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研修体験取材レポート【安心な経営のための資金繰り講座】(2021年11月4~5日開催)

2022年 8月 2日

「利益は増えたのにお金が減ったのはなぜ?」「儲かった以上の税金はかからないはずなのに、資金繰りが苦しいのはなぜ?」……「お金」にまつわる様々なモヤモヤを、元金融マンの青木講師がゼロから解説してくれるこの講座。今回は、WEBデザイナーで中小企業の支援者としても活躍されている竹森まりえさんに四国キャンパスの講座を体験取材していただきました。「数字に苦手意識があったのですが、とにかく納得することだらけ。一言も聞き漏らすまいとメモをとり食らいついていきました」と、集中した2日間だったそう。竹森さんのレポートをお届けします。

研修体験取材レポート

「言葉の定義」でモヤモヤがクリアに

最初に青木講師から会場への質問。

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「言葉の定義」を明確に説明してくれる青木講師

「みなさんの中でP/L(損益計算書)の見方はわかるけれど、B/S(貸借対照表)のほうはよくわからないという方はどれくらいいらっしゃいますか?」

受講者21名のうち、7割くらいの方が挙手をされていました。ちなみに私もそのうちの一人。公的支援機関でWEBやIT活用の専門家として事業者様を支援させていただくことがあるのですが、財務の話になった際は同行の中小企業診断士の方のお話を傍で聞いていました。「私も財務のことをもうちょっと勉強したい」と思っていたところ、今回の体験取材のお話をいただいたのです。

ちなみに、「B/Sの分析までできている人」は5人、「C/S(キャッシュフロー計算書)まで理解している人」は2人という結果。「講座の終盤は上級者向けです」とのコメントに一瞬たじろぎましたが、青木講師は会場の理解度を見ながら、初級者でもわかる説明で講座をスタートしてくれました。

まず説明してくれたのは「会計とは何か」という概念。会計には、財務会計(決算書を作成するための経理作業)と管理会計(もっとよい会社になるための会計を管理していく作業)の2種類があり、今回の講座のテーマは後者の「管理会計」です。財務分析と呼ばれる領域で、決算書を読んで分析をしていく方法を学びます。

そして決算書のうち次の書類について、理解を深めていくべき順番に沿って、解説をしてくれました。

  1. P/L(損益計算書)
  2. B/S(貸借対照表)
  3. C/S(キャッシュフロー計算書)

受講者の手元には青木講師が作成した穴埋め式のオリジナルテキストが。青木講師は指標・比率・公式・専門用語がぎっしりと詰まった資料は使わず、口頭でわかりやすく説明しながら、受講者にテキスト内の空欄への記入を促します。ホワイトボードへの板書と青木講師の説明をもとに、私もどんどん記入していきます。

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香川、高知、愛媛から21名の受講者
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受講者が理解し記入しやすく工夫された穴埋め式のテキスト

説明する際、青木講師は「言葉の定義」をしっかりと示してくれます。例えば、「資産とは。カネそのもの、カネに換わるもの(カネに換わるものなのに、まだ換わっていないもの)」「負債とは。カネを支払うべきもの」など。よく聞く言葉ですが、「定義」をきくことで、ハッと気づきモヤモヤが晴れることが多々ありました。

「私は、“なぜP/Lか”“なぜB/Sか”など、本質をお伝えしようと思っています。日常生活においても『言葉の定義』をとても大切にしています」と青木講師。また、理論・ロジックが正しいかどうか仮説を立ててから行動に移し、検証することも心掛けているとのことで、ご自身の大幅なダイエットにもその心掛けが役立ったとか。ダイエットの具体的なロジックを聞きたそうな受講者はたくさんいましたが「それはまた別の講座で(笑)」と、会場に柔らかい空気も作ってくれる青木講師です。

複数の事例を見て「違和感」に気づく練習

1日目は(1)P/L(損益計算書)の見方を学んだあと、青木講師からこんな話が。

「みなさんの会社でも複数のモノやサービスを売っていると思いますが、どの商品が一番儲かっていて、どれが利益に寄与していないのかはP/Lではわかりません。私が銀行マン時代に上司に言われたことは『分けることはわかること。わかることは分けること』ということ。数字を分けていなければ何が儲かったか、力を入れるべきかわかりません。ですので、みなさんも分けることから始めましょう」

