最先端のシミュレーション技術で日本のモノづくりをリードする理研ベンチャー(2019年9月10日改訂)
2018年 12月 27日

理化学研究所発のベンチャー企業として、製造業の研究開発における技術革新に大きく貢献するインテグレーションテクノロジー株式会社。今般、代表取締役社長の船田浩良氏に、起業の経緯、事業内容、今後の展望についてお話を伺いました。(2018年11月取材・2019年9月更新)
インタビュー
お話:代表取締役社長 船田 浩良 氏
起業、会社のおいたち
起業の経緯について教えてください

大学卒業後、大手自動車メーカーにて金型設計等に携わり、その後、シンクタンクに入社し営業からプロジェクト企画も含めて様々な経験を積みました。コンピューターシミュレーションについては、自動車メーカー時代に将来的に可能性が大きい技術だと感じていましたが、リーマンショックを契機に、シミュレーションの世界は大きな環境の変化を迎えました。各社が、ワールドワイドな市場の中で生き残りをかける中、社内完結型ではなく社外リソースを活用することで、差別化・効率化を図ることになりました。そこで、これからはベンチャーらしさを生かし顧客ニーズを分析し、必要な要素技術をインテグレーションして提供することが必要だと考え、2011年7月に会社を設立しました。同8月には理研ベンチャーとしての認定も受けることができ、社会的な信用の基盤を確立することができました。
事業の展開と現在
御社のシミュレーションの特徴を教えてください
当社のシミュレーション技術は自動車分野や精密機器分野等における「モデルベース開発」と呼ばれるものです。このような技術はEU、特にドイツが先行しています。EUの自動車開発においては、F1等のレース文化にも支えられて数多くのエンジニアリング会社が自動車開発、特にモデルベース分野などの新しい技術分野で活躍しておりハードウェアのみならずシミュレーションソフトウェアにおいても大きな存在感を発揮しています。我々はまず日本で確たるポジションを確立していきたいと考えています。
自動車はセンサー・コンピュータの塊になりました。近年、自動車は自動運転の方向に進んでいて高効率な制御技術が重要になっています。このためセンサー・コンピュータがますます増えると同時に自動車の開発プロセスが劇的に複雑化していきます。我々の「モデルベース開発」は増え続けるその開発プロセスを効率化するために欠くことの出来ない技術です。従来の自動車開発プロセスは機能を実現するためにCADで形状を設計し、CAEでシミュレーションを行い、試作品を製作して現物で評価して設計変更するという流れであり「形状データ」中心の開発手法でした。我々が推進する「モデルベース開発」はさらに上流工程で、個々の部品やユニットについての機能とシステムとしての関連性をモデル化し、物理や数学を駆使して解析することで最適な設計を行うことを狙いとしており、「機能」を重視する手法です。これにより設計の手戻りが削減され開発期間短縮や試作コストの大幅な削減を実現することができ、同時に部品点数を削減することが可能になります。
精密光学機器分野においても、従来は球面レンズを磨くことで性能を向上させてきましたが、近年は非球面レンズを活用してレンズの枚数を減らして、性能向上、軽量化、コスト削減を実現するなど、製品のイノベーションが加速しています。数千万の型をつくって、試作品で評価するという方法ではなく、シミュレーション技術を駆使することで金型を削減することが求められています。
事業は順調ですか

起業して半年間は売上ゼロで苦戦しましたが、その後はおかげさまで順調に売上高を伸ばし、継続的な成長曲線を描けています。自動車関連商社の投資子会社からも出資を受けることができました。従業員も現在は約30名になりました。まだまだ事業を拡大することは可能ですが開発者が不足している状況です。そのような環境もあり、競合企業とも協力関係が確立されています。また、この分野に参入したいという取引先企業からその企業のホープを給料自社負担で送り込んでくれる企業もあります。数ヵ月後に母体企業に戻っても関係性が継続しています。
そして、これから
今後の展望をお聞かせください。
我々は「物理モデル」で世界一になりたいというビジョンを掲げています。現在、理化学研究所と5カ年計画で共同研究を進めています。モデルベース開発を活用して開発された自動車がこれから続々と発売されます。我々が取り組んでいることは、今後の成長が期待される分野です。航空宇宙分野も視野に入っています。我々と一緒に戦ってくれる若いエンジニアを求めています。ストックオプションの制度も準備したいと考えていますので、一緒に世界一を目指しましょう。
インキュベーションの利用
入居のきっかけ
起業する前は、理研ベンチャー(当社への出資会社の一つ)の一員として和光理研インキュベーションプラザで働いていましたので、起業と同時に入居しました。和光理研の隣にあるという環境もここを選択した要因の一つです。
入居しての変化
和光理研や入居企業との連携、あるいは外部の機関との連携が増えました。助成金情報、展示会情報をはじめ、資金調達に関するサポートや専門家派遣による資本政策の検討など、自社だけではできないことをサポートしてくれます。
入居して良かったこと、将来の入居者へのメッセージ
スタートアップにとってこれほど良い環境はありません。和光理研のIM室は非常に相談しやすい。ちょっとしたことでも真剣に相談に乗っていただけると感じています。インキュベーションマネージャー(IM)は身近な存在で非常にフレンドリーな関係を構築することができています。
会社情報
- 代表取締役社長
- 船田 浩良
- 所在地
- 埼玉県和光市南2-3-13和光理研インキュベーションプラザ105号
- 事業概要
- シミュレーション技術に基づく製造業への統合的なサービス提供
会社略歴
2011年7月 | インテグレーションテクノロジー株式会社 設立 |
---|---|
2011年8月 | 理研ベンチャー認定 |
2011年10月 | 和光理研インキュベーションプラザ入居 |
2012年12月 | 科学技術振興機構(JST)のA-STEPに採択 |
2013年8月 | マスワークス社パートナー認定 |
2013年9月 | 資本金1450万円から1750万円に増資 |
2014年7月 | ものづくり補助金に採択 |
2015年11月 | 東京事務所開設 |
2017年5月 | 資本金2450万円に増資 |
2019年3月 | 資本金2950万円に増資 |
製品紹介
オートマティックトランスミッション(自動変速機)のシミュレーションモデル
機械モデル、電気モデル、油圧モデルを統合したシステムモデルの作成が可能で、 試作前にシステムの動作や性能の評価、及び課題の抽出が可能となる。
担当マネージャーからのコメント

旺盛な成長意欲と幅広い人脈を持つ船田社長と、同じ場所で仕事ができることはとてもエキサイティングです。頼れる相談先のひとつとしてIM室を活用いただくために、お話を掘り下げて伺い、船田社長の視点から物事を考えるようにしています。また、日常業務の中での数多くの企業、機関とのやりとりを通じてIMが得た普遍的なアイデアや人的なネットワークを、船田社長にこれからもご紹介、ご提案してまいります。
和光理研インキュベーションプラザ
チーフインキュベーションマネージャー 吉田 憲司