Incubation Report vol.11
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インキュベーション事業 2019年度活動報告17理工系総合大学である東京工業大学(以下、東工大)のすずかけ台キャンパス内に立地する「東工大横浜ベンチャープラザ」。ここに入居するメディギア・インターナショナル株式会社は、東工大と共同で、薬ではなく生分解性の腫瘍封止剤を用いて、がん細胞を兵糧攻めにする新療法の開発に取り組んでいます。代表取締役の田中 武雄 氏に、起業の経緯や今後の展望についてお話を伺いました。メディギア・インターナショナル株式会社02起業、会社のおいたち ― 起業したきっかけを教えてください 東京工業大学大学院(工学)修了後は、大企業の基礎研究所で鉄鋼プロセスの計装やロボットの開発に携わり、新規事業のセットアップを国内外で体験しました。その中でITビジネスのバブルに疑問を感じるようになり、「中身のあるIT事業」を目指して独立し、「暗号システム」「ビッグデータ」や「超高速検索エンジン」の開発事業に関わってきました。 これらの応用分野の1つとして、医療データベースの検索性能向上とデータ共有化を目指していた時に、カテーテルによる動脈塞栓術をがん治療に応用しておられるゲートタワーIGTクリニックの堀信一院長と出会いました。この治療法はがんに通じる栄養血管を塞ぐことで、がん組織を兵糧攻め(無酸素無栄養状態)にするという方法ナノデバイスでがん治療の革命を目指す東工大発ベンチャーです。外科的処置としては低侵襲で、副作用や薬剤耐性(抵抗性が生じ効きにくくなること)が課題となっている化学療法に比べると生体に優しく、低コストの治療ということで感銘を受けました。しかもカテーテルさえ栄養血管に導くことができれば、がん種を選ばないという点が優れています。これまで治療が遅れていた希少ながん種に対する可能性にも魅力を感じました。 しかし、動脈塞栓術にも課題は残されていました。例えば、既存の塞栓材が生体内で分解しないこと、手技レベルによっては正常組織の血管も塞いでしまうこと等でした。この時に、堀先生から「君が改良・進化させればよい」と背中を押されたことがきっかけになりました。― 元々は工学系なのに、よくぞ決断されましたね 起業以前に専門分野を深く知っていることと事業を起こすことは違うということを実感していました。むしろ専門外であることで常識にとらわれずに新しいアプローチが可能だと考えています。 東工大産学連携本部の林教授に相談したところ、がんの微小環境研究の第一人者である近藤科江教授を紹介いただきました。そして近藤先生からポジティブな方向性を示していただき、2013年4月に起業しました。 並行してバイオやライフサイエンスの基礎的な知識を得るため、再び大学院を受験して博士課程で勉強しました。現在はPh.D. candidateで、特許出願を終えれば論文を書くつもりです。事業の展開と現在 ― しかしコンセプトのみで起業して何とかなるものですか 情報関連の仕事をしていた頃、米国シリコンバレーでアイデアだけから起業する姿を目の当たりにしてきました。とはいえ最初は大企業や投資家・ベンチャーキャピタル(VC)に持ち込んでも相手にしてもらえませんでした。会社を設立した1年目は全く資金がありませんでしたから苦労しましたが、封止剤の候補になり得る材料を提供してくれたベンチャー企業があり、モノが出来たことで少し技術紹介東工大横浜ベンチャープラザBI入居企業活動事例ナノデバイスMDXによる腫瘍標的型低侵襲療法動脈塞栓術とEPR効果を組み合わせることで、腫瘍選択的にかつ速やかに酸素と栄養を遮断する・ 動脈塞栓術とは マイクロカテーテルを用いて、動脈から数μmの塞栓剤を注入。腫瘍周囲の血管を塞栓し、栄養や酸素を遮断する・ EPR効果とは 腫瘍血管(新生血管)の構造は不完全で、数百ナノメートル以下の粒子ならば血管外に漏出する。

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