろうことは想像に難くない。
しかし、同社の解析ツールを用いれば、大量の特許文書であっても文書中に含まれているワードの類似性に基づき一枚の「俯瞰解析図」として誰でも短時間で表すことができる。そして、有機ELにはどのような技術領域があるのか、開発競争の激しい技術領域はどこか、各技術間の距離や重なりから自社の技術と競合関係あるいはシナジー関係にある企業はどこか、近年競合他社が力を入れて開発している技術領域はどのようなもので今後どこに向かおうとしているのか、といったことを把握することができる。

また、「俯瞰解析図」では、特許の出願件数の少ない空白領域も大きな示唆を与えてくれる。この空白領域は、法的・技術的に実現不可能な領域である場合、技術としては存在しているがあえて出願せず秘匿している領域である場合が考えられる。しかし、誰もまだ気づいていないか、気づいていても実現まで至っていない未踏の領域である場合、大きなビジネスチャンスとなりうる。経営資源を集中して研究開発を行うことで、将来的に技術上の競争優位に立てる領域かもしれないからだ。 このように同社の解析ツールは、膨大な情報を「俯瞰解析図」という一枚絵で正確に可視化させることで、単なる現状の把握にとどまらず、未来に向けて新たな価値を生みだすきっかけを与えてくれる。そのため、研究開発の立案や商品開発、サービス開発、流行予測、プロモーション、投資先の発掘等、様々な場面で活用されている。

同社では、独自の解析技術を武器に、日本・米国・欧州等の特許データベースとリンクしている特許専用の解析ツール「TechRadar®」と、新聞紙・社内文書・アンケート・インターネット情報・POSデータ等あらゆるテキスト文書情報の解析ツール「DocRadar®」をインターネット経由で提供している他、クライアントへのコンサルティングサービスや話題のテーマを解析したレポート販売も行っており、クライアントから高い評価を得ている。

創業からVCに出会うまでの経緯

前職の繋がりからVCを知る

中村社長は、前職では、リニア中央新幹線の経済波及効果や国立公園の緑地効果を予測するための数式モデルを作る等、物事の道理を数式で表してシミュレーションを行う分野で実績を積み上げていった。一方で、ビッグデータという用語が世の中にまだ広がっていない時代の中で、「大量の情報を俯瞰的に可視化したら新しい価値を得られるのではないか」といった当時では先見的な着想を得た。そして、2006年8月、その着想を事業化すべく同社を設立した。

創業後は、まず初めに考案したアルゴリズムに基づく解析ツール作成のための資金調達に動いた。日本政策金融公庫の創業融資や公的機関の補助金制度等を活用するのと並行して、ベンチャーキャピタル(新興企業等に投資を行う会社や組織、以下VC)からの資金調達を模索していた。中村社長は、VCから資金調達を試みたきっかけについて、「前職の先輩が既に起業しており、その先輩の兄もVCを経営していたことから、VCからの資金調達について色々と教えてもらった。そして、スタートアップの段階でも、ある程度まとまった資金を投資してもらえるVCについて相談したところ、ウエルインベストメント(株)の瀧口社長を紹介してもらった。」と語っており、その後、ウエルインベストメント(株)を含む数社から投資を受けることとなった。

VC等を活用した事業の拡大と成長

創業4か月で資金調達に成功

同社は、創業から4カ月後の2006年11月、(独)中小企業基盤整備機構(以下、中小機構)が出資し、ウエルインベストメント(株)が運営する早稲田1号ファンド等から約1.5億円、翌2007年12月にも再び早稲田1号ファンドを含めて数社から約3.5億円、創業初期の段階でありながら合計約5億円もの資金調達に成功した。

中村社長は、ウエルインベストメント(株)ついて、「まだパワーポイントで作った絵しかなかったにも関わらず、リードインベスターとして投資をして頂いた。そして、ウエルインベストメントさんの存在があったからこそ、他のVCからの投資も募ることができ、結果として5億円もの資金を調達できた。」として、他のVCへの資金の呼び水的な効果も担ったことが伺える。また、早稲田1号ファンドに公的機関である中小機構が出資していることから、より安心感をもって投資を受け入れることができたとも振り返っている。
中村社長は、VCの金融機能についても、「今の時代、低金利で銀行から融資を得ることができるため、間接金融による資金調達は有用ではあるが、創業初期という段階では、リスク経営のできない銀行の存在感は薄く、特にまとまった資金を得るためにはVCによる直接金融がなければ非常に難しい。」との所感を抱いており、スタートアップ段階のベンチャー企業にとってはVCからの資金調達が大きなポジションを占めることが伺える。

創業から上場に至るまで一貫してVCによる手厚い支援を受ける

同社は、ウエルインベストメント(株)から投資と同時に社外取締役も受け入れ、様々な支援を受けることができた。
中村社長は、「我々のミッションやビジョンは創業初期から変わっていない。正直、最初はミッションやビジョンの必要性が分からなかったが、瀧口社長から会社の憲法のようなものだから作るべきだと諭された。そこで、瀧口社長とディスカッションを重ねながら、私の頭の中にあった思いや考えを普遍的な言葉として形に表していった。現在、この時に作成したミッションやビジョンをもとに戦略を策定し、事業を展開している。今後、仮にミッションやビジョンが変わる時があるとしたら、会社自体が変わる時であろう。そのぐらい我々にとって重要なものであり、今振り返っても創業初期の段階で作成できて本当に良かった。」と述べている。

