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株式会社イード

時代を超えて常にすべての人に最高の「ユーザー体験」を

会社概要

事業内容

Webメディア・コンテンツの運営やマーケティングリサーチコンサルティング等

本社所在地

東京都新宿区西新宿2-6-1 新宿住友ビル28階

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設立年

2000年

株式公開年

2015年

市場名

東証マザーズ

資本金 (2015年6月期)

843百万円

売上高 (2015年6月期)

3,706百万円

従業員数 (2015年6月期)

219名

ファンド事業

がんばれ!中小企業ファンド出資事業

同社に投資を行った出資先ファンド名 (無限責任組合名)

インスパイア・テクノロジー・イノベーション・ファンド投資事業有限責任組合(株式会社インスパイア・インベストメント)

事業概要

時代を超えて常にすべての人に最高の「ユーザー体験」を

2000年4月、テキスト・静止画・動画といった様々なコンテンツがインターネット上で流通される時代を見据えて、(株)インターネット総合研究所(以下、(株)インターネット総研)は、100%子会社としてIRIコマース&テクノロジーを設立。その後、完全子会社化したイード社との合併によって、商号を現在の(株)イードに変更した。

現在、同社グループは、同社及び連結子会社4社で構成されており、「We are the User Experience Company.」を企業理念として、時代を超えて常にすべての人に最高の“楽しさ”“心地よさ”といった「ユーザー体験」を提供することを目標としている。同社の取り扱う事業は、Webメディア・コンテンツを運営する「コンテンツマーケティングプラットフォーム事業(以下、CMP事業)」、顧客に対してリサーチソリューション・ECソリューションを提供する「コンテンツマーケティングソリューション事業(以下、CMS事業)」の二つに大別される。

  • <同社事業の概要図>

各ジャンルに特化した人気サイトを多数運営

専門のメディアサービスを展開している「CMP事業」では、通信、自動車、映画、ゲーム、アニメ、教育、ファッション、金融・保険等、19ジャンル40サイト(2015年6月現在)を運営。例えば、国内で最大の自動車情報サイトである「レスポンス」では、月間5,000万PV(Page Viewの略でWebメディア、コンテンツの各ページがユーザーによって閲覧された回数)を超える等、人気サイトをいくつも抱えている。

この「CMP事業」では、サイトを閲覧する一般ユーザーに対して基本無料で情報を提供する一方、顧客企業に対してはサイト上のインターネット広告の掲載料の他、PCやスマートフォンの通信速度を測定する「RBB TODAY SPEED TEST」、車の燃費を管理する「e燃費」といったデータ・コンテンツの提供等によって収益をあげており、同社の売上の7~8割を稼ぐメインの事業となっている。

一方、「CMS事業」では、海外を含めたマーケティングリサーチ&コンサルティングによって顧客企業における潜在的・顕在的な課題解決のためのソリューションを提供している他、EC事業者向けに、低コストで使いやすく柔軟にカスタマイズできる「marbleASP」というECシステムもインターネットを通じて提供している。

多数の人気サイトを効率的に運営・管理する「iid-CMP」

上記のように、収益の柱となっている「CMP事業」では、様々なジャンルの人気サイトを多数運営しており、1サイトあたりの記事作成数は多い時で50本/日にものぼるが、その基盤となっているのが、「iid-CMP(イード・コンテンツ・マーケティング・プラットフォーム)」という共通プラットフォームシステムである。

具体的に、「iid-CMP」には、「集客機能」「ローコストオペレーションノウハウ」「データベースへの蓄積」「コンテンツマネジメント機能」の4つの機能が備わっており、多数のWebメディア、コンテンツを効率的に運営・管理することができる。

そのため、例えば、映画や海外ドラマの情報サイトである「シネマカフェ」を買収した際には、同社の「iid-CMP」の機能を用いることで、月間1,574千PVから僅か1年で約2倍の月間2,930千PVの実績をあげる等、PVの増加が売上の増加に結び付くビジネスモデルにおいて、「iid-CMP」は他社にはない大きな強みとなっている。

