Incubation Report Vol.10(電子ブック)
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インキュベーション事業 2018年度活動報告27線虫を活用した早期がん検査『N-NOSE』の事業化を目指して、大学の助教を辞して「HIROTSUバイオサイエンス」を起業した代表取締役 広津崇亮氏に、起業の経緯、会社の特徴、今後の展望についてお話を伺いました。株式会社HIROTSUバイオサイエンス06起業、会社のおいたち ― どのようなビジョンをお持ちですか 当社では、心身ともに健やかな未来、生物の能力を生かす未来、研究者が輝く未来という3つの未来をビジョンに掲げております。 がんの治療は早期発見が最大の鍵です。線虫によるがんの検査『N-NOSE』は、これまで検出が難しかったステージ0、ステージ1の段階でも高い精度で発見が可能です。世の中では素晴らしいがん治療薬も出てきていますが、まだまだ高額で国の財政を圧迫する原因になっています。我々の提供する検査は、低コストで早期にがんの検出ができるというメリットがあり、早く実用化をしなければいけないという使命を感じています。― 起業の経緯について教えてください 大学生の時に研究を始めて、大学院博士課程で線虫の嗅覚についての論文(注1)がネイチャーに掲載されました。線虫はバイオの世界では、ハエやマウスと同じくらい研究されているモデル生物で、線虫を題材としてノーベル賞を受賞した研究者は6名もいます。世界初の線虫がん検査で世界を変える大学発ベンチャー 線虫の嗅覚が優れているとうことは以前から知られていました。2013年にがん患者の尿と健常者の尿を線虫が嗅ぎ分けることができることを発見しました。半年間かけて実験を繰り返したところ、次々と仮説が検証され効果を確信し、2015年に2つの論文(注2)を書きました。これがテレビで大きく取り上げられ起業の機運が高まり最初の起業をしました。この時は自分自身は大学に籍を置き、CTOとしての参画でした。 しかし、この最初の起業はすぐに行き詰りました。研究と事業の二足の草鞋ではなく、研究を一番よく理解している自分が退路を断って事業に専念しようと腹を括り、私が代表取締役社長になって、2016年8月に株式会社HIROTSUバイオサイエンスを設立しました。(注1):『The Ras-MAPK pathway is important for olfaction in Caenorhabditis elegans. Hirotsu T., Saeki S., Yamamoto M. and Iino Y. Nature, 404, 289-93 (2000) 』(注2):『Cancer screening test using C. elegans scent detection. Hirotsu T. Aroma Research,16,134-136 (2015) 』、『A Highly Accurate Inclusive Cancer Screening Test Using Caenorhabditis elegans Scent Detection. Hirotsu T., Sonoda H., Uozumi T., Shinden Y., Mimori K., Maehara Y., Ueda N., Hamakawa M. PLOS ONE, 10(3):e0118699(2015)』事業の展開と現在 ― 事業は順調に進んでいますか おかげさまで事業は順調に進んでいます。2018年8月には事業会社6社、銀行系ベンチャーキャピタル2社を割当先とした総額14億円の第三者割当増資ができました。現在、従業員も43人になりました。わずか、2年間でここまで到達できたことは喜びです。 ただし、ここに来るまでにはいろいろと苦労がありました。研究開発は一直線には進みません。研究を進めるには資金は欠かせません。研究開発を加速する上では研究員を採用する必要がありまC. elegans(シー・エレガンス)HIROTSUバイオサイエンスが開発する線虫がん検査『N-NOSE』で使用する線虫「C. elegans」(シー・エレガンス)。体長は約1mmほどながら犬よりも多い約1,200の嗅覚受容体を持ち、嗅覚が非常に優れていることで知られている。技術紹介東大柏ベンチャープラザBI入居企業活動事例

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