金属とプラスチックの直接接合で技術革新を目指す名古屋発ベンチャー

2019年 12月 4日

PMS剤
隆起微細構造を形成する独自のPMS剤

なごやサイエンスパーク内にあるクリエイション・コア名古屋に入居する輝創株式会社。学生時代から続くレーザーとの関わりから、逆転の発想で金属とプラスチックの直接接合技術を開発、自動車産業での実用化を狙いつつ、機器開発・販売で事業の持続性に粘り強く取り組む代表取締役の前田 知宏 氏にお話を伺いました。(2019年9月取材)

インタビュー

お話
創輝株式会社 (クリエイション・コア名古屋に入居中)

代表取締役 前田 知宏 氏

起業、会社のおいたち

起業の経緯をお聞かせください

代表画像

私の場合は何の分野で起業するかというよりも先に「会社を起こしたい!50歳までに独立するぞ!」という思いが先行していました。エレクトロニクス系の商社に就職しましたが、そこで担当したレーザー関係の事業は製造元が海外の企業が殆どで、海外ベンチャー企業との付き合いも多く、自然と感化されていきました。

2008年リーマンショックの時に一度退職すると宣言したものの、その時は慰留されて踏みとどまりましたが、2012年に50歳になった時は思い切って退職・起業することにしました。事業分野については何となくレーザー関係で起業しようという思いはありました。それというのも大学時代にレーザーを利用した金属加工に関する研究を行い、大学院の時にはレーザーを利用した樹脂と樹脂の接合に関する技術を日本で初めて開発しました。そして商社でもレーザー関連の事業を担当したので、レーザー関連事業での起業は必然だったのでしょうね。

事業の展開と現在

起業後にご苦労なさったことは何ですか

起業して間もなく、金属・樹脂接合にテーマを絞ったのは良かったのですが、初めは仕事がありませんでした。展示会に出展しても「これは何に使われるのか」といった反応が多く、誰も用途をイメージできないといった状況で、大手企業を訪問しても相手にしてもらえませんでした。その間、レーザー装置を開発して販売したり、真空装置を仕入れて販売したり、アンカーレスの耐震工事も請け負いました。やれることは何でもやったということですが、死の谷を乗り切るのに商社マンとしてのスキルが非常に役立ちました。

資金的には厳しい時期もありましたが、2013年7月には愛知県科学技術交流財団の共同推進事業に採択され、さらに同年9月には戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)に採択されたことで開発が進み、金属と樹脂の接合強度を高めることができました。地道に論文を書いて学会発表をすることで徐々に認知度が上がり、また今では金属と樹脂の接合は非常に需要が多くなっています。中小機構の販路開拓CO事業の活用もきっかけとなり、自動車メーカーやティア1と呼ばれるサプライヤーからの試作の要望が急激に増えています。

非常に強度の強い金属・樹脂接合が可能であると聞きました

異素材接合サンプル
アルミと綾織したCFRTP(PA66)の接合

世の中には色々な金属・樹脂接合技術があります。例えば、接着剤による接合も選択肢の一つですが、強度不足、温度変化による耐久性や経年劣化の問題があります。また化学反応による接合なので、樹脂の種類によって接着剤の配合を変えなければいけないなど、課題があります。

われわれが提供しているのは、物理的に接合する方法です。これまで広く知られているのは、金属表面を凹状に荒らした上で、樹脂に熱をかけて圧着させる方法ですが、この場合は接合方法が限られるため、安定性や強度に問題が生じることがあります。当社の技術は、金属表面に微細で特殊な粉体を配置し、レーザーとプラズマによりポジティブアンカーという突起を形成した上で樹脂を圧着させるもので、優れた耐食性があり、繊維強化プラスチックとの接合では30MPa以上の高強度接合を実現することができます。

そして、これから

新たな事業を立ち上げたそうですね

金属・樹脂接合に関しては、自動車関連を中心に継続的な試作依頼をいただいています。他社では実現できなかった強度を実現できたという評価をいただくことが多いのですが、この業界は本採用までに非常に時間がかかります。継続的に関係構築していく必要があります。

