Incubation Report vol.11
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インキュベーション事業 2019年度活動報告21T-Biz(東北大学連携ビジネスインキュベータ)の入居企業は、8割が東北大学を中心とした大学発ベンチャーです。東北大学で発見された物理現象をもとに開発したボールSAWセンサーを究極の「嗅覚」として、センシングデータを価値ある情報に変えるソリューションの開発に取り組むボールウェーブ株式会社の赤尾社長に、起業の経緯や今後の展望についてお話を伺いました。ボールウェーブ株式会社04起業、会社のおいたち ― ボールSAWと起業の経緯について教えてください クォーツのようにある種の結晶体は電圧を加えると振動する性質があり、圧電体と呼ばれています。圧電体上に電極を離して置き、高周波信号を流すと発生する表面波(Surface Acoustic Wave = SAW)は伝搬とともに広がって減衰してしまうのですが、IoT時代のケミカルセンシングの可能性を追求する東北大学発ベンチャー東北大学の山中一司教授は、ボールベアリングを超音波検査している際に、球体では、表面波が赤道上を「広がらずに、同じ幅を保ったまま伝搬する」という現象を大発見しました。この原理を利用した共同研究に企業の研究員として参加したのが私の山中教授との出会いです。 その後、共同研究は終了しましたが、私は幸い東北大学未来科学共同研究センターの特任准教授として研究を続けられることになり、2015年11月に山中教授を含むメンバー4人でボールウェーブ株式会社を設立しました。事業の展開と現在 ― 超微量水分計の事業化に成功したとお聞きしました  まずは半導体製造などでニーズのある超微量水分計を実用化しました。従来の水分計は高精度になるほど大型になるのが課題でしたが、わずか直径3ミリのボールSAWセンサーにより、空気中の水分量をppb(10-9)レベルからppm(10-6)レベルまで、応答速度1秒以内で検出するポータブルサイズの微量水分計の量産化に成功した段階です。― これまでご苦労はありましたか 苦労がないと言ったら嘘になると思いますが、大企業と大学の両方を経験し、原理をビジネスにする仕事に携われる喜びはそれに勝ります。メンバーにも言い出したことは自分で結果を出すまでやる「有言実行」の方針で取り組んでもらっています。こういう研究室なので、難しい水晶の球体加工プロセスの改善や製品のコンパクト化などがどんどん実現します。 しかし、我々だけではここまで乗り切ることはできませんでした。文部科学省、科学技術振興機構(JST)の「大学発新産業創出プログラム(START)」の支援を受けて起業し、その後も関係機関の皆様に多大なサポートを受けてきました。例えばボールSAWの技術を論文発表したところ、関連特許が出て、我々のT-BizBI入居企業活動事例技術紹介ボールSAWセンサー赤道上にすだれ状電極と感応膜を設置した直径約3mmの単結晶水晶球。水晶は圧電体なので、電極に電圧をかけると表面波が発生し、球の表面赤道上を周回する。通常、波は伝搬に従って広がり減衰するが、水晶球上では周回しても同じ幅で伝搬する現象をセンサーに応用した。気体分子による感応膜の弾性変化が表面波の伝搬特性に及ぼす影響を周回で累積させることで、ごく微量の気体でも高感度に計測できる。このセンサーを用いた高速、高感度で小型の微量水分計やガスクロマトグラフなどが開発・製造・販売されている。

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