水事業で東大阪のものづくりをブランドへと育てるベンチャー企業

2020年 3月 23日

JAPAN STAR

わが国有数の中小ものづくり企業が集積する東大阪市。自ら技術開発した製品が市場で評価され、自社のブランド力が育つことで、従業員が誇りをもって働ける会社にしたいとの思いから起業し「マイクロナノシャワーヘッド」の販路開拓に成功。グローバル展開を目指す株式会社 JAPAN STAR 。同社代表取締役社長の池田 博毅 氏にこれまでの経緯、事業展開、今後の展望についてお話を伺いました。(2019年10月取材)

インタビュー

お話
株式会社 JAPAN STAR (クリエイション・コア東大阪に入居)

代表取締役社長 池田 博毅 氏

起業、会社のおいたち

なぜ、新たな会社を起こしたのですか

池田社長

以前は、祖父が起ち上げ、二代目である父が社長を務めていた金属加工の会社に勤務していました。社内に完成品事業部を立ち上げて浄水器を開発したところ、塩素の少ない水が求められる時代が来て、浄水器の販売は順調に拡大しました。しかし、中小企業のつらいところで、中核の技術や製品までは自社で完成させられても、最終製品として販売するのは大手企業でした。利益も大企業がほとんど持っていくわけです。

そこで浄水器の事業は父の会社に残し、自分は自社ブランドの商品を開発することで市場から正当に評価されたい、労働分配率も高く、従業員が自信と生きがいを持って働き、日々改善に取り組める会社にしたいと考えて、2008年5月に新会社である株式会社 JAPAN STAR を起ち上げました。

事業の展開と現在

自社ブランドを育てるといっても目算はあったのですか

現在はマイクロナノバブルシャワーヘッドに事業を集中していますが、そこに至るまでには紆余曲折がありました。実は起業してから色々なことにチャレンジしまして、以前は次世代型照明器具「冷陰極蛍光ランプ」事業も展開していました。よく「全く違う分野の事業を運営するのは大変でしょう」と言われるのですが、私は外部のリソースを組み合わせて事業を組み立てるのが割と得意なんです。

マイクロナノバブル発生装置についても、当初はクエの養殖や工場で使用される切削油等の洗浄機に組み込んだりして活用範囲を拡げました。しかし、こういう取引は量産までには至らず、いかんせん安定した事業にはなり得ませんでした。そこで、マイクロナノバブルシャワーヘッドに「選択と集中」する決断をしたのです。現在のところ、これが功を奏しています。

メディアに取り上げられるなど、認知度は向上していますね

従業員の方々

中小機構が主催する新価値創造展やギフトショーなどに出展し、地道な活動をしてきました。結果として、美容関係の商社からOEM商品を供給して欲しいという依頼もあり、美容室ルートでの販売も始まっています。噂が広がり始めて色々なところからお声を掛けていただけるようになりました。地方の電器店、中国系商社などからもお声がかかるようになりました。

最近では、日本テレビの「女神のマルシェ」で取り上げていただき、認知度が上がりました。さらにスキンケア系化粧品でブランド力のある株式会社ドクターシーラボが会員向けにオリジナル商品として販売することになり、日本経済新聞の記事にも取り上げられて、売上高も急激に伸びました。ドクターシーラボ社とは、大企業と下請けという関係とは異なる、とても良い協力関係が構築出来ています。

また、社内に目を向けても、おかげ様で従業員が誇りを持って働けるようになってきました。今後は従業員一人ひとりがさらに1つ上の視点で仕事に取り組んでいけるようになって欲しいと考えています。

そして、これから

米国に進出するそうですね

展示会風景

国内市場は維持拡大しつつ、米国市場への進出も考えています。29歳の時からアメリカに進出したいという夢がありました。

先日、販売店の社長に相談したところ、「それならば、シカゴの展示会に行った方が良い」とアドバイスされ、すぐさま視察に行きました。すると現地でその社長と偶然出会いまして、そんな不思議なご縁が重なって、一晩のうちにアメリカのバイヤーやテレビ局プロデューサーと会うことができ、具体的な話が進展しています。

水で世界を救いたい

私たちの事業の中心は「水」です。海外には安全な水が飲めない方々が10億人もいます。10年近く前に外務省、環境省、経団連の方々と一緒に中国、インド、東南アジアを訪問する機会がありました。その時に、ストロー型の浄水器を持ち込み、非常に注目を浴びました。しかし、市場調査の結果、1個4円で提供しなければ現地の方々の収入では手にすることができないということで、その時は進出を諦めました。

