中小企業のための海外リスクマネジメントマニュアル詳細版
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- 73 - Column#10 (日本フッソ工業株式会社) 日本への技能実習生を採用し、さらなる事業拡大を目指す! 同社は昭和39年に創業し、大型プラント設備をはじめ、多様な生産設備に対するフッ素樹脂コーティングを行っている。加工難度の高い大型プラント関連のフッ素樹脂コーティングでは、同社は国内において高いシェアを占めている。現在、韓国・タイの2ヶ国に現地法人を保有している。 タイへの進出については、リーマンショック以降、円高の影響により、すでに海外に進出している日系企業における現地調達の流れや、国内での大型プラントの受注減少を受けて検討をはじめた。東南アジア数カ国への事業可能性調査を実施したうえで、ASEAN統合を見据え、アジア全体に供給ができるタイへの進出を決めた。タイへの進出にあたり商工組合中央金庫「グローバルニッチトップ貸付制度」を活用した。 タイでの創業にあたり最も苦労した点は、現地人材の確保であった。タイ語を話せる日本人駐在員がいなかったため、日本語によるコミュニケーションが可能な現地従業員の採用活動を行っていた。当初、現地のコネクションに頼った採用活動を行っていたものの、タイにおいては失業率が低く求職者が少ないうえに、日本語を話せる人材も少ないため採用は進まなかった。そのような状況が続く中、現地の日本人コンサルタントから、公益財団法人国際人材育成機構(アイムジャパン)を紹介され、アイムジャパンが主催するイベントを通じて高い技術をもった現地従業員を採用することに成功した。 アイムジャパンでは、外国政府からの要請に応える形で、現地従業員を3年間日本に派遣し、日本で就労経験を積ませた技能実習修了者を日系企業とマッチングさせるイベントを開催している。このイベントに参加するためには、日本本社で技能実習生を受け入れることが条件となっており、同社においても現在2名の現地従業員の受け入れを行っている。 現地法人の人員体制は現在20名であるが、イベントを通じて採用した技能実習修了者は12名に達している。技能実習修了者は、もともと日本または日系企業で働くことを目的としているため、真面目で就労意欲が高く、スキルも一般的な現地従業員よりも高い。また、3年間の日本での生活を通じて日本語や日本の文化にも親しんでおり、日本人駐在員とのコミュニケーションも良好である。もっとも、3年間日本企業の給与水準で就労した経験があるため現地における給与水準よりも割高な給与を求める傾向にあり、また、スキルや語学を習得しているため、より条件のよいところに転職してしまうなどの可能性がある。 同社では、社員旅行、食事会、カラオケなどを企画し、現地従業員とのコミュニケーションの活性化により、定着率の向上を図るとともに、OJTを通じて『報・連・相』などの仕事の基本をしっかりと身につけさせるなど、現地従業員の教育にも力を入れている。タイでの事業については現在、好調に業績を伸ばしており、今後も技能実習修了者の採用により、事業の拡大を目指して行く予定である。 同社によれば、現地従業員の確保は工場を操業するための前提条件であり、必要な現地従業員を確保するためには、一定数の離職も織り込んだ採用活動が必要だという。

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