株式会社ハート

お菓子を通して、子供達に夢と遊びを身近に感じて欲しい

会社概要

事業内容
玩具菓子等の製造・販売
本社所在地
東京都墨田区錦糸3-14-2
URL
設立
1983年4月
資本金
93百万円
売上高
56億円(2019年5月期)
従業員数
155人(2020年10月末時点)
ファンド事業
中小企業成長支援ファンド出資事業
同社に投資を行った出資先ファンド名
(無限責任組合名)
みのり2号投資事業有限責任組合
(ベーシック・キャピタル・マネジメント株式会社)

事業概要

笑顔に責任“夢文化創造企業”

1983年4月、株式会社ハート(以下、ハート)は菓子製造メーカーとして愛媛県松山市にて設立された。今では商品企画・開発から調達、製造、販売に至るまで一貫したバリューチェーンを有しており、顧客ニーズの変化に素早く対応できることが同社の強みである。

また、同社では生活に潤いを与える「夢文化創造企業」として商品を通して顧客に「楽しい夢と笑顔と信頼」の創出を経営理念に掲げている。これは社員の中から出たアイディアであり、「取り扱っている商品が子供向けのものであることから、子供たちが手に取って笑顔になれる商品を作りたい、そういった会社にしたい。」という想いが込められている。

ハートのホームページトップ画面の画像
同社ホームページより

現在は本社がある東京と、創業の地である松山の2拠点を中心に、北は仙台、南は宮崎と全国に営業所を持っており、2019年11月にバンダイナムコグループの一員となった。

子供の笑顔のため、こだわりの商品

同社が提供する商品は主に玩具とお菓子を融合させたファンシートイとクリスマスやバレンタイン等の季節性菓子の二種類である。

ファンシートイは「楽しく遊びながら、おやつが食べられる」をコンセプトに、お菓子でありながらもクレーンゲーム型やスロット型から日本庭園を模したものまで、ただ袋を開けてお菓子を食べるだけでは終わらない、遊び心の詰まった商品を数多く取り揃えている。

一方の季節性菓子は季節ごとの催事に合わせた数多くの商品を取り揃えているだけでなく、ライセンス契約を締結していることから多くの人気キャラクターとコラボした商品がラインアップされている。

取り扱っている季節性菓子の写真
取り扱っている季節性菓子の一部

ファンドに出会うまでの経緯と創業家からの承継

創業家による会社の限界、変化を模索する

同社は1983年の設立以来、創業家の井川氏による堅実な経営で成長をしてきた。二代目社長の井川潤一氏(以下、井川氏)はまさに石橋を叩いて渡るような堅実な経営者であり、育ててきた会社にも効率的な仕組みが作られていた。同社は多品種⽣産による順応性の⾼さを強みに⼤⼿⼩売店への販路を拡⼤し、成⻑を続けることで、主⼒である季節性菓⼦において業界でもトップシェアを獲得していった。

だが、同社が成熟企業となる一方で、井川氏は、オーナー経営により組織が硬直化され、事業環境の変化への対応が遅れてしまう事への懸念を抱いていた。また、この先、自社単独で生き残っていくことが難しいのではないか、という課題も感じていた。

井川氏はそれらの状況を解決するため、オーナー経営から脱却し、事業承継をふまえた他社との提携等により、この先も続いていく「ハート」のあるべき姿を思い描いていた。その為の第一歩として井川氏は65歳での引退および創業家以外への事業承継を決めていた。

ファンド担当者との議論の末、事業承継という道筋が決まる

井川氏は、金融機関などへ今後の在り方について相談をしていたが、なかなか前に進むことは出来ていなかった。そんなとき、銀行の紹介により井川氏はベーシック・キャピタル・マネジメント(株)(以下BCM)の金田欧奈氏(以下金田氏)と出会った。

井川氏は金田氏と従来から抱えていた課題や今後の在り方について議論を重ねることにより、会社の方向性について意気投合することが出来た。そして、ファンドと共に事業承継を進めていくことがベストだと判断した。そして2014年、同社は独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資し、BCMが投資助言業務を行う、みのり2号投資事業有限責任組合の投資を受け入れ、それ以降、ファンドと二人三脚で進んでいくこととなった。ファンドを活用したこの事業承継にあたり、井川氏が考えていた後継の経営者が、当時専務を務めていた堀内章氏(以下堀内氏)であった。

