AI inside株式会社

世界中の人・物にAIを届け 豊かな未来社会に貢献する

会社概要

事業内容
AI技術を基盤としたプラットフォームの提供
本社所在地
東京都渋谷区渋谷3丁目8-12
URL
設立
2015年8月
資本金
11億73百万円
売上高
1,591百万円(2020年3月末時点)
従業員数
約92人(2020年12月末時点)
ファンド事業
起業支援ファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名
(無限責任組合名)
UTEC4号投資事業有限責任組合
(株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ)

事業概要

AIの活用で従来業務の省力化をサポート

AI inside 株式会社は、2015年8月に渡久地(とぐち)択氏(以下、渡久地社長)により設立された、AIプラットフォームを提供する会社である。「世界中の人・物にAIを届け、豊かな未来社会に貢献する」をミッションに掲げ、AIを利用し、人々の働き方や生き方をより良いものにしていくことをサポートしている。

現在、日本の生産年齢人口は1995年(8,716万人)をピークに減少傾向にあり、2060年には約半分まで減少すると見込まれている(総務省「平成28年国勢調査」より)。こうした人的労働力が減少傾向にある一方で、人が行う業務は増加しており、労働生産性の維持、向上は必至の課題である。

そうした中、同社は、これまで人の手で行われてきた、機械やソフトウェアで代替するのは困難とされてきた複雑な業務をAIでサポートして省力化することで社会課題の解決へ貢献している。

DX Suiteの利用イメージ図

高度な文字認識技術を備えたAIサービスで様々な書類のデジタルデータ化を可能に

現在、同社が多くの企業へ提供しているAIを活用した製品は、高度な文字認識を可能にしたAI-OCR「DX Suite」である(OCR:印刷物などの文字を、光を当てることで読み取り、テキストデータに変換する技術のこと)。同社はこの製品を、金融業や、不動産業を始め、中小企業や街の花屋まで、業種を問わず多くの企業へ導入している。

「DX Suite」とは、「Intelligent OCR」というアプリケーションによって、紙、FAX、書類を撮影した写真まで、あらゆる書類の手書き文字や活字を、高精度でデジタルデータ化するものである。大きな特徴は、今までのOCR技術では読み取りが難しいとされてきた、乱雑に記入された手書きの文字も高精度に読み取ることができることである。

本サービスには各種料金プランが設定されており、「DX Suite Lite」プランは月額費用3万円で提供されている。そして、高価値なAIを低価格で利用できることがユーザから支持され、本製品は2017年11月の提供開始以降、契約件数は12,942件以上(2020年12月地点)にのぼり、多くの事業者への普及が進んでいる。

手書き文字を正確に読み取った様子
Intelligent OCRにて手書き文字を正確に読み取った例

「DX Suite」にはさらに、二つのオプション機能がある。「Elastic Sorter」は、書類の仕分けをAIで自動化する機能であり、免許証や保険証などの各種書類を種類ごとに仕分けることを可能にする。「Multi Form」は、レイアウトが無数にある帳票でもフォーマットの違いに応じた読み取り設定をすることなくAIが自動で読みたい項目を抽出し、読み取りを行う機能であり、「非定型帳票」と呼ばれるレイアウトが一定ではない請求書や領収書、レシートなどをデジタルデータ化することができる。

請求書をデジタルデータ化した様子
「Multi Form」にて、「非定型帳票」の請求書を事前の設定をすることなく、複数のレイアウトを抽出した例

ユーザは、今まで手入力で行っていた書類のデジタルデータ化を、「DX Suite」で自動化させることで業務効率を向上させている。

ファンドに出会うまでの経緯

実証実験の積み重ねにより、文字認識の精度を向上させていった

同社は2015年の設立からわずか4年で東証マザーズへの上場を果たした。一見、順調に見える事業の成長過程だが、その裏には地道な研究開発期間があった。

渡久地社長は、「OCR技術自体は100年前から存在していたが、ずっと実用レベルではなかった。当然に100年できなかったことは、すぐに上手くできるわけがなかった。」と振り返る。同社は「DX Suite」のサービスを開始するまで、約2年間の研究開発期間を費やした。

