経皮吸収技術で医療・化粧品分野のイノベーションを目指すクリエイション・コア京都御車卒業企業

2019年 12月 23日

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京都薬科大学で培った皮膚と成分経皮吸収に関する知見を基盤に、世界初の「溶解型マイクロニードル」を開発し、工業生産に成功。化粧品分野で上市、グローバルに展開しつつ、医療のイノベーションを目指して経皮ワクチン製剤の開発に取り組むコスメディ製薬株式会社。同社代表取締役の神山 文男 氏と取締役の権 英淑 氏に起業の経緯、事業展開、今後の展望についてお話を伺いました。(2019年12月取材)

インタビュー

お話
コスメディ製薬株式会社
(2006年1月から2011年6月までクリエイション・コア京都御車に入居)

代表取締役 神山 文男 氏
取締役   権  英淑 氏

起業、会社のおいたち

京都薬科大学の薬剤学教室から起業したそうですね

代表画像

私(代表取締役の神山氏)は、元は大手化学メーカーで研究所長を務めていましたが、55歳を機に新しい道に進みたいと思い、退職して京都薬科大学薬剤学教室(以下、京薬)の研究員になりました。京薬でDDS(Drag Delivery System)の基礎研究に取り組みながら、前職の人脈を生かして、国内や英国、中国、韓国の製薬企業の技術コンサルティングや研究受託を行っていました。

取締役の権は、中国の創薬研究機関を退職後、京薬で博士課程を修了し同じく研究員となっていました。

研究室で学生や院生の指導をしていると、中には知財化につながりそうな成果がでてきます。私は工学的な成形技術に強く、権は薬学や皮膚のメカニズムに造詣が深かったため、一緒に技術コンサルティングをするようになりました。大手製薬企業からの受託研究も行うようになり、2001年に前身の有限会社コスメディを設立しました。

マイクロニードルに着目したきっかけはなんですか

当時はライセンス収入が中心でしたが、経皮吸収材料や医療用粘着材料の開発販売をもっと拡大したいと考えていた折から、海外の学会でマイクロニードルが盛んに研究されていることを知ったのです。しかし経皮吸収の方法としては有望であるものの、針はプラスチック製やステンレス製で痛みを伴い、折れれば針が残るなど課題が多く、まだ研究室レベルでした。

そこで「貼って使う医療用製剤」としての開発に着手し、2年半にわたる研究開発の末、皮膚本来の成分であるヒアルロン酸やコラーゲンでできた超微細な針に薬剤成分を結晶化させる「溶解型マイクロニードル」の技術開発に成功しました。

化粧品分野への応用はパイオニアとお聞きしています

当社が実現したブレイクスルーの1つ目は、高分子マイクロニードルの工業的製法を世界で初めて確立したこと、これは私の前職での高分子成型技術の経験が生きました。2つ目は、それを世界で初めて化粧品に応用し商品化したことです。

医療用の実用化には多くの時間と資金を要します。この間も会社を維持していかねばなりません。VCからの資金調達も検討しましたが、IPOが既定路線で条件も当社に極めて不利でした。何とかならないかと悩んでいた時に、権が化粧品分野への応用を提案したのです。

マイクロニードル使用前後
ヒアルロン酸マイクロニードル使用前後の形状変化

皮膚本来の成分をニードルの材料に選んでいたことがポイントでした。ヒアルロン酸のような高分子は、塗るだけでは経皮吸収しづらいので、注射注入などが用いられています。これに対し、粘着シートを貼るだけで、目に見えないほど微細な富士山型のヒアルロン酸ニードルが角質層にとどまり、皮膚の水分で溶解して拡散します。

桂工場

2008年11月に、まず医師主導美容クリニックへ小規模提供を開始して上市。その後大手化粧品メーカーにもOEM提供に至りました。2014年には自社ブランドでの販売も開始しました。