  • <「iid-CMP」の4つの機能>

創業からベンチャーキャピタルに出会うまでの経緯

株式の引き受け手としてのVC

東証マザーズの第一号として上場した(株)インターネット総研は、インターネットを利活用していく時代を見据えて、様々な新規事業の立ち上げを狙っていた。そのような折、前職で出版・マーケティングに従事していた宮川社長は、メディア、コンテンツ、ECサイト等をまとめて扱う事業を構想して企画案を提出。そして、2000年に設立されたのが、同社の前身となる(株)IRIコマース&テクノロジーであった。設立当初こそ、主な収益源はシステムの受託開発で、一時は資金繰りが悪化。事業を存続させるため宮川社長を含む3名の役員が資金を充当する場面もあったが、自社開発やM&AによりWebメディア・コンテンツの売上比率を高めていくことで、今のビジネスモデルを形作っていった。

宮川社長は、「海外では、大手出版社の再編を通して、巨大なメディア・コングロマリットが形成されてきた。私自身も、企画案の段階から、多数のメディアやコンテンツが縦横無尽に集まった企業を作りたいと思っていた。」と振り返る。
一方、資本面においては、2010年から2011年にかけて、親会社であった(株)インターネット総研を含む同社の株主から保有株式を売却したい旨の要請を受ける。そこで、同社は株式の譲受先として、ベンチャーキャピタル(新興企業等に投資を行う会社や組織、以下VC)に声をかけたところ、(独)中小企業基盤整備機構が出資し、(株)インスパイア・インベストメントが運営するインスパイア・テクノロジー・イノベーション・ファンドの他、いくつかのVCに株式を引き受けてもらえることとなった。
宮川社長は、「当時、(株)インターネット総研の株式売却は、風雲急を告げるが如くで突然のことだった。我々としては、スピード感をもってまとまった金額を用意でき、しかも信頼できる株式の譲受先を探す必要があった。そのような中、(株)インスパイアの高槻社長にご相談したところ前向きなお返事を頂けた。元々高槻社長は、私と同じく(株)インターネット総研に在籍しており、かつて私が弊社設立の企画案を提出した際に、事業開発室の担当者として直接携わって頂いていた方。そのため、我々の事業の立ち上げ時からずっと見守って頂き、高槻社長が(株)インスパイアに移られてからも大手企業との提携等のご支援を仰いだりと深い信頼を寄せていた。そのような経緯から、(株)インスパイアさんにも弊社株式を持って頂けたのは、本当にありがたかった。」と語っている。

ベンチャーキャピタル等を活用した事業の拡大と成長

大企業との資本提携の橋渡し

上記のように、株式の譲受先となった各VCからは、社外取締役として経営会議にも加わってもらうことになる。今までベンチャー企業の上場をサポートしてきた投資担当者だけでなく、自ら企業の役員として上場を経験した人物もおり、同社が上場準備を進めて行く上で、力強いサポートを得ることができた。
また、経営会議の場では、今までとは全く異なるネットワークを多数持てたことにより、新たなM&Aの候補先や事業提携先の紹介等、ビジネスを拡大・進展していく上で大きな後押しとなった。
その中でも、(株)インスパイアの高槻社長からは、日本を代表する大企業を紹介され、当時はまだ世の中に用語として確立もしていないオウンド・メディア(企業が自社で保有するメディアのことで、自社のプレスリリースに限らず対象となる業界の情報を幅広く発信して、その業界に興味のあるユーザーを集めること)の可能性を見い出すことができた。現在では、同社の成長の柱の1つとしてオウンド・メディアを位置付けるに至る。さらに、ビジネス上の関係からさらに発展して、同社の安定株主として名を連ねてもらうこととなった。

宮川社長は、「(株)インターネット総研等の株式を複数のVCに引き受けて頂いたことと引き換えに、VCの保有割合が発行済み株式数の8割を超える状況となった。そのため、将来の上場や事業のさらなる成長・発展を目指していく上で、事業会社に安定株主として株式を持って頂く取り組みの必要性を感じていたが、過去の上場企業を調べても同じような事例が見つからず、周りからも難しいと言われていた。しかし、高槻社長から我々が想像もしていなかった老舗大企業を紹介して頂き、その結果、安定株主として加わって頂くこととなった。聞くところによると、100年を超える歴史の中で企業投資はほとんど行わず、しかも、ITベンチャーでは我々への投資が初めてだとのこと。そのため、周りの事業会社からも注目を集めることができ、大手の通信会社や広告代理店等にも弊社の安定株主として株式を保有してもらうことに繋げることができた。高槻社長には、株主構成を整えていく上でとても大きな転機を頂けたと思っている。」と振り返る。