当初は、AI-OCRとはいっても文字認識の精度は70%程度であった。研究開発期間では、約500社の事業会社を回り、1社1社に実証実験という形でAI-OCRを提供していった。そして、文字認識のサンプルである教師データを取り込み、AI学習とプログラム修正を繰り返し、文字認識精度を徐々に上げていった。そうした試行錯誤の末、2017年に「DX Suite」のサービスが始まると事業会社への導入が進んでいった。

ベンチャーキャピタルに対しての心境の変化

同社は、顧客であり、かつ、互いにさらなる相乗効果を見込める事業会社と資本業務提携を締結し、研究開発の為の増資を行っていた。しかし、同社の資本政策の方針には、当初、VCからの出資を受け入れるという選択肢はなかったという渡久地社長。その理由は「我々のプロダクトは100年間できていなかったものであり、EXIT(資金回収)を前提としたベンチャーキャピタルからの出資はチョイスしにくかった。」からだという。

そうした最中、渡久地社長は、NVDA(エヌビディア)が主催するGTC(GPUテクノロジーカンファレンス)にて、(株)東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)のパートナーの井出啓介氏と知り合った。渡久地社長は井出氏と、AI insideが掲げる社会課題解決への使命や、事業構想、IPOに向けてのさらなる準備について、時間をかけて話し合いを行っていった。そうした中で渡久地社長が抱いていたベンチャーキャピタルから出資を受けることに対しての考えは次第に変わり、互いに投資への合意に至った。

そして、同社は、2018年7月に、独立行政法人中小企業整備基盤機構が出資をし、UTECが運営するUTEC4号投資事業有限責任組合を中心に、他複数のベンチャーファンドから総額5.3億円を調達した。同社は、この資金調達を持って、さらなるサービス拡張を実現していく。

ベンチャーファンドを活用して

ファンドからの支援により、スタートアップ経営の知見が加わった

同社はUTECからの投資を受け入れると同時に、井出氏を社外取締役に迎え入れた。井出氏は、毎週開催される経営会議への参加をはじめ、営業戦略に応じた顧客紹介、株式公開に向けた証券会社との交渉支援などにより同社のサポートを行った。

渡久地社長は「当社の経営メンバーには、スタートアップの経営の知見をもった人材がいなかった。そうした中で、井出氏に支援を行ってもらい、ある程度大きくなったスタートアップの経営のやり方や知見を情報として教えてもらえたのは嬉しかった」と述べる。

そして、同社は、2019年12月に東証マザーズへの上場を果たした。上場後の変化について、渡久地社長は「情報が公開されたことで企業としての信頼度が大きく上がった。我々のポジションが明確になったことで、セールスパートナーの提携企業も、より積極的になり、深い付き合いができるようになった。」と話す。

今後の事業の展望について

開発者でなくてもノーコードで独自のAI生成を可能に

同社は「AI inside X」をビジョンに掲げている。この「X」とは様々な環境やモノのことであり、あらゆる言葉をこの「X」に代入して考えることで、誰もが特別な意識をすることなくAIを使え、その恩恵が受けられる、そうした社会の実現をめざしているという。そのビジョンを実現するべく、AIのプラットフォーマーとして、今後、誰でも簡単にAIを作れるツール「AI inside Learning Center」を活用してユーザが独自にAIを生成できるサービスを提供していく。

「AI inside Learning Center」は、システム開発者でなくてもノーコードでAIを作成できるツールである。現在、同社は、一部ユーザにアルファ版としてこの仕組みを提供している。ユーザは機械学習の専門的な知識がなくても、シンプルな画面上の操作で、ユーザのデータに基づいたAIのトレーニング・評価・改善・配信ができる。

2020年3月期決算説明においては、「AI inside Learning Center」の活用事例が紹介されている。その内容は、ゴミ処理場の作業員であるユーザが、ベルトコンベア上を流れるゴミを撮影し、そのゴミの画像の中から何が危険物かをシステムにインプットをするという作業を複数回繰り返すことでユーザ独自のAIを生成するというもの。生成されたAIはカメラを通して、様々な状況下でゴミの中から自動的に危険物を識別するという作業に成功している。

AIに危険物をインプットしている様子の写真
AIへ様々な危険物についてインプットしているところ
AIが危険物を識別している様子の写真
カメラを通して危険物の識別を提示しているところ