また、近年、人手不足が叫ばれる中、ベンチャー企業が優秀な人材を採用することは非常に難しく、事業を行っていく上で大きな課題となっている。しかし、同社は、MBA(経営学修士)保持者や役員経験者等の優秀な人材を何人も紹介してもらい、CFOや常勤監査役といった経営幹部も含めて体制を整えることができた。なお、中村社長は、「例えば、シリコンバレーでは、即戦力となる人材が豊富におり、募集せずともビジネスに混ぜてくれとベンチャー企業に声をかけてくることもある。人件費は確かに高いが、失敗する筈がないと思えるような人材を揃えることができる。この人材採用における環境の違いは、日本のベンチャー企業に国際競争力がない理由の一つであろう。」と述べている。

営業面においても、海外展開を含めて大手企業の社長や広い人脈を有する人物を紹介してもらった他、一緒に営業にも回ってもらった。また、企業や官公庁、大学関係からの仕事をウエルインベストメント(株)を通じて請け負うことで新たな顧客開拓につなげることもできた。
その他、IPOに際しても、監査法人や証券会社を紹介してもらう等、まさに創業から上場に至るまで一貫して手厚い支援を受けることができた。中村社長は、「どのようなパートナーと出会えるのかはとても重要。ウエルインベストメントさんには真の意味でのハンズオンをして頂き、会社とVCが一体となって成長できた。心より感謝している。」と語っている。

IPOによる経営効果と今後の展望

上場は資金調達力と信用力の向上

2018年、同社は東証マザーズに上場を果たした。中村社長は、上場のメリットとして資金調達力と信用力の2点をあげている。
上場によって得た約9億円の資金は今後人材やシステム投資を予定しており、上場間もないものの優秀な人材が以前より集まるようになってきたとのこと。中村社長は、「上場は山の頂上のように考えていたが、実際には山の中腹の入り口といった印象。これからまさに山登りを本格的に行っていく段階だ。」と意気込みを語っている。

グローバル展開を加速、VALUENEXブランドの確立を目指す

同社は2019年7月31日時点で220を超える企業・団体にサービスを提供している。とりわけ国内大手企業のクライアントが多く、競合他社分析や研究開発、マーケティング、ファイナンス等の幅広い分野で同社のツールが活用されている。中村社長は、「本当は中小企業にこそ必要な分析だが、まだ必要性が理解されていない。今後300万社以上ある中小企業が当社のツールを使うことで未来をみて戦略を考えるようになれば、より面白い分析ツールとなっていくであろう。」と語っている。

今後のビジョンについて、3年後には売上がグローバル中心になると考え、中村社長も1年の半分を海外での業務に当てているという。売り上げは順調に伸長しており、また、スタンフォード大学から革新的な企業として表彰される等、海外でもプレゼンスを確実に高めつつある。
中村社長は、「10年、20年先には、表立って目立つ会社ではないけれど多くの人が恩恵を享受している、皆さんが耳にすればあの会社か、と言われるようなVALUENEXというブランドを確立したい。また、お客様にサービスを提供するビジネスモデルからさらに一歩踏み込んで、例えば、ファイナンス分野やヘルスケア分野の解析結果から新たなビジネスの種をみつけて、自らも事業として展開していくといった可能性も含めて広い視野でビジネスを行っていきたい。」と語っており、同社のさらなる飛躍に期待がかかる。

代表者プロフィール

1965年11月25日生まれ。1991年、株式会社三菱総合研究所に入社。その後、東京大学工学部助手、株式会社三菱総合研究所復職を経て、2006年に同社の前身である株式会社創知を設立、代表取締役社長に就任(現任)。2014年、アメリカに完全子会社VALUENEX, Inc.を設立、CEOに就任(現任)。

起業家を志す方へのアドバイス


代表取締役社長 中村達生

私が経営で気を付けていることはブレないこと。経営者は遠い先を見て経営をしなければならないと思っており、遠い先を見ているからこそ、最先端でそこに近づくことができると感じている。ただ、遠い先を見ていても、表現の仕方が変わってしまえば、その表現に捉われて周りの人たちがブレてしまうかもしれない。したがって、相手の理解力を踏まえた話し方、スピード、内容等に気を付け、コミュニケーションを密にすることを大事にしている。スタートアップの経営者は何かしら先を見据えて事業を行っているのだから、周りに簡単にわかってもらえるとは思ってはいけない。あとは、なるべく怒らないこと。人を許容すること、謙虚であることを心掛けている。

ベンチャーキャピタルの声

同社に投資するに至った判断のポイント

リサーチ活動において仮説として「インターネットの普及を通じた情報量の指数関数的増加時代において、人手のみで情報を整理することの限界となる時期が到来し、特に整理整頓された情報が今まで以上に価値を生む。」という仮説のもとに企業を探索してまいりました。
その中で、早稲田大学の非常勤講師を務めていたVALUENEX中村社長と出会い、中村社長の有していた技術・アルゴリズムと弊社が想定していた仮説とがマッチし、事業展開に関するシナリオの構築ができたことから投資を実行しました。

投資会社の視点から見た同社の成功要因

創業当時よりミッション、ビジョンを作成したうえで、事業展開に対してのシナリオを持ち自社で開発したアルゴリズムを適切な領域に活用してビジネスを展開した点。事業ステージに応じて、同社の目には見えない価値(インタンジブルズ)が醸成されていった点。
創業期よりグローバルでの展開を見据えてしつこく続けて同社が進むべき道を作り上げた点。

ウエルインベストメント株式会社

  • この事例は取材した当時の内容をもとにとりまとめを行っているものです。
    従いまして、現在の企業様の事業内容等と異なる場合がございますので、予めご了承くださいますようお願いいたします。