この他にも、高槻社長からは、上場企業で執行役員を務め、ITの業界団体でも理事として辣腕を振るっていた人物を同社の監査役として紹介してもらう。「上場企業に向けての内部統制面だけでなく、IT関係に造詣が深いことから事業面でも率直に意見交換ができる、我々にとって心強い存在。」(宮川社長)と語る等、同社は、様々な側面支援を受けることで、成長を確かなものとしていった。

IPOによる経営効果と今後の展望

ハッピーコールからのビジネス展開

同社は、2015年に東証マザーズに上場を果たした。上場の目的の一つとして、人材の確保があげられる。近年、人手不足がますます深刻なIT業界において、同社もエンジニアの採用には長らく苦労してきた。現在、全従業員の約6割が買収先の人員となっているが、M&Aを重ねてきた背景として、人材確保の意味合いも大きな部分を占めていたという。今後は、上場したことによる企業の安定性も武器にして、新卒や中途による人材採用を狙っていく。
また、上場したことで、「今まで縁の薄かった方々を含めて、再度、接点を持たせて頂いている。今後、“ハッピーコールで始まる再会から、ビジネスへ”といった道筋を作っていければと思う。」(宮川社長)と述べており、今後、事業面での新たな展開も期待される。

メディアを軸にしたサービスカンパニーに向けて

現在(2015年6月)、19ジャンル40サイトを運営している同社。今後の事業展望としては、2020年までに100サイトまで広げていく方針を掲げており、引き続きM&Aも活用しながら国内での基盤を固めていくと共に、将来的には海外展開も視野に入れる。

宮川社長は、「パソコンから携帯、スマートフォンといったネット環境の変化の中で、消費形態も大きく変化してきている。“じっくりと選んで買う”スタイルから、“時間の合間にリンクを飛びながら記事を眺めて、ストーリー性が気に入ったら購入する”といった、より軽く、よりカジュアルなスタイルになってきた。我々は、メディアを軸にして、時代に合わせたサービスの形を提案していくサービスカンパニーを目指していく。」と語り、さらなる成長に向けて歩みを進めていく。

代表者プロフィール

代表取締役社長
宮川 洋

1965年11月29日生まれ。1988年4月、株式会社アスキーに入社。その後、株式会社インターネット総合研究所を経て、2000年4月、株式会社IRIコマース&テクノロジー(現同社)の取締役に就任。2002年10月、同代表取締役社長に就任(現任)。

将来の夢と起業家を志す方へのアドバイス

IT業界は特に言えるかもしれませんが、様々なトレンドの波が上がっては下がりを繰り返している中で、自分たちもトレンドに乗らなければ取り残される、との思いを持ってしまいがちになります。しかし、大切なのは、常に謙虚に、不変のものを軸にして自らのビジネスを構築していくことにあると考えます。
我々に置き換えると、雑誌や本を読まなくなったと言われて久しい中で、しかし、情報は取ります。情報を取得する媒体が携帯やスマートフォン等に移ってきたとしても、その一番の“キモ”であるコンテンツは不変であると考えております。トレンドに振り回されて右往左往してしまうと、結果的に事業が“ブレ”てしまうことに繋がりかねません。何が本質かを見極めることこそ大事だと感じております。
事業というのは間違いなく地味なものです。満塁ホームランを狙うためには塁をしっかりと埋める必要があります。逆に塁も埋まっていないのに満塁ホームランなんてあり得ません。ビジネスでも、しっかりと塁を埋めていくことを心掛けてみるのは如何でしょうか。

ベンチャーキャピタルの声

同社に投資をするに至った判断のポイント

  1. 宮川社長、工木取締役をコアとしたチームが存在していたこと。
  2. インターネットの仕組みを熟知したうえで、オールドメディアを再生させたり、Webメディア同士を連携・連動させるための独自のビジネス生態系を構築していたこと。
  3. われわれが参加して資金面だけでなく事業面でも協力できる余地があったこと。

以上3点が投資時点で確認できたため、資金提供に加えて役員派遣と現場担当者のアサインを行い、確実に価値創出ができるようにしました。

ベンチャーキャピタルの視点からみた同社の成功要因

当初シナリオのM&Aによる成長のみならず、事業シナジーおよび安定株主対策として実施した事業会社との事業資本提携による新規事業の伸長もあり、IPOにつながったと考えております。

株式会社インスパイア・インベストメント

2015年度取材事例
掲載日:2015年10月30日

  • この事例は取材した当時の内容をもとにとりまとめを行っているものです。
    従いまして、現在の企業様の事業内容等と異なる場合がございますので、予めご了承くだいますようお願いいたします。
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