経営課題解決 成功事例集─ハンズオン支援ベストプラクティス事例集─
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“いいものつくり”実現の生産体制と収益性の改善―高級腕時計ケース生産工程の採算性改善支援―事業部の重点施策(経営課題)は明示されているが、目標を達成するための行動計画が策定されておらず、PDCAが回っていない事がわかった。その要因は社内のコミュニケーション不足により、経営課題のブレークダウンが十分にできていない事によるものであった。そこで、改善活動に入る前に、精器事業部における課題の棚卸と改善方法、管理指標などを討論し、コミュニケーションを活性化しながら整理して、グループごとに行動計画を策定した。その後、行動計画に基づく、改善活動がスタートしたが、売上総利益レベルでの赤字状態はすぐには改善せず、外注費の見直し、生産性の改善、品質改善、稼働率向上、生産計画確立、適正人材配置、前行程、後工程との連携改善、優先課題の見直しなど課題はまだまだ山積していた。それに加え、社員の職人気質の強さがブレーキとなり、問題点をさらけ出しての改善活動が出来ない状態が続いた。そのため、計画の実施率は低い状態で推移した。チーム改善目標達成率判定対策A付加価値114%◎生産性116%利益154%品質100%活性化・安全98%B――――――△C――――――×D――――――〇E――――――△F――――――×行動計画実施状況<専門家継続派遣事業②>(平成25年10月~平成26年9月) 第2ステージは、個別の改善活動を精器事業部全体の採算性改善につなげる「全体最適化」が弱い為に、行動計画の実施率が低い状態にあると判断し、改善活動への集中力を上げることを狙いとした支援を実施した。精器事業部の黒字体質の実現を目標として(他の工程を含めた精器事業部全体を支援対象に拡大)、業績管理の適正化、月次業績管理の徹底、および3ム(無駄、無理、ムラ)の改善をテーマに加えた。 第2ステージは業績管理指標の検討から始まった。精器事業部の管理指標は売上、付加価値、経費、営業利益(販管費の計上がないため営業利益が部門経常利益となる)、一人当たりの出来高生産性であり、生産量を増やすことで評価される管理指標であった。在庫の影響を大きく受け、生産性の改善成果が反映されにくいという問題点があった。そこで、業績管理の指標を生産性に配慮したものに見直すことで適正化を図ったが、管理指標の変革は、必要性の認識の問題、データの集計方法、システム的制約、そして個人の評価基準の問題も絡み一筋縄では行かない状況であった。そこで、社長の英断により、評価から在庫は外し、“製造出来高生産性”から“売り上げ時点生産性”に変更する事で決着した。 業績管理の適正化のためのチームとして、職務文書管理見直しチーム、予算実績管理見直しチーム、納期改善プロジェクトが編成され“業績管理適正化行動計画”を策定、適正化活動が開始された。チームの活動結果が逐次、月次改善管理活動報告会に報告され、業績管理にも反映されるようになると、チームメンバーとリーダー(管理者)間のコミュニケーションが良くなり、コスト意識、効率意識の面で変化が表れ始めた。業績改善目標の共有化が進展し、チームの全員活動になりはじめた。また、研磨工程への新技術導入、検査基準の見直しなどにより直行率の改善もみられるようになり、技能評価、スキルマップ、指導者を明確にした多能工化といった技能伝承も進み、研磨工程での人の配置に余裕が出てきた。 このような改善活動の結果、目標を達成できたチームが出てきて、精器事業部の業績黒字化は達成できたが、目標達成が部分的な状態に留まり、必要とする利益率(本社費を賄うための利益)を得るまでには至らなかった。<専門家継続派遣事業③>(平成26年11月~平成27年4月) 第3ステージは、さらに行動計画の実施率を高めていく為、事業目標達成のための仕組みづくり、高効率生産体制づくり(QCDの強化)、研磨工程の改善(直行率の向上、技能伝承の仕組み作り)をテーマとしてスタートした。事業目標達成のための仕組みづくりとして、社員の理解に葛藤・矛盾が起きる指標を見直し、管理会計的な管理指標として付加価値収入増加、材料費低減、外注費低減、経費(予算当社は社歴が長く、体質が確立され、柔軟性に欠ける部分があり、難しい支援環境であった。経営を揺るがす環境の変化が次々と起きる中、改革改善による再建に取り組む、林社長の熱意と意欲に共感、率直な意見交換が出来た事により、事業部一丸の改善活動に変貌、打破できた事例である。八重嶋 征夫 東北本部 プロジェクトマネージャー

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