創業家からの経営の承継

1984年にハートへ入社した堀内章氏(以下堀内氏)は、松山での実績を評価され、東京で井川氏が経験した支店長、専務をそれぞれ引き継いで歴任していた。ファンドからの投資を受けた時点で、堀内氏は専務として経営の一角を担っていたため、それまでの現場経験と共に、会社全体を広く見ることが出来ていた。堀内氏は井川氏とは一歳違いの同世代であるものの、井川氏が堀内氏へと託した決め手が「慎重な性格の自分とは真逆で、大胆な性格でありつつ、腕もあって肝も据わっている。良い意味でオーナー家に気を使わない人物。」であったからだという。

こうして、2014年より、堀内氏はハートの変革と成長という命題の達成のため、井川氏からバトンを受け取り、同社の社長となった。

組織改革の取組とファンドによる支援

従業員一人一人に当事者意識を持って欲しい

堀内氏が会社を引き継ぎ、経営していく中で意識したことは、上から物事を言うのではなく従業員と同じ目線で進めていくことであったという。堀内氏は、従業員一人一人が誰かに言われたからやるのではなく、自分達で考えて行動が出来る組織にすることを目指した。そのためには、正社員であれ、パート職員であれ、働いている人がそれぞれの役割や何で役に立っているか、ということをそれぞれが自分自身で感じてもらえる会社であることを目標とした。

キーワードは「凡事徹底」

堀内氏の理念として、「凡事徹底」という言葉がある。堀内氏は、会社として実行すると決めたことであっても続けていくことが出来ない会社が多い中で、どんなに小さなことでも、やると決めたことはやり続けることが何よりも重要だと考えた。そして堀内氏はそれを徹底することが会社にとってプラスになるだろうと考え、少しずつ会社を整えていくこととした。

良い社内風土創りのために

堀内氏が社長に就任して最初に取り掛かったのは社内風土の改革であった。効率的で、組織化された同社は、一方で横の繋りが弱い縦割りの組織となってしまっていた。そこで堀内氏が考案したのが、全従業員で行う、「5つの運動」であった。これは(1)環境整備運動(2)あいさつ運動(3)サンクスカード運動(4)共育会運動(5)ブランド価値向上運動の5つで構成された取り組みである。

当初、「5つの運動」はそれぞれ運営チームを設けて活動していたが、なかなか浸透していかなかった。そこで、堀内氏は凡事徹底の理念のもと、運営チームから受けた報告は、必ず掲示板に張り出し続けることとした。加えて、朝礼の場など社員の前で日頃から「協力してくれてありがとう。」と伝え続けた。堀内氏は、社長である自分が継続し続ける姿を見せることが、従業員全員が途中で投げ出さずに継続していくために必要だと考え、最後までその姿勢を崩さなかったという。従業員がその姿を見続けたことで次第に運動が活性化し、例えば「サンクスカード運動」においては今では年間6,000件ものやり取りがなされるまでになった。

従業員の意識変化を目指して

堀内氏による改善は従業員の意識変化をもたらした。「5つの運動」により、これまで仕組み化され、縦割りであった組織が解消されたことで横の繋がりを持つようになった。また、堀内氏には「成功を前提にしない。」という意識もあった。成功するための商品作りではスピード感が無く、過去の成功体験にも引っ張られてしまう。そうではなく、「失敗するかもしれない。でもやってみないとわからない。」という挑戦と変化を恐れない意識を根付かせていった。他にも組織を活発化させるため社員の採用や若手人材の抜擢も積極的に行った。

今では、堀内氏による意識と組織の改革は実を結び、従業員が商品開発にこだわりを持ち、商品一つ一つについてマニアックなところまで議論を行い、一人一人が当事者意識を持って仕事に取り組む組織となった。

従業員が商品開発をしている様子の写真
商品開発の様子

ファンドとの関係とファンドによる支援

堀内氏にとって、ファンドの担当者である金田氏は非常に頼もしい存在であったという。なぜなら、金田氏は井川氏とも十分に議論をしており、堀内氏が井川氏より経営を引き継いだ際にも、引き続いて支援をしてくれたからだという。

ファンドからの支援としては、初めにコスト構造の改革を行った。当時は円安へと移行していた時期であったため、資材の一部を国内製造へと変更し、併せて調達プロセスの見直しも行うことで廃棄資材の削減も達成した。また、ファンドのネットワークを活用し、新規小売店への販売チャネルの開拓に成功したほか、商社を経由した中国市場への進出も果たすなどコスト・販売両面での改革に成功した。

