株式会社 アスタリスク

「モノ認識」×「モバイル」のAsReaderで世界を変える

会社概要

事業内容
スマートデバイスに装着するハンディターミナル「AsReader」の設計・製造・販売
本社所在地
大阪府大阪市淀川区西中島五丁目6番16号
URL
設立
2006年9月
資本金
7億8,940万円
売上高
17億9,200万円(2021年8月期)
ファンド事業
中小企業成長支援ファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名
(無限責任組合名)
DCIハイテク製造業成長支援投資事業有限責任組合
(大和企業投資株式会社)

事業概要

「モノ認識」と「モバイル」を軸とした事業展開

株式会社アスタリスク(以下、当社)は2006年9月に鈴木規之氏(以下、鈴木社長)により設立された。当社は、画像認識やバーコード、RFID、センサー、AIなどを駆使して人や情報、あらゆる物を認識する「モノ認識」技術とスマートデバイス等の「モバイル」を軸に事業展開を行っている。

RFIDとは、電波を用いてRFタグ内のデータを非接触で読み書きするシステムのことであり、リーダーライターから発信される信号を電力に変換することで機能する。主な特徴は3つある。1つ目は、電波の届く範囲であれば遠くのRFタグも読み取ることができる非接触通信機能。2つ目は、複数の商品を一度に読み取ることができる一括読み取り機能。3つ目は、箱などを開けなくても中のモノを読み取ることができる透過性機能である。

当社が開発したAsReaderは、モバイル機器による業務改革をコンセプトにこのRFIDの特徴を活かしたハードウエアである。スマートフォンに装着して利用できるケース型のRFIDリーダー/ライターであるDockタイプ、アンテナ搭載でRFタグの読み取り距離10メートル以上のLongRange対応モデルであるGUNタイプ、RFタグのついた物品の入った段ボールを台車に載せたまま段ボールから取り出すことなく読み取ることができるゲートタイプなど、あらゆる現場に応じた製品がある。

AsReaderの製品
AsReaderの製品(当社決算説明資料より)

AsReaderは様々な産業へ業務改革・カイゼンをもたらしている。製造業界においては、生産管理部門における製品の点検作業や、出荷、移動に対応するトレーサビリティー(追跡能力)の精度維持。小売業界では、在庫管理を目的とした商品の検品出荷作業や、棚卸作業の効率化。医療業界では、担当看護師、患者のID、薬剤の3点照合を行うことでの医療業務の正確性向上。AsReaderは業種・業界を横断して多くの企業の生産性を上げて競争力強化を支援している。

導入企業一覧 (201KB)

ファンドに出会うまでの経緯

システムの受託会社として始まったアスタリスク

当社は鈴木社長が民間企業に勤めた後、高校時代のラグビー部の仲間3人と一緒に立ち上げた会社である。「まずはできることから始めよう」と、当初はシステム受託会社として、企業のHP作成やシステム開発を行っていた。事業を進めていく中で、「何かコンセプトを決めて照準を合わせよう」と、着目したのがモバイルであったという。

鈴木社長は当時発売されたiPhone3Gに着目し、研究開発を重ねた。そして、iPhoneをリーダーとしてブルートゥースで連携させたPOSレジを発表した。展示会などにおいて、事業会社からの製品に対する評判は高く、モノ認識モバイルという製品開発の方向性に確信をもっていった。

そして、MFi(Made For iPhone/iPad/iPodの略称。Appleが定める性能基準を満たした公式認定品)認証を獲得した工場と製造契約を結び、iPod touchに接続するリーダーとしての機能に特化したAsReaderを2013年に開発した。

事業が軌道に乗り始めた矢先にぶつかった資金難という壁

当社は、AsReaderの普及に向けて営業活動に力を入れていった。しかし、Apple製品自体が市場でやっと認知され始めた時期だったことに加え、それをバーコードリーダーとして活用する用途は今までになかったため、多くの企業は、興味は示してくれるものの導入までには至らなかったという。

「前例がないから導入は難しい」という理由で契約までに至らず営業活動に苦戦していた中、突如、連絡をしてきたのがトヨタ自動車株式会社であった。当時、トヨタはRFIDを自社へ導入することを検討している中で、最新鋭のモバイル端末を活用したバーコードリーダーを開発している会社として当社のことを取引先候補に入れていたという。すぐに依頼に応じ、商談と試作開発を重ねていった結果、取引契約に至ることができた。

この出来事をきっかけに、当社はRFIDを活用した「モノ認識」の事業展開へも本格的に着手する。しかし、創業当初から資本金1,000万円で事業を進めてきた当社は、これから先、多くの企業から引き合いがきたとしても、それらに対応していく資金が足りないという状況であった。

債務超過の危機的状況から起死回生の資金調達

それまで、借り入れだけで資金の対応をしていた当社は、財務上、大きな負債を抱えており、事業会社から大きな引き合いがきても動くに動けない状況であったという。この時に初めて鈴木社長は借入以外に資本を増やすという資金調達の方法を検討し始めたという。

まずは、ベンチャーキャピタルがどういう存在であるかなど、資金調達について色々と調べることから始めた。手探り状態の中、大阪と東京で30社近い会社を回り色々なファンドの在り方を知っていった。会社の見せ方についても、商品の説明を行っていたこれまでの営業のプレゼンと違い、投資家へは事業の将来性を示さなければいけない資金調達のためのプレゼンを行う必要があることも学んでいったという。

こうした中、2016年3月、独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資をし、大和企業投資株式会社(以下、大和企業投資)が運営するDCIハイテク製造業成長支援投資事業有限責任組合を中心に複数のベンチャーキャピタルからの資金調達に成功した。