これは、システム開発者としての知識をもっていないユーザが実働約1か月で画像認識にかかる独自のAIを生成したという事例である。同社は、こうした、様々なユーザが「AI inside Learning Center」を活用することで、あらゆるシーンで独自のAIを作成し、利用するというAIのプラットフォーム戦略の実行に向けて同ツールの改善を進めている。

誰もがAI活用の発想をもてるエコシステムの形成

渡久地社長は「まだまだ日本ではAIの活用が浸透していない」という。そして、一人でも多くの潜在的なユーザに「AIを活用して何ができるのか」ということを伝えていく必要があるという。

その活動としては、AI活用のワークショップの開催や、同社サービスを活用した事業者の例をHPで紹介する(既にDX Suiteを活用した事業者の例が約40事例程掲載されている)など、地道ではあるが、さまざまな方法を検討、実践している。同社がAIのプラットフォーマーとして、AIの多様な活用方法を紹介し、その知見を広げていく活動は、サービスのセールスではなく、「啓蒙」活動だという。

渡久地社長は、「いくら、AI inside Learning Centerという誰でも簡単にAIを作れるツールがあったとしても、事業者がいきなり1からAIを作成するのはまだまだハードルが高い。実際に、AI-OCRのDX Suiteは我々がAI inside Learning Centerを使って作ったAIである。私たちがAIを作ったと同様に、クリエイティビティのある人たちが課題解決のためにAIを作る、そのサポートをするというのが、我々の役割。」と話す。

AIを使いたい人に届けるプラットフォームとしての役割

渡久地社長は、人間とAIの関係性について、「AIは部分的な行動について優れているため、人間にはない発想を補完してくれる。例えば、料理のレシピをAIが考えてくれるというサービスがあったとして、オレンジとタバスコを混ぜると美味しいといった、人間の常識にはないような発想を起こせるのがAIである。そして、それを見た人間も他の組合せがあるかもと思って、また違う発想を起こす。そうして、両者は相互に学習し、発展しあえる関係である。」と話す。人間とAIの近い将来について、こうした相互補完の関係により、両者は新しい進化を遂げるとの認識だ。

そして、同社の役割は、世の中にAIを作る人が増えて、よいAIが増えていったときに、それを使いたい人に届けることであると渡久地社長はいう。そのために、AIを作るプラットフォームとして「AI inside Learning Center」を普及させ、今後は、そこで作られたAIを安く広く届けるためのマーケットプレイスを作っていく計画だ。同社は誰にとってもAIが身近なものとなる世界を実現するため、現在、研究開発を重ねている。今後、AIが人々にとって、より身近なものとなり、豊かな社会を実現するために、同社はプラットフォームの提供を通して、AI活用のインフラの普及に努めていく。

渡久地社長から起業家を志す方へのメッセージ

渡久地社長の顔写真
渡久地社長

社会から必要とされる事業であるか、と考えてもらえると良いかと思います。自分はこれができるから、このテクノロジーがあるからという理由から、会社を起こそうと考えている人は多いかもしれませんが、そうではなく、この先の社会から求められる事柄であれば、あとは諦めずにやることで自ずと道が開けるのではと思います。社会の構造の中で、私たちが抱える課題はたくさんあると思います。是非、そういったことをより良くしていって欲しいと思います。

ファンド運営者の声

同社に投資をするに至った判断のポイント

AIがキーワードとして注目を浴びる2017年、スケールするAI活用事業を探索する中でAI inside創業者の渡久地社長と出会いました。グローバル課題の解決という高い視座を持ちながら顧客セグメント化とプロダクト化の構想ができており、Due Diligence期間で同社AI技術の競争優位や将来像に関するシナリオを深くディスカッション。コミュニケーションが素晴らしく、年単位で一緒にビジネスを実行できる信頼に足る創業者であると判断したことから投資実行に至りました。

ファンドの視点からみた同社の成功要因

創業者が志や事業への思いを極めて頻繁にメンバーと共有して一体感を醸成していたこと。「労働力不足の解消」という大きな課題解決を掲げながら、一方で目前の顧客ニーズを丁寧に理解し製品に反映させるカルチャー。技術に溺れず、顧客のビジネスプロセス理解とWhole Product構築にリソースを投入していること。

株式会社東京大学エッジキャピタルパートナーズ

  • この事例は取材した当時の内容をもとにとりまとめを行っているものです。
    従いまして、現在の企業様の事業内容等と異なる場合がございますので、予めご了承くださいますようお願いいたします。