そこで、AI活用した画像検査システムのエンジンを開発し、新たな事業として立ち上げました。個人的な趣味でつながりがあった知人と話をしている時にAIの話で盛り上がり、一緒に事業を進めることになりました。こちらのAIエンジンもやはり自動車関連の市場で評価されています。将来的には、新規株式公開(IPO)できるレベルまで企業を成長させたいと考えています。

全員画像

インキュベーションの利用

入居のきっかけ

2012年に起業したときは、なごやサイエンスパーク内のサイエンス交流プラザ(名古屋産業振興公社運営)に入居しました。2013年に戦略的基盤技術高度化支援事業に「レーザーとプラズマによる異種材料直接接合装置の開発」のテーマで採択され、装置を導入することになり、手狭となったために同じパーク内のクリエイション・コア名古屋に入居することになりました。

入居しての変化

IMから、その時々に的確な支援施策の紹介をたくさんもらえて、事業が進めやすくなりました。展示会への出展サポート、販路開拓コーディネート支援事業、J-GoodTechへの登録、ベンチャーキャピタルとのマッチングなど、中小機構の支援制度とネットワークを最大限に活用することが出来ています。

入居して良かったこと、将来の入居者へのメッセージ

クリエイション・コア名古屋には外から見ただけではわからない支援施策がふんだんにあります。ものづくりにフォーカスした支援体制が充実していて、IMに相談をすれば何らかの回答が得られる点が本当に魅力です。

会社情報

会社名
輝創株式会社 
代表取締役
前田 知宏
所在地
名古屋市守山区下志段味穴ヶ洞2266-22 クリエイション・コア名古屋 106・107号室
事業概要
金属とプラスチックの直接接合

会社略歴

2012年3月 輝創株式会社設立
2013年12月 クリエイション・コア名古屋入居
2015年1月 レーザ加工学会 優秀賞受賞
2016年6月 軽金属溶接協会 技術賞受賞
2019年2月 名古屋市工業グランプリ 市長賞受賞

技術紹介

金属-樹脂の直接接合技術

金属表面に合金化した隆起微細構造を形成し(PMS処理)、そこにプラスチックを溶融・浸透・凝固させることで、ポジティブアンカー効果により金属-プラスチックを直接、強力に接合する。

PMS処理(Prominent Micro Structure):

金属基材に独自のPMS剤を供給し、レーザ照射することにより、任意の局所にマイクロスケールの隆起構造帯を形成する。

ポジティブアンカー効果:

金属表面に凹凸構造を形成し、その内部にプラスチックを浸透させて固定する接合では、一般的には凹凸のある金属面に溶融したプラスチックを高圧で押し込むが、輝創社の方法は、溶融したプラスチックにPMS処理した隆起微細構造を低い圧力で埋め込むイメージ。プラスチックが凝固するとポジティブアンカー効果により強力な接合層を形成する。

(利点)(1)成形したプラスチックとの強力な接合が可能、(2)殆どの熱可塑性プラスチックと接合ができる、(3)汎用プラスチック接合技術が利用できる、(4)接合時の加圧力が小さくて済み設備負荷が小さい等

PMS層表面
PMS層表面画像
PMS層断面
PMS層接合部断面画像

担当マネージャーからのコメント

IM画像

小さな会社のハンディをものともせずに、研究・開発、営業はもとより、特許申請も自分で行なうほどのマルチでパワフルな社長が率いている会社です。

「金属と樹脂の接合技術」は、やっと産業界で注目されてきた感じがします。その中でも輝創さんの技術は競争優位性があり、軽量化を必要とする産業界で多くの実用化を期待しているところです。また新たにAIによる検査技術も確立され、これからが益々楽しみな企業です。 これからも当社の成長・発展に少しでも貢献できるように支援を行なっていきたいと思っています。

クリエイション・コア名古屋
インキュベーションマネージャー 速田 義博

インキュベーション施設

クリエイション・コア名古屋