「全国にSDGs相談窓口を開設 SDGs推進本部・SDGsパートナー」 望月 敬(2012年4月入構)/森田 花凜(2020年4月入構)

最近、様々な場所で目にすることが増えた「SDGs(持続可能な開発目標)」。17のゴールと169のターゲットで構成された、持続可能でよりよい社会を目指すための国際目標です。2030年までにゴールを達成するべく、日本でも大企業を中心に取り組みが広がっています。

中小機構では、2021年3月に中小企業SDGs推進本部が立ち上がりました。本部の事務局を務める望月さんと、関東本部でSDGsパートナーとして活動する森田さんに、中小機構におけるSDGsの取り組みについて聞きました。

復興支援の現場での忘れられない経験

—最初に、お2人が中小機構に入った理由を教えてください。

望月:
私は静岡県出身で、大学進学と同時に上京し、経済学を学びました。中小機構は、中小企業の課題に合わせた幅広い施策を実行しているため、様々な経験ができると思い2012年に入構しました。
森田:
私は、大学で福祉学を勉強しました。もともと働き方の問題に関心があり、企業支援が労働者支援にも繋がると考え、2020年に入構しました。

—入構後、どんな事業に関わってきましたか。

望月:
最初の2年は本部の高度化事業推進課に所属し、工業団地や商店街の組合などに制度紹介や融資をおこなっていました。全国の中小企業団体をまわり、1社ごとではなく、複数の企業をまとめて支援していくという視点が新鮮でした。
その後、東日本大震災をきっかけに創設された、震災復興支援部(現:災害復興支援部)に異動。震災・津波被害に遭った中小企業のために仮設事業所の整備をしたり、販路開拓のためのイベントを開催したりしました。
2016年には九州本部へ移り、同年4月に起こった熊本地震からの復興支援、アドバイザー派遣事業などを担当します。
ある時、西日本豪雨復興相談会に参加した際、大きな被害に遭った事業者の方が沈んだ雰囲気で相談に来られました。最初は、「どの支援策が活用できるのか分かりにくい」と不満そうな様子だったんです。
しかし、その方に支援策を説明したり、事業計画の見直しを提案したりしたところ、最後は笑顔で「事業計画を見直すいい機会ですね」と帰っていかれました。そのことは今でも強く印象に残っています。
2021年に本部の企画部に異動し、東京に戻ってきました。ここでは中小機構の中期計画・年度計画の作成に加え、広報課と共同でSDGs事務局の運営をしています。
森田:
私は入構後、関東本部の企画調整課に配属されました。経理や庶務など、関東本部全体に関わる事務を担当しています。
2年目の今は、関東本部が開催しているセミナーなどを取材し、記事化してWEBサイトに載せる仕事もしています。関東本部の職員の方々が、何かと企画調整課を頼ってくださることにやりがいを感じています。

2030年のゴールに向け中小企業にSDGsを推進

ー中小機構のSDGsへの取り組みについて教えてください。

望月:
内閣官房のSDGs推進本部で公表しているSDGs実施指針
(2019年12月改訂版)の中で、「SDGsは大手企業には浸透してきたが、企業数全体の99.7%を占める中小企業にはまだ浸透しておらず、後押しが必要」といった内容が書かれています。
それを受け、中小機構では2021年3月にSDGs推進本部を立ち上げました。さらに「中小企業SDGs応援宣言」を公表し、中小企業への啓発活動、相談対応など様々な取組みを実施しています。
森田:
それと同時に、中小企業SDGsパートナー制度も発足しました。全国の職員が自発的にパートナーに立候補し、各地域本部でSDGs活動に取り組んでいます。私も、関東本部のパートナーとして仲間と一緒に活動しています。

ーSDGs推進本部は、中小企業に対してどのような活動をしていますか。

望月:
「SDGsの意識の醸成」と「新しい市場に参入するための支援」、「すでにSDGsに取り組んでいる企業の対外PR促進」の3つを軸に進めています。
中小企業にもSDGsという言葉は浸透してきたものの、具体的に何をすればいいか、わからない方が大半だと感じます。
しかし大手企業はすでに、2030年までのCO2削減ゴールなどに向けて取り組みを進めています。中小企業も対応できていないと、大手との取引ができなくなる可能性もあります。SDGsへの取組みが前提となる未来に向けて、備えていかなければなりません。
推進本部では、まず「SDGsの実現を目指そう」という意識を持ってもらうことから始めています。中でも、「気候変動対策」は特に関心が高まっている領域の1つです。政府は温室効果ガスを削減する「2050年カーボンニュートラル宣言」をおこなっており、中小企業も対応していく必要があります。
加えて、カーボンニュートラルの実現はCO2排出ゼロ、再生可能エネルギーなどの技術領域で大きな市場になることが期待できるため、中小企業の参入を後押しする相談窓口も開設しました。
SDGs17のゴール(中小機構におけるSDGsへの取り組みより
SDGsは新しい概念ではありますが、既に中小企業がおこなっている取組みが、実はSDGsに繋がっていることもあります。ある木工品製作の企業は、森林整備で発生する間伐材を活用し、新たな商品を作っていました。
このように、資源を大切にして地域課題の解決に取り組んでいる企業は、SDGsを意識していなくても、持続可能なビジネスモデルになっていることが多いんです。せっかくのいい活動を、もっと外にPRしていきましょう、という啓発活動もおこなっています。