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青木講師の話に真剣に聞き入る受講者たち

商品で分ける、事業部で分ける、取引先で分ける。その結果、利益につながるものがわかり会社の経営戦略も変わってきた事例をいくつか紹介してもらいました。私(竹森)自身は個人事業主なのですが、「分ける」という作業はあまりして来なかったなあと思い至りました。基本的なことではありますが、大事なことに気づかされたと思います。

続いては、(2)B/S(貸借対照表)について。「何がいくらあるという『残高(英語でバランス)』をあらわした書類がバランスシートです」と言葉の由来から解説し、「会社のトータルな安全性や健全性を評価するもの」との説明が。今回はB/Sの見方を知りたいという受講者が多く、メモをとる手にさらに熱が入ります。

また、ご自身の会社の決算書を持ってきた受講者は、青木講師の説明を聞きながら「自分の会社はどういう状態なのか」をチェックしていました。

その後、講師の解説を聞きながら簡易な事例や実際の企業の3期分までのB/Sを見ていったのですが、後半になると見方に慣れたせいか、「あれ、ここ何だかおかしい」「P/Lも一緒に見てみたけど、なぜこの期にこの数字が下がっているの?」とふとした違和感に気づくようになりました。

「ここで売上が下がったのは実はリーマンショックの影響だったのです」「でも、経営者はそこから立て直そうとしています。それが役員給与カットに表れています」と、違和感の背景にあるリアルなエピソードを青木講師から聞いて、「なるほど!数字はこうやって見るのか」と、どんどん腑に落ちていきました。

数字を「数字」で見るとは?

2日目は(3)CF(キャッシュフロー)について。言葉の定義としては「お金の流れ(なぜ増えたか、減ったか)を突き止めていくもの)」との説明。「正常」な運転資金の考え方は? 短期借入金・長期借入金の正しい理解とは? などここからグッと難しくなった感があり、講師の話を聞き漏らすまいと、必死でメモ。テキスト内の演習問題にも食らいついていく、といった感じでした。周囲も見渡すと、他の受講者の方もものすごい集中力でメモをとっていらっしゃいます。そして、とにかく最後の演習問題まで何とかついていくことができました。

「キャッシュフローが分かると、何年何ヶ月後にこの会社の経営状態はこうなるというのが分かります」と青木講師。設備更新など後々お金が必要になることが分かっているのであれば、どれだけ準備したかを銀行は見ているとのこと。また、銀行が企業をどう格付しているのか、わかりやすい説明もありました。

今回はP/Lの数字から始まり、B/Sの数字へ、そしてCFの数字へと「数字をつなげながら」学んでいきました。「その数字の背景には、こういう数字があった」ということを体系的に学ぶことができたと感じます。数字に苦手意識のあった私にとって目からウロコのこの講座、ぜひいろんな方にお勧めしたいと思いました。

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集中して演習問題に取り組む受講生たち
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1日目から2日目への数字つながりが理解しやすい、青木講師のホワイトボードへの板書

青木講師より

「営業利益を出す方法は3つしかありません。売上を上げるか、粗利率を改善するか、一般管理費を下げるか。どの道を選ぶかは会社の“現在地”次第。売上高だけ見て必死になっている企業は、そのまま進めば一層窮地に陥ることすらありえます。そういった場合には『売上高を現状で維持しながら、こういう努力はできますか?』と方向を変えるアドバイスをして、いったん心を落ち着けてもらいます。それで売上高が上がらなくても資金繰りが改善する方法があると気づいてもらえたら、経営状態に合わせて3つの道から採るべき道を選択します。よくある公式やナントカ比率でこねくり回さずに、数字を『数字』のままで見ていきながら、みなさんの経営に役立てていただきたいと思います」

研修参加者の声

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有限会社平井石産 平井美恵子さん(鉱業、採石業/香川県)