化粧品事業は2016年頃から売り上げが急拡大しており、2017年には2つ目の自社工場(桂工場)を稼働させました。

事業の展開と現在

権さん、化粧品事業が伸び続けている背景はなんですか

役員画像

当社にとってマイクロニードルはコア技術ですが、大切なことはコア技術の周辺をどう作り上げて、どのようにお客様に届けるかということです。それがお客様に愛着を持ってもらい、定着するための鍵になります。

例えばお客様の元に届けるパッケージも、一からすべて開発して作り上げました。包装トレーの凸凹一つひとつにもすべて機能的な意味があります。マイクロニードルは湿度を嫌いますし、ぶつかったらすぐ折れてしまいます。このように繊細なマイクロニードルをどうやってお客様の元に届けるか、どうすればお客様が簡単に使えるかを考えて工夫しました。

3~4年前から国内外でマイクロニードルの類似品が出てきました。しかし、取り寄せて比べてみると、圧倒的に当社の製品の品質が高いことが分かります。例えばマイクロニードル自体は長すぎると痛みがあり、短すぎると効果が弱く実効感も得られません。当社製品は、肌に貼るときにわずかにチクッとする感覚があり、その後皮膚で溶けるので、実効感が高まります。ニードルは繊細に作ることがすごく難しいのですが、安定して作る当社の技術が強みとなっています。

マイクロニードル化粧品はリピーターが8割です。高額商品にも関わらず毎月購入してもらえているのは、商品が評価されているからです。

品質だけでなく販売ルートの確保も大切ですよね

当社は色々なところでマイクロニードルを宣伝したり、他社に提案したりして、粘り強く販売拡大を図ってきました。従来は化粧品会社向けや百貨店や医科向けの販売が多かったのですが、2014年頃からインターネット通販を開始して、2016年、2017年はインターネット通販の売上が急拡大しました。

当初、マイクロニードルは価格が高く、対面の説明が必要な商品だと考えていました。そのため、インターネット通販で成功できるかどうか、繰り返し検証しました。その結果、webページ内で丁寧に説明したり、動画を作ったりすると、お客様はちゃんと見てくださり、販売にもつながることが分かりました。今も繰り返しテストをしながら、効果を高めるようにしています。

また、30代~60代の女性をターゲットとして、通信販売カタログなどへのチラシの同梱も行っています。これも結果を比較して効果の高いルートに力を入れるようにしています。

海外の一部の国でも販売しています。海外販売では、既にその国に販路を持っている代理店に依頼をする方針で、中国では現地の有力な販売代理店を通じて徐々に拡販をしています。

そして、これから

今後の展望は、中期的にはグローバル展開、長期的には医療品の上市

私たちは京都で生まれたベンチャー企業です。日本電産や京セラなど、京都発で技術力をベースに成長した会社に続けるよう、皮膚関連技術を根底において、医療、健康、美容分野のイノベーションで、快適な生活に貢献できる会社になりたいです。

まずは化粧品の増産体制です。2020年8月に吉祥工場の新設を予定しています。2,300坪あり今の5倍ぐらいのスケールになります。社内的には正社員が70名以上になった段階で組織体制の強化が必要になりました。続いて人事評価制度も見直しています。中期的には化粧品事業のグローバル展開が課題です。

長期的には医療用マイクロニードル事業の実現を目指します。2010年に大阪大学と共同で、マイクロニードルを使ったインフルエンザワクチンを開発しました。大手企業と連携して薬事承認に向けて取り組んでいます。

当社は経皮吸収の様々な特許や技術を保有しており、この分野でマイクロニードルに留まらず新製品を開発していきたいと考えています。将来的には上場も視野に入れています。

集合画像

インキュベーションの利用

入居のきっかけ

設立当初は、開発は京薬の研究室で行い、近くのアパートの一室を事務所にしていました。受託研究事業に加え、経皮吸収材料、医療用粘着材料の開発販売が増え、拠点が必要になってきたため、2006年2月に設立間もないクリエイション・コア京都御車に入居しました。

