中小企業のための海外リスクマネジメントマニュアル詳細版
72/114

- 72 - Column#8 (株式会社一宮電機) 不正行為を防ぐ、現地での仕組みづくりと信頼関係構築! 同社は、昭和35年に創業し、各種モーター部品の生産を中心に事業を拡大している。平成5年にタイ、平成12年にフィリピンに現地法人を設立し、積極的に海外事業展開を行っている。 フィリピン進出当初には、内部犯行と思われる在庫や廃棄物の横流しが発生した。中には現地従業員と廃棄物業者が結託し、廃棄物を抜取りその対価を山分けしていたということもあったようだ。現地法人では日本人駐在員1名でほとんどの管理業務を担う必要があるため、日本ではあまり想定されない不正行為にまで十分なチェックがおよばなかったことが背景にあった。同社では、この経験をきっかけに現地従業員を巻き込んだ相互チェック体制を構築することとした。信頼できる複数の現地従業員を登用し、製造ライン担当者による生産量の確認と廃棄担当者による廃棄量の確認を行う仕組みを導入した。また、現地の視点で不正行為が発生しうる業務を洗い出し、不正行為への監視強化を図った。会社として従業員の行動を把握し、不正行為を見逃さないという態度を周知させることで、心理的な抑止力も働き、不正行為は無くなった。 加えて、駐在員が現地従業員の反感を買わないことも重要である。東南アジアでは日本からの赴任者が尊大に振る舞うケースもあるが、日本人駐在員は現地で働かせてもらっているという意識を常に持ち、謙虚な姿勢で仕事に臨むことで、現地従業員との信頼関係が構築され、不正行為を防ぐことにもつながる。 Column#9 (トレックス・セミコンダクター株式会社) 経営者と従業員が同じビジョンを描き、共通の目標を持つ! 同社は、半導体デバイスの開発・製造・販売を中心に事業を拡大しており、現在ではアジアをはじめ複数国で事業展開している。同社は、ベトナム進出の際、進出までに十分な事業可能性調査を行った。進出済み日系企業を中心に現地の情報収集を行い、約3年の調査の結果ベトナム進出を決め、平成21年現地に進出した。 ベトナムでは、人材流出の課題に直面している。現地従業員が給与の高いところにすぐに転職してしまう傾向がある。ただし、現地従業員の給与を際限なく引き上げるわけにもいかないため、給与で引き止めることには限界がある。特に、日本語ができ、マネジメント能力がある優秀な人材が流出すると会社にとって大きな痛手となる。 そこで同社では、現地従業員に対しては、夢を語ることを心掛けている。「今後の事業展開はこうありたい」と経営者が語ることで、経営者に共感をしてくれる。経営者と共通のビジョンをもつことができる現地従業員は、経営者と一緒に目標をもって仕事をしてくれ、給与とは違う価値に魅力を感じ、会社から離れる可能性は低くなる。 また、ベトナム工場ではQC活動も活発に行われているという。QC活動を通じて、会社に貢献した、利益を生み出すことができたなどお互いに情報交換して、互いに褒め合うことができる。会社として報償制度を導入していることもあるが、活発な議論が行われ、従業員同士が問題点や目標を共通することに役立っている。 海外で事業を行ううえで、課題は常に発生する。重要なことは、現地従業員との信頼関係をつくることと、現地がどのような状況にあるかを日本本社が把握しながら、現地と連携して対応することである。

元のページ  ../index.html#72

このブックを見る