Incubation Report vol.11
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インキュベーション事業 2019年度活動報告15千葉大学の医薬、薬学系施設を擁する亥鼻キャンパス内に立地する「千葉大亥鼻イノベーションプラザ」。ここで千葉大発ベンチャーとして、ヒト脂肪細胞を用いた遺伝子導入細胞医薬品の開発に挑むセルジェンテック株式会社の代表取締役 麻生 雅是 氏に、起業の経緯や今後の展望についてお話を伺いました。セルジェンテック株式会社01起業、会社のおいたち ― 起業の経緯とGMACについて教えてください 千葉大学の齋藤 康教授(後に第13代千葉大学長)が発明された遺伝子治療用脂肪細胞の研究が、千葉大学と私が勤務していた大手製薬会社によって2000年に共同で開始されました。私自身は2001年に創薬ベンチャーに転職して遺伝子治療や核酸医薬の臨床開発に携わっていました。2003年に齋藤先生から「遺伝子治療用脂肪細胞の実用化を千葉大と共同で行ってみないか」というお声掛けをいただいて、2003年10月20日に起業しました。 われわれが開発しているのはヒト脂肪細胞を用いた遺伝子導入細胞医薬品(Genetically Modified Adipocyte:GMAC)というものです。遺伝的に機能タンパク質や酵素が欠損しているために発症する疾患があります。これらは治療法がないか、1週間から2週間に1回の頻度で生涯にわたり数時間の点滴などを受け酵素を補充する方法しかありません。生活制限や通院の負担などで、患者さんやご家族の生活の質は著しく低下してしまいます。 GMACは『タンパク質や酵素をつくり出す仕組み』を患者さんの体に付加する遺伝子治療・再生医療医薬品で、一度GMACの移ヒト脂肪細胞を用いた遺伝子導入細胞医薬品を開発する千葉大学発ベンチャー植治療を受けると、3-5年にわたり持続的にタンパク質や酵素が分泌されるので、患者さんの生活の質が大きく改善することが期待されます。血球系細胞や幹細胞を用いた遺伝子治療・再生医療や、遺伝子を直接生体内に投与する遺伝子治療もありますが、われわれはヒト脂肪細胞を用いることで、効果が持続し、かつ安全性が高い遺伝子治療・再生医療が可能になると考えています。それというのも脂肪細胞は寿命が10年と長く、多くの生理物質を分泌する機能を持ち、がん化しにくく、細胞があちこちに動かないという数々の特長があるからです。また遺伝子導入による安全性は、種々の方法や観点から検証し、安全性の確保に努めてきました。遺伝子を導入された脂肪細胞GMACは、安全に治療タンパクを永きにわたり補充することが期待されます。事業の展開と現在 ― 大変な時期を乗り越えられたと伺っています 医薬品開発、とくに先端技術での開発には多くの資金と長い期間が必要です。2004年から、資金調達のためにベンチャーキャピタルを回りました。2005年に最初の資金調達に成功し、NEDOの助成事業にも採択され順調な立ち上がりでした。 ところが、2008年のリーマンショックでベンチャーにいきなり逆風が吹き荒れました。とくにバイオベンチャーを取り巻く環境は非常に厳しく、われわれも企業活動を継続することさえ困難な状況に追い込まれてしまいました。そのような中で千葉大学のご支援で、GMACの研究開発のための技術やヒューマンリソースの維持・保全をはかり、再興の機会を待ちました。 どうにか2010年以降には日本科学技術振興機構(JST)、経済産業省、日本医療研究開発機構(AMED)の公的競争資金による研究開発課題としてGMACが採択されて、臨床研究を進めることができました。さらに2014年には再生医療の製造技術開発に強い関心を持たれている日水製薬株式会社からも資金投入していただき、GMAC研究開発は加速しています。― 現在はLCAT欠損症の臨床研究を終え、治験準備段階だそうですねヒト脂肪細胞を使った再生医療・遺伝子治療法(GMAC)技術紹介千葉大亥鼻イノベーションプラザBI入居企業活動事例患者の自己脂肪組織を取り出し、治療目的の遺伝子を導入した増殖能を持つ脂肪細胞を体内へ戻すことにより、自己で作り出せない酵素(たんぱく質)の補充を可能とする遺伝子治療法。脂肪細胞の寿命を活かし、欠損酵素の長期間持続補給が可能なことから、酵素・たんぱく質の欠損・不足により根本的な治療法のない遺伝性疾患患者に向けた新規な治療手段となることが期待される。

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