入居しての変化

インキュベーションマネージャーのアドバイスを受けて経営の勉強をしました。当初は言われるままにという感じでしたが、後々それが非常に役立ちました。また、経営実務や成長計画に必要な、税理士、弁理士、弁護士、中小企業診断士などの専門家を紹介していただきました。入居前はつてを頼っていたのですが、起業関連の見識やスキルなどが格段に高い専門家が揃っており、化粧品GMPも専門家の指導がなければスムーズに取得できなかったと思います。

入居して良かったこと、将来の入居者へのメッセージ

事業の拡大に合わせて借りる部屋を増やすことができたので、設備投資を最小限に抑えることができました。また当時紹介してもらったほとんどの専門家は、弊社の顧問税理士や顧問弁理士などとして引き続き相談に乗ってくださっています。

将来の入居者に対しては、何でもインキュベーションマネージャーに相談することが大事です。しかし専門家に相談したからと言って、すべてを丸投げして任せてしまってはダメです。自分の専門以外であってもわからないことをそのままにせず、どうすれば将来のリスクを減らせるか、提案が自社のケースに合うか、納得できるまで繰り返し相談しました。後で問題が起こったとき、契約書が私たちを守ってくれました。どんなことでも、まずは相談してみることが大事です。

会社情報

会社名
コスメディ製薬株式会社 
代表取締役
神山 文男
所在地
(本社)京都市南区東九条河西町32
事業概要
経皮吸収型医薬品・化粧品などの研究開発および製造・販売

会社略歴

2001年5月 有限会社コスメディ設立(京都薬科大学内で活動)
2006年1月 クリエイション・コア京都御車に移転
2006年6月 社名をコスメディ製薬株式会社に変更
2008年7月 「化粧品製造業許可」を取得
2008年11月 世界初のマイクロニードル化粧品を上市
2011年6月 本社および工場を京都市南区東九条河西町に移転
2014年8月 自社ブランド「クオニス」化粧品を上市
2016年8月 大学発ベンチャー表彰2016「新エネルギー・産業技術総合開発機構長官賞」受賞
2017年10月 桂工場稼働開始

技術紹介

溶解型マイクロニードル技術

マイクロニードルは、微細針の先端部に薬剤を含有させ、皮膚に貼付することで薬剤を体内に投与するパッチ形態の新規経皮吸収製剤。

コスメディ製薬の独自技術で開発された溶解型マイクロニードルは、生体親和性の高い高分子ヒアルロン酸を基材として、薬剤や有効成分を混合したものを、用途や目的に合わせて数十から数百μmの長さの微細な針が整列したシート状に成形したもの。

皮膚に貼付することで、ニードルが直接皮膚の内部に入り、内部で溶解・浸透する。このため、皮膚に塗布するよりも、はるかに効率的かつ多量の有効成分を伝達することが可能となる。

化粧品としてヒアルロン酸マイクロニードルのパックが発売されているほか、注射に代わる剤型として体内へ安全で効率的に薬物の浸透を促すドラッグデリバリーシステムとして医療用ワクチンなどへの応用の期待が大きい。

医療用マイクロニードル
医療用マイクロニードル
化粧品マイクロニードル
化粧品用マイクロニードル
化粧品製品
ヒアルロン酸マイクロニードル化粧品

担当マネージャーからのコメント

CIM画像

インキュベーション施設も中小企業・ベンチャー企業をサポートするあらゆる支援機能を有した相談窓口の1つです。賃貸施設として拓かれておりますので、ご入居頂いている企業様は、いつでも、すぐに相談できることが、他の支援機関・相談窓口と異なり、特徴的なことです。また、我々スタッフは、企業様の経営の考え方、課題の背景など、日々のコミュニケーションの中から理解し、支援提案をさせて頂いております。

コスメディ製薬株式会社様にも、士業・専門家のご活用をして頂きましたが、これも日々のコミュニケーションの中から、事業課題や事業ステージ、お人柄に合った支援をさせて頂けたかと思います。ご卒業されてからしばらく経ちますが、当時のことに感謝頂き、また昨今の目覚ましいご成長に嬉しく思います。益々のご発展を期待しております。

クリエイション・コア京都御車
チーフインキュベーションマネージャー 山戸 俊幸

インキュベーション施設

クリエイション・コア京都御車