ベンチャーキャピタルを活用して

オブザーバーとして機関投資家を迎え、考えを整理する場となった毎月の取締役会

当社は投資と同時に大和企業投資からは小林信男氏と堀川浩祐氏を取締役会のオブザーバーとして受け入れ株式公開に向けて事業を進めていった。

鈴木社長は、事業の意思決定について、それまでは社長として自分の判断だけで取り決めていくことが多かったが、ファンドからの出資を受け入れてからは、機関投資家達に正当な説明をすることが必要となったため、「外部の目があるのは良い刺激になった」と話す。一方で、投資家達は、取り決めた内容や進捗については無理に口出しをするということではなく、鈴木社長のやり方を見守ってくれた。そのため、事業進捗については、自分の裁量で自由にやらせてもらえることができた。「この支援の関与のバランスがとてもやりやすかった」と鈴木社長は振り返る。

また、大和企業投資からは営業面でのサポートも受けた。既に大和企業投資との信頼関係が構築されている企業への紹介を受けることにより、その関係にあずかり、非常に早いスピード感をもって受注につなげることができた案件もあった。

さらに、上場準備を初めて行う鈴木社長にとっては、証券会社などとの取り決めについて判断基準がわからないことが多かったという。そうした時に、これまで多くの企業の上場支援を行ってきた大和企業投資へ、第三者の視点として気軽に意見を聞くことができたことも安心材料であったと話す。

今後の事業の展望について

欧米市場の開拓と画像認識製品の開発への注力

2021年9月、当社は東証マザーズへ上場した。今後の事業展開については、欧米の市場により力を入れていきたいと話す鈴木社長。既に2015年に進出したアメリカ市場では、ようやく実績が出てきたという。ヨーロッパ市場では2018年に代理店施策としてオランダのロッテルダムに子会社を設立したが、その矢先に新型コロナウイルスが流行し営業が行えない状況が続いている。市場としても欧米は日本よりも規模が大きいため、コロナの収束が見えてくれば、日本以上に売上が上がると踏んでいる。

地域別の売上予測 (137KB)

同時に、日本市場についても、RFIDに関して、これまではアパレル業界で中心に使われてきたが、医療業界や物流業界でのニーズも今まで以上に高まってきているという。今後ともRFIDには注力していき、普及を広げていきたいと話した。

そして、製品開発については、画像認識技術をつかった製品の開発・販売に力を入れていきたいという。画像認識という技術については、多くの事業者が注目を注いでいる一方で、製品として販売している会社はまだ少ないとの認識である。

当社は画像認識技術を活用し、人検出技術、動体追跡技術を用いたセミセルフレジを2020年に発表した。このセミセルフレジは、RFIDタグのついた商品をリーダーボックスに入れ支払いを申し込むと、人検出技術と動体追跡技術が働き、お客さんがどこの支払機に進んでも商品の会計ができるという製品である。当社は「モノ認識」という強みを活かしてこうした画像認識の分野にも注力をしている。

セミセルフレジのイメージ
セミセルフレジのイメージ画像(当社より提供)

社長から起業家を志す方へのメッセージ

私が起業してからここまで来る間には知らないことがたくさんありました。例えば、ストックオプションの制度や、VCを選ぶという選択肢についてや、持ち株会社を設立することの是非など。

資金調達を行うまでは、VCやファンドの存在は正直知りませんでした。自ら調べて、色々な会社を回っていく中で、資金調達の候補先として、ファンドという存在は特別なものではないということがわかりました。また、当初は、ファンドには資金調達のために出資をしてもらうことのみを期待していましたが、振り返ると、出資以外にも様々なサポートをしてもらいました。

こういったことは、会社を経営するにあたってキーワードであると思うので、多少なりとも勉強をしておいた方が良いと思います。

鈴木規之社長の顔写真
鈴木規之社長

ファンド運営者の声

同社に投資をするに至った判断のポイント

ハンディターミナルという分野の中では後発でありながら、スマートフォンを組み合わせることで、従来の製品には無い新しい機能を搭載した「AsReader」を作り上げ、製造現場や病院、小売、物流といった様々な用途で利用され始めた段階であり、調達資金を基にした営業力の強化、並びに大和企業投資としても顧客紹介を中心としたサポート・支援を行う事で更なるグロースを実現できると判断しました。また、三方笑顔(お客様の笑顔/社員の笑顔/世間の笑顔)という同社の経営理念を基に素晴らしい企業文化を醸成してきていた鈴木社長、並びにチームメンバーの経営手腕も高く評価しました。

ファンドの視点からみた同社の成功要因

鈴木社長自らがセールスにコミットして、顧客目線を大切にしたスピーディな提案を行う事で、「AsReader」事業を国内外でグロースさせてきた事、並びに顧客層を広げるため、「AsReader」の技術を基にしたGUN-typeやセルフレジなど新たな製品開発を行い、多様なニーズに対応してきた事と考えております。

また、投資をさせて頂いた2016年には、まだ一般的ではなかったキーワード「DX/デジタルトランスフォーメーション」という文脈の中で、「AsReader」は、データを取得するという部分で、「DX化」を担うサービスです。「DX」の推進に伴い、データとデジタル技術の活用を目指す企業が増え、「AsReader」に対するニーズが増していることも一つの要因だと考えております。

大和企業投資株式会社

  • この事例は取材した当時の内容をもとにとりまとめを行っているものです。
    従いまして、現在の企業様の事業内容等と異なる場合がございますので、予めご了承くださいますようお願いいたします。