Incubation Report Vol.10(電子ブック)
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インキュベーション事業 2018年度活動報告29空中映像で不思議な世界を演出する情報通信研究機構(NICT)発ベンチャーの株式会社パリティ・イノベーションズ。代表取締役の前川 聡氏に、起業の経緯、事業内容、今後の展望についてお話を伺いました。株式会社パリティ・イノベーションズ07起業、会社のおいたち ― 空中映像技術の開発秘話と起業の経緯を聞かせてください 大学時代は原子核物理を専攻し、その後大手電機メーカーに就職をしましたが、大学院に戻りニューラルネットワークの研究で博士号を取得しました。ニューラルネットワークというのは、今流行りのディープラーニングのことなのですが、博士号取得後はNICTの研究員として研究を続けました。 しかし、当時はニューラルネットワークの研究が下火になり予算が減ったことで、最終的には研究室がなくなってしまいました。新たな研究テーマを模索している時に、神戸大学でホログラフィーの研究をされている的場先生、仁田先生と出会い、交流する中で立体ディスプレイが出来ないかと考えるようになり、2005年秋に空空中映像技術で「スター・ウォーズの世界」を実現する情報通信研究機構(NICT)発ベンチャー中映像の着想を得るに至りました。 2006年3月には第一試作が完成して空中映像を実現することができ、特許を出願しました。その後、第二試作が完成して、10月に学会発表したところ、空中に浮かび上がる奇麗な映像に驚かれました。展示会に出展しても多くの皆様から『スター・ウォーズの世界だ』などと驚かれ、何か新しい価値を提供できると確信しました。 よく混同されるのですが、ホログラフィーは光の波としての性質を応用したもので、一方、空中映像は光が直進する性質を応用したものであり、全く原理が異なります。直進する光をミラーで反射させることで、光源と面対称の位置(空中)に「実像」を浮かばせることが可能になります。アミューズメント的な要素の映像にとどまらず、実像をタッチすることで反応するスイッチなどのデバイスへの展開も期待ができるシステムです。 NICTでも毎年予算が付きプロジェクトが発足しました。ところが、ここからが苦労の連続でした。原理が確立しても、量産化しなければ事業にはなりません。最初は金属を切削することで結像光学素子「パリティミラー®」を製作していましたが、画像の精度を保ちつつ量産化に向けたコストダウンに挑戦するためには、樹脂化して製造プロセスを革新するしか方法がないと考えました。2010年に遂に5cm角の「パリティミラー®」が完成し起業することにしました。事業の展開と現在 ― 事業は順調に進みましたか 5cm角が完成してからも順風満帆とはいきませんでした。10cm角に挑戦したのですが、3年かけても量産レベルの製品が出来ずに思考錯誤が続きました。起業後しばらくはNICTとの兼業で、開発費もNICTから出ていましたが、プロジェクトが終了してしまい、いよいよ自力で開発を進めなければいけなくなりました。戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)などの助成金を活用しながら開発を継続し、材料と製造プロセスの革新を繰り返すことで、ようやく2018年夏に10cm角、秋に15cm角の量産化に耐え得る装置での試作に成功しました。パリティミラー®技術紹介パリティ・イノベーションズが開発する光学素子「パリティミラー®」は、2面コーナーリフレクタアレイ構造を持ち、離散的な単位光学素子によって光線を細かく分割、幾何光学的にそれらを集めて結像させるものです。「パリティミラー®」による空中映像は、距離や方向に関わらず空中の確定した位置に見られるため、現実の物体の様な存在感・臨場感があります。10cm角程度の小型の「パリティミラー®」を用いることにより、空中映像は手が届く程の短距離で観察されるパーソナルな装置として実現できます。クリエイション・コア東大阪BI入居企業活動事例

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