「経営のための決算書入門」に続き、青木先生の講座は2回目。経理面で社長を支える立場にあるので、これまでに自社の決算書を3期分見て経営改善を図ってきましたが、その考え方・方向性で合っているかどうかを確認するために今回は参加しました。結果、「合っていました!」。
いま後継者(四代目)育成に力を入れつつあるのですが、決算書も重要視するマインドをもってもらいたいと思います。そのため、今回学んだ内容を伝えるとともに、こうした講座にも一緒に参加し、共に成長していきたいと考えています。

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明星運輸株式会社 取締役 大野一樹さん(運輸業、郵便業/愛媛県)

決算書のことを勉強し始めて3年。だんだんわかってきたタイミングでもあり、今回の講座はすごくわかりやすくて腑に落ちました。講座の中のリアルな事例には考えさせられました。外部環境のマイナス要因により経営とはこうもなってしまうものなのか、ぼやっとしていたらいけないな……と。
まずは教えてもらったように部門ごとや会社ごとに「分け」、さらに5期分の財務推移表をA3で作ってみて、今後のことを考えたいと思います。

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株式会社森の三角ぼうし 支配人 善家典子さん(卸売業、小売業/愛媛県)

B/Sは決算期にちらっと見る程度でしたが、数字について深いところまで学びたいと今回参加しました。途中、先生が融資担当者に見えて怖かったですが(笑)、受講者のレベルに寄り添ってくれてとても良かったですし、本当に勉強になりました。マネージャーとしてもっと早い段階で受けておきたかったと思いました。
当社では4半期ごとに部門担当者が集まりマネジメント会議を開いているのですが、今回学んだことをベースにすれば、これからの取組の根拠をしっかりと伝えていけそうです。

体験を終えて

「一見、売上高が急に落ちているこの企業との取引。私ならします。なぜなら、立て直そうとしている根拠がこの項目の数字に表れているからです」とわかりやすく説明してくれた青木講師。今回の講座では「なるほど、そういうことなのか!」という気づきが本当にたくさんありました。
数字は単なる「数字」ではない、「経営者の意思そのもの」なのだと感じました。1万社もの企業の決算書を見てきた講師が説明する事例はどれもリアリティにあふれ、受講者のみなさんも聞き逃すまいとしっかりメモを取っていました。配布されたテキストには、自社の財務整理にすぐに使えるシートもあり「帰社して早速まとめてみる」という声も。モヤモヤしていたものがシンプルで明確な「言葉の定義」によりクリアになり、さらに企業の価値を財務的にどう高めていくかを学んだ貴重な機会でした。

(文=竹森まりえ/WEBデザイナー)

講座共催機関からのコメント

愛媛県中小企業団体中央会(振興部長 井上 和也さん)
実際の決算書を見ながらの講座だったので事業者にとってとてもわかりやすい内容でした。多くの決算書を見ることで「違和感」に気づけるようになると思います。いいものを売っているというだけでは立ち行かなくなることもある中、適正に売って経営をしていくことが重要だと考えます。

公益財団法人 えひめ産業振興財団(産業振興部 事業支援課長 篠宮 美紀さん)
形式ばった堅苦しい話ではなく、金融関係のコンサルタントの先生がわかりやすく解説してくれる講座でした。「数字が苦手」「決算書をどう見たらいいのかわからない」といった経営者や事業担当者に聞いてもらい、数字から課題を紐解いたうえで解決ができることを願っています。

本講座の企画担当より

資金繰りは企業の存続に重要なものですが、コロナ禍を受け、その重要性を実感された企業様も多かったのではないでしょうか。この講座で目指したのは、「財務」への抵抗感がなくなり、「学ぶ」だけではなく腹落ちさせて「使える」知識として持ち帰っていただくこと。受講生には自社の決算書を持参していただき、実際の数字を通して知識を「使えるもの」にしていただけるようにしています。資金調達に苦労していてなかなか楽にならない、黒字なのに手元資金がない、という方に特に受講していただきたい講座です。
(中村)