今でも自社単独で解決できるような話ではありませんが、近い将来、例えば飲料関係企業と連携し、『水で世界を救う』というプロジェクトを立ち上げて、10億人の方々を救いたい。そして日本を代表するような企業に成長したいと考えています。

インキュベーションの利用

入居のきっかけ

一番の理由は、中小企業の技術を結集して、JAXAや関西の大学と共同で小型人工衛星「まいど1号」を開発した宇宙開発協同組合SOHLAの拠点が、このクリエイション・コア東大阪にあることでした。

ベンチャー企業である当社にはブランド力がありませんから、ここに入居することが出来たら箔がつくことも期待しました。中小機構や大阪府・東大阪市などの支援施策の情報を入手しやすいという点も魅力でした。

入居しての変化

思っていた以上に信用力は上がったと思います。ここクリエイション・コア東大阪には研究開発、知財、財務などの人材や情報が集まっています。ものづくりにおける研究開発の総合支援施設として、サポート体制が非常に充実していると感じました。

入居して良かったこと、将来の入居者へのメッセージ

東大阪のように様々な機能が集積している地域は他にないでしょう。その中でも、クリエイション・コア東大阪には特にものづくりに適した環境があり、ほとんどのパーツや加工技術が集まります。また、大学のサテライトがあり、最先端技術の情報も入手できます。

ぜひ、事業をデザインできる経営者に来て欲しい。付加価値の高いブルーオーシャン商品を開発し、知財で差別化することで、素晴らしい商品・市場を創造することができると信じています。

支援者にも恵まれています。何か困ったことがあるとIM室のスタッフが協力してくれます。ここに拠点を構えていたからこそ、多くのメディア取材の機会も得られたと思っています。大手販売会社への販路開拓もIM室のスタッフから支援を受けて実現しました。

会社情報

会社名
株式会社 JAPAN STAR 
代表取締役社長
池田 博毅
所在地
東大阪市長田東3丁目2-43 SKパークビル 9F(取材当時はクリエイション・コア東大阪に入居)
事業概要
水を中心とした環境に関する製品の研究・企画・販売

会社略歴

2008年5月 クリエイション・コア東大阪に入居
2008年5月 株式会社 JAPAN STAR 設立
2012年4月 家庭用シャワーヘッド「ナノシャワー華」開発・販売
2014年5月 美容院向けシャワーヘッド「ステルラ」開発・販売
2014年7月 ペット用シャワーヘッド「ドギーナノ」開発・販売
2015年5月 家庭用シャワーヘッド「ナノフェミラス」開発・販売
2019年10月 家庭用シャワーヘッド「ナノフェミラスライト」開発・販売
2019年11月 クリエイション・コア東大阪卒業
2019年12月 東大阪市内のオフィスビルに移転
2020年3月 東京支社設立

製品紹介

マイクロナノバブルシャワーヘッド

シャワー水に含まれる空気のサイズをナノレベルにする独自の「ナノバブル発生機構」を搭載したシャワーヘッド。

「ナノバブル発生機構」は、水に圧力をかけて空気を抜き、抜いた空気を剪断により細かくして水に戻す機構。

ごく小さい泡を含むシャワー水による保湿・保温、洗浄・消臭、節水効果が期待される。水中の残留塩素を除去するカートリッジのオプションがある他、一般家庭用、美容院やペットショップ向けといった業務用の品揃えがある。

家庭用シャワーヘッド「ナノフェミラス」
家庭用シャワーヘッド「ナノフェミラス」
ナノバブル発生機構
シャワーヘッド基部にナノバブル発生機構が搭載されており(この画像では4機)、脱気、剪断により小さくなった気泡を含むシャワー水が放出される

担当マネージャーからのコメント

CIM写真

同社は、2008年の法人設立前に現在の池田社長が個人でご入居され、法人設立~プロトタイプ段階~市場投入~販路拡大まで一貫して、ここクリエイション・コア東大阪を拠点にステージアップされて来ました。これまで紆余曲折もありましたが、社長の強い信念と商品開発力で何とか乗り切られ、今では経営を安定軌道に乗せられました。我々のような公的支援機関のご活用にも積極的で、IM室としても補助金獲得や市場調査、販路開拓(ジェグテック商談会で現在の主要販売先とマッチング)等で少しはお役に立てたかと思います。

「お客様に喜んで頂ける商品をつくる」、その思いから朝から晩まで開発試作し、お客様の声を聞くため全国を飛び回り、さらに新たな市場を求めて海外にもチャレンジする、そのパワフルな経営にはいつも脱帽させられます。

『水で世界を救う』を信念に、今後の更なる活躍が期待できる企業です。

クリエイション・コア東大阪
チーフインキュベーションマネージャー 冨田 和之

インキュベーション施設

クリエイション・コア東大阪