平成24年度F/S支援事業 事例集
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4334F/Sの目的と実施内容及び成果等今後の見通し担当専門家から一言加藤 洋一郎 本部(東京) 国際化支援 シニアアドバイザー 人工関節は、膝関節、股関節といった大きな部位のものから、指関節のように小さな部位のものまで様々であり、当社も肘、肩、足を含めたラインナップを揃えています。しかし、F/S調査は人工指関節に絞ることにしました。指関節のような小さい部位では、欧米医療機器メーカーに目立った競合が存在しません。当社は海外展開の障壁を少しでも下げるために、最も自社に優位性のある製品に絞って、F/S調査を行うことにしました。 次に対象国の検討を行ないました。当初、海外F/S調査の候補国はフィリピンとマレーシアでした。両国とも日本国内からの机上調査では限界があり、一方で学会や医師のワークショップ(臨床研修)等から、当社の製品を知り、採用を検討する医師の存在が見えていたため候補国としました。既に実績を上げていたシンガポールから近く、学会等で医師の交流が盛んであることも要因でした。 この2国にオーストラリアが現地調査の対象国に追加されることになりました。オーストラリアの医師から患者が手術待ちの状態で、当社製品の採用を検討しているという話が入ったためです。日本人よ 帰国後、当社は各国の調査結果を整理し、代理店候補先との契約締結に入りました。各国の市場性の再検証のためにも現地代理店は必要です。公立病院では保険適用対象にならないと価格的に厳しいですが、私立病院の富裕層患者であれば採用の可能性があります。当面は販売価格の調整を行いながら、まずは私立病院を中心に施術実績を積み重ねることで各国に当社製品の優位性を伝えていく戦略が重要と考えました。 オーストラリアでは薬事申請の手続きを行い、2013年春に国際学会にあわせ日本の医療の最先端技術の海外展開のお手伝いという事で、F/S打ち合わせの段階からかなり気合がはいりました。又訪問相手先もそのほとんどがその国を代表する様な、トップクラスのドクターであり、かなり緊張しました。今後、アジアを中心に拠点展開がより一層進展することを見守りたいと思います。りも欧米人の骨格や生活様式に近く、医療規制も整備されているオーストラリアは、当社の海外戦略からは乖離する地域です。しかしながら、JETROの調査等から当社が取得しているCEマークでの参入が可能なことがわかり、また何よりも医師と患者の期待に応えることが医療機器メーカーとしての務めであると考えたからでした。 海外F/S調査では各国の医療事情、流通ルート等の確認の他に、各国での販売価格の設定方法の確認を重要な調査項目としました。日本の医療機器は厚生労働省が定める償還価格が適応されます。当社の人工関節も同様で、薬事承認を受ける際に償還価格が設定され、それによって販売価格戦略はほとんどが決まってしまう事情があり、各国の薬事規制の確認を含め、調査を行ないました。 現地での調査は代理店候補先とともに、公立・私立の病院で医師に面会、医療事情と当社製品の評価についての確認を行ないました。従来の人工指関節はシリコン製で耐久性に難があり、当社の人工指関節は各国の医師から高い関心を寄せられました。問題は価格です。従来の製品に比べるとどうしても高くなってしまいます。マレーシアは患者が医療機器を購入し、医師がそれを使用して手術を行う慣習となっており、保険適用がない場合、公立病院での採用は困難が予想されました。フィリピンでも医師は即採用したいという意向を示すものの、公立病院の患者では当社が考える販売価格に手が出せないことが判明しました。 現地調査でしか得られなかった情報は多く、例えばオーストラリアでは、日本と同様に政府に対して薬事申請を行う必要がありますが、この際、当社の人工指関節のように、ソケットを部品化する場合、3つのパーツに分けて申請する必要があること、また半年かかる薬事申請手続き中でも、医師が全責任を負えば、申請中の医療機器も使用可能であることがわかりました。た第一例の手術を計画中です。フィリピン、マレーシアの両国でも、これに続くよう医師と連絡を取り合っています。 現地調査から見えてきた課題として流通ルートがあります。当社の人工関節は専用の手術器具が必要となり、実際の手術では当社社員が立ち会います。高価な手術器具は、手術の度にレンタルするスキームを考えましたが、日本からの輸出入はコスト、スピードともに課題が多いです。このため、当社は今後、シンガポールに駐在員を置き、アジア太平洋の活動拠点とすることを検討しています。 しかしこれにも懸念はあります。海外事業活動を進めるほど、人材が不足していきます。当社の場合は医療機器を扱うため、高度な専門知識も必要となることから人材確保は容易ではありません。 それでもF/S調査を実施したからこそ、こうした課題が認識できました。当社はF/Sのプロセスの重要性を理解しており、経営資源をフル活用しつつ、段階を踏んで海外事業展開を進める予定です。 日本製の人工関節を海外でも安心して広く使ってもらうため、挑戦を続けています。中 国

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