関東本部
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研修体験取材レポート 中小企業大学校研修 虎ノ門キャンパス

経営環境が不確実性を増す今、管理者がチームや部下を育成しながら、ちゃんと結果を出すためには何が必要なのでしょうか。新任管理者を主な対象に、リーダーシップの知識やスキルの基本を理解し、効果的に発揮する方法を学ぶ2日間の講座が行われました。
編集制作会社(株)REGION(リージョン)の編集顧問を務めるライターの井上理江さんにレポートしていただきます。
研修名「リーダーシップ強化講座 【基本編】リーダーが取るべき行動を学ぶ」 (2025年7月8日・7月9日開催)
day1 (7月8日)リーダーシップに不可欠な影響力を高める手段を学ぶ
「名札を創る」「経験学習サイクル」「ビジョンの創りかた」

今回の受講者は応募人数の20名を大幅に上回り、男性27名、女性4名の計31名です。年代は20代から60代までと幅広く参加されました。受講者は8班に分かれ、隣同士で自己紹介からスタート。その後2人1組のペアワークが中心で、学びに関する感想や意見を短時間でシェアしたら互いに拍手して次の学びへ、とテンポよく講義が進んでいきます。
志倉先生は「リーダーシップとは影響力であり、研修の目的は影響力を上げること」と述べ、手段の一つとして「名札」を挙げました。ブランド、タグなど呼び方は様々です。次は、経験→内省→教訓→適用の4ステップを回す「経験学習サイクル」です。「必要なのは、次にうまくいく教訓を得るための内省。得た教訓は書き留めることが重要で、メモの数が自信につながり、チャレンジが怖くなくなる」という志倉先生の言葉に深く納得しました。

午後は「この研修で一番重要」と先生が強調したビジョン、自分のありたい姿の創り方の講義になりました。ビジョン創りが苦手という受講者が多かったのに対し、「自分の過去や経験をもとに考えるから苦しくなる。外からの情報で構築するのがポイント」と志倉先生から思わぬ言葉が。
「バケツに水を入れる」と表現し、日常的に読書やセミナー受講などで得た真似したいヒントをどんどん書き留めることで視野が広がり、自分がワクワクできるビジョンも自然と創れるようになるとのこと。確かにハードルがかなり下がったように感じ、1日目が終了しました。
day2 (7月9日)自分の目指す姿を明確にし、部下の持つ知識や力を引き出す
「ビジョンの深掘り」「フィードバック」「ティーチングとコーチング」

席替えが行われ、自分の3年後のビジョンを具体的に書くことから2日目が始まりました。その後に行われたのが「未来インタビュー」。3年後の自分になり切り、ビジョンの達成状況をペアで語り合うユニークなワークです。最初は照れつつ、だんだん楽しげになっていく受講者の姿と、志倉先生の「ビジョンを実現した『ふり』から入るのは一つの方法。部下にも『3年後の自分ならどうする』と問いかけると行動が変わる」というお話が印象的でした。

午後は、フィードバック、ティーチングとコーチングを学びました。
コーチングの演習では、受講者は3名1組となり、自分の悩みを話す相談者と聴くコーチ、その様子をメモする観察者の役割を交代で体験。「ついアドバイスしてしまう」といった声があちこちから聞こえ、話をただ聴くことの難しさを実感したようでした。
志倉先生は「名札や経験学習サイクル、コーチングなどはすべてビジョンを実現する手段で、これらをやることが目的ではない。ビジョンが明確なリーダーが手段として実施すれば、結果を出すことができる」と研修全体を総括。最後に受講者同士がお互いに拍手を送り合い、2日間の講座は終了となりました。
2日間の受講を終えて
冒頭から隣の人と話し合うペアワークが中心で、受講者同士の打ち解けるペースが早いと感じました。休憩中に名刺交換や、先生に質問する姿もよく見られ、交流や学びに前向きな姿勢が印象的でした。
心に残ったのは、経験学習サイクルの話で出た「気合では続かない。やる気が出なくても続けられるよう、仕組み化することが大事」という先生の言葉と、研修中に繰り返し強調された「紙に書くことの重要性」です。
1日目の午前に、先生がホワイトボードに書いたのが「考えるのも悩むのも紙の上で」という一文でした。「頭の中だけで悩んでいても解決しないが、紙の上に落とすとそこから脳の違う部分が働き始める」のだそうです。チャレンジやビジョン創りといった言葉にはやや苦手意識がありましたが、内省で得た気づきや外から得た知識をとにかくメモしていくことで、思っていたより楽にできそうだと思え、個人的にも役立つ研修でした。
講師紹介(敬称略)
志倉 康之(しくら やすゆき)

株式会社 巧コンサルティング代表取締役
中小企業診断士 中小機構関東本部アドバイザー
カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社における新規事業の構築、ネット通販事業責任者等を経験後、2015年に株式会社巧コンサルティングを設立。年間200日を超える企業向け研修および経営戦略策定、人事戦略策定などの分野における経営コンサルティング事業を展開。
講師コメント
中小機構での研修は7年前から実施しています。私の研修先は95%以上が上場企業ですが、今回の内容と差はありません。重視しているのは研修中のアウトプットを多くすること。ペアワークが中心なのはそのためで、学びをすぐ口に出すことが記憶に一番残るからです。今回の受講者はメモの量も多く、前向きな姿勢を感じました。一人ではなかなかモチベーションが続かないので、こういう場で出会った仲間と繋がって一緒に学び続けていくことも大事だと思います。
受講者インタビュー
業種や年代も様々な今回の受講者3名の方に、研修について感想を伺いました。
■旭興業株式会社(構内作業請負業)
グループリーダー 高橋さん
部下が27人いますが、部下の仕事に対する取り組みを評価し、感謝の意を伝える事に欠けていたと感じたのが一番の学びです。気持ちよく仕事をしてもらうには、小さい成功を経験させて褒め、自信をつけさせる事が大事だと思いました。人材不足や育成の悩みは業種を問わず共通だと感じ、今後は職場のメンバー同士で互いに良い所を尊重しあい個々人がやりがいのある職場造りが出来る仕組みづくりをしていきたいと思いました。
■株式会社因幡電機製作所(製造業)
照明事業部 主事 山口さん
会社が研修の導入に積極的で、こうした研修は今まで5回ほど受けています。今回、印象的だったのは名札を創ること。概念は理解していましたが「名札」と呼ぶのが新鮮でした。経験学習サイクルも自分なりに回していたものの、書いてはいなかったので「書くこと」の重要性を強く感じました。今後は経験学習サイクルを書いて回し、自分の中に落とし込んだら部下にも勧めたいと思います。
■株式会社ティー・アイ・シー(情報通信業)
人事経営戦略部 グループリーダー 依田さん
研修は2回目で、志倉先生の研修を受けた上司から勧められて参加しました。グループワークでは異業種の方との考え方の違いを知って驚き、目からウロコが落ちたのがビジョンの創り方です。定期的に自分のビジョンを描く必要があり、苦労していましたが「バケツに水を入れる」ことでより楽にできそうです。自分が得た知識を部下に共有することで、相乗効果を生む仕組みができればいいと思いました。