立候補で集まった全国のSDGsパートナー

ー全国の地域本部にいる、SDGsパートナーについて教えてください。

望月:
「SDGsは押しつけるものではない」という観点から、パートナーは立候補制にしています。活動は、中小機構職員と中小企業の事業者、双方に向けた啓発活動がメインです。支援機関へのセミナーに登壇することもあります。現在、全国に130名ほどのSDGsパートナーがいます。
森田:
私は大学が福祉学部だったので、16のゴールに設定されているジェンダー平等などに、以前から関心がありました。
働いている部署が関東本部全体を見渡せるポジションなので、SDGsパートナーの活動にも活かせるんじゃないかと思い、立候補しました。
関東本部には、私を含めて16人のパートナーがいます。最初にみんなでやりたいことを出し合って、複数のプロジェクトを立ち上げました。
関東本部内の消灯をうながすポスター作りや、ペットボトルのキャップを集めて海外の支援団体に送るエコキャップ活動など、それぞれの提案者がリーダーとなりチームで進めています。
森田:
プロジェクトの中には、部長クラスの職員と若手が一緒に取り組んでいるものもあります。SDGs推進本部に「役職に関係なく取り組もう」という方針があるため、フラットな関係性で、若手でも主体的に取り組めるのがいいですね。
それに、SDGsゴールに絡めれば、自分の関心あること・やりたいことが提案できます。問題意識があっても一人では解決できなかったことが、他の仲間がいることで実現しやすくなるんです。
望月:
今年の11月に、関東、北陸、九州、近畿の地域本部が合同で、SDGs支援活動の進捗状況発表をおこないました。北陸では、SDGsへの関心が高い自治体と連携して相談窓口を設置するなど、地域ごとに特色ある活動をしています。
「SDGsについてどこに相談していいかわからない」という地方の事業者のために、商工会議所と一緒に相談窓口を立ち上げたり、セミナーを開催したりと、もともと他の事業でつながりがあった組織との連携も進めています。
また、中小機構の職員が持っている情報や個々の支援活動を全体に共有するため、内部のウェブサイトに公開しています。職員向け勉強会の開催や、SDGsに絡めた支援策の検討など、職員の啓発活動にも取り組んでいます。
森田:
全国のSDGs相談窓口には、「そもそもSDGSとは何か」という質問から「企業の経営計画の中にどう落とし込めばいいか」という専門的な内容まで、様々な相談が寄せられます。
そのため、関東本部のWEBサイトに、各ケースに合わせた支援策を一覧で見られるページを作成しました。これもSDGsパートナー活動の一環です。

幅広いネットワークが中小機構の強み

—お2人の今後の目標を教えてください。

望月:
SDGsやDXといった時代のニーズにあった取り組みを、中小機構が持つノウハウと組み合わせて、新たな支援策などを考案していきたいです。また昨年、中小企業診断士の資格を取ったので、個人の支援スキルも高めて組織に貢献したいと思っています。
森田:
今の仕事は管理部門なので、次は現場の仕事を経験したいです。他の地域本部に異動しても、SDGsパートナーは続けていこうと思っています。
望月:
部署が変わるとSDGsパートナーの活動内容も変わるので、各地域本部の取り組みやノウハウを共有するシステムも、整えているところです。

—最後に、中小機構で働きたいと思っている人にメッセージをお願いします。

望月:
中小機構には、幅広い支援をおこなう中で築き上げてきた、企業や支援機関、専門家とのネットワークがあります。SDGsの活動もそうですし、新しい取り組みを始める時に、蓄積された知見やネットワークが活かせることが大きな強みだと思います。
また、数年単位で異動があり、担当業務がガラリと変わることがあるため、職員同士で助け合う雰囲気があります。まわりに相談しながら経験を積んでいけるので、スキルが伸びやすい環境だと感じています。
「中小企業支援がしたい」という強い気持ちがあって、かつ粘り強く取り組める人と、一緒に働きたいですね。
森田:
私も企画調整課に配属された当初は、分からないことだらけで部署内をよくウロウロしていました。するとみなさんから「どうしたの」と声をかけてもらえ、望月さんが言ったような助け合う雰囲気を感じました。
これから中小機構に入る人も、与えられた場所で前向きに学んでいこうという気持ちがあれば、どの部署でも活躍できると思います。公的な立場から、社会をよりよくしたいと思う人にぜひ来てほしいです。