ファンドによる投資を受けてからの約5年間、多くの支援を受けた中で、堀内氏が最もありがたいと感じていたことは、常に隣で応援してくれていたことだという。金田氏は、堀内氏がこれまで自分を信じて経営をしてきた中で、業績の良い時や悪い時であっても変わらず常に前向きに応援してくれたという。そのおかげで堀内氏は最後まで社長として走りきることができた。

ファンドを活用した事業承継を終えて

グループ企業の一員として、更なる成長を目指す

2019年11月、同社はバンダイナムコグループの一員となった。創業家からの経営承継後に取り組んだ組織改革が実を結び、バンダイからは同社の経営体制や商品開発にかけるこだわりやスピード感といった組織風土を評価してもらうことが出来た。現在はバンダイナムコグループの持つスピーディーな情報やインフラを活かすことで、新社長の下、更なる成長へと進み始めている。

社長としての6年間を振り返って

堀内氏の胸の中にあったのは「創業家に育ててもらい、社長にまでしてもらえた。そのハートをより良い会社にし、若手社員が30年先も活き活きと働ける会社にしたい。そのためには、これまで通りでは自分が任された意味がない。」という想いであった。一方で、井川氏は経営からは身を引いた立場にありながらも、これまで会社を育ててきたことから想い入れが強く、経営について堀内氏と議論が絶えなかったという。議論の場では金田氏も交じり、何度も衝突を繰り返しながらも、会社を良くしたいという想いは互いに通じ合っていた。だからこそ三者は前へ進むことができた。

そして、2019年、同社がバンダイナムコグループへと入ることが決まり、堀内氏が次の社長へと経営を承継する立場となったとき、井川氏より「堀内さんに任せて本当に良かった。」と言葉をもらったという。堀内氏が社長を引き継いでから抱いていた「ここまでお世話になってきた井川家に喜んでもらいたい。」との想いがこの言葉で実感でき、これまで社長として取り組んできたことが自分の中で満足できた瞬間であったという。

経営者へのメッセージ

堀内社長の顔写真
堀内 章 氏

私が会社を経営する上で大切だと思うことは3つあります。1つ目が、自分がこれから経営をしていくのだという強い覚悟を持ち経営と向き合うこと。2つ目が経営理念やビジョンを言葉にして整え、それを社員と一緒に実行していくこと。最後は社長だからと上からあれやれこれやれと指示ばかり出すのではなく、社員とパートナーであるような関係性で一緒に会社を作っていくよう取り組んでいくこと。これらを意識して、経営者自身が熱い気持ちで一生懸命に取り組んでいってください。

ファンド運営者の声

同社に投資をするに至った判断のポイント

一目見て、まずビジネスモデルに関心を持ちました。同社は競争の激しい菓子業界にあって、ニッチ戦略を明確に遂行しておられ、催事商品市場でトップシェアを競う位置付けにあり、成長余力も感じました。

加えて当時のオーナー社長の高潔なお人柄も投資判断の決め手になりました。仕事に真摯に向き合う方で、組織を大事にされていました。そういった企業だからこそ、事業承継のお手伝いをしたいと感じ、投資に至りました。

ファンドの視点から見た、同社の成功要因

同社は元々菓子卸業を営んでいたこともあり、商品企画については無難過ぎる傾向がありました。経営管理面でもしっかりしている一方、硬直的過ぎて変化に弱い嫌いがあり、全体的にチャレンジを恐れ、守りに入る風土がありました。当時は「縮小する市場においてどうやって現状維持するか?」と言う言葉が定番の台詞だったように記憶しています。成功の要因は、堀内社長を中心に従業員の皆さん、一人ひとりが、その風土を拭い去って変化に立ち向かったことにあると思います。

商品開発についても当時と比べて挑戦的な、ユニークな商品が増えました。事業領域も既存の場所を守るだけでなく、新しい領域を開拓されました。若い感性を身に付けるため、新卒採用も大幅に増やすなど、組織にも変化を加えました。このような取り組み全てが、組織全体を真の意味でオープンにし、新たなパートナーであるバンダイさんとの提携、その後の成長に繋がっているものと思います。

ベーシック・キャピタル・マネジメント株式会社

  • この事例は取材した当時の内容をもとにとりまとめを行っているものです。
    従いまして、現在の企業様の事業内容等と異なる場合がございますので、予めご了承くださいますようお願いいたします。