中小企業のための海外リスクマネジメントマニュアル詳細版
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- 62 - Column#6(フィリップモリスジャパン株式会社) 贈収賄対策のグローバル展開! 同社は、世界最大のたばこメーカーであるフィリップモリスの日本法人である。フィリップモリスは、1847年ロンドンで創業以後、1950年代半ばに大きくグローバル展開に舵を切り、今では世界の紙巻たばこブランドのトップの座を維持しているグローバル企業である。 同社では、年に1回法務やコンプライアンスを含む複数部署が集まり、リスクを洗い出し・評価している。まず、各現地法人で業務フローに沿ったテンプレートを利用してリスクの洗い出し・評価を行い、次に、地域統括会社が傘下の現地法人の評価結果を取りまとめ、さらにスイスの統括本部が全世界の評価結果を取りまとめて経営層に報告する仕組みになっている。本取組みにより洗い出されたリスクについて、グローバルで対策を展開していくもの、ローカルで対策を行うものが峻別され、取組みを推進していく仕組みが構築されている。 米国の海外腐敗行為防止法は域外適用(自国の法令を自国外の事象にまで拡大して適用)されることから、米国本社主導で対策を確立し、各拠点に展開している。日本法人においては、コンプライアンス担当者と法務部所属の弁護士が連携し、対策の検討・実施の支援を行っている。営業活動において贈答や接待を行うなど贈収賄とみなされる可能性のある活動については、あらかじめ所管部署に贈答等の内容を申請し、承認を得るというフローを確立している。事前に法令抵触の有無をチェックすることにより、贈収賄のリスクを低減している。申請内容はデータベース化して保存しており、事後的に内容を確認することや、贈答等のの金額を支出先ごとに累計して管理することに活用しているという。 なお、同社の贈収賄対策として定めている禁止事項としては、以下のようなものがある。 • 取引の獲得または維持を目的に、または不適切な目的で政府職員に価値を有するものを申し出、または提供すること。これには税金または関税を減額するための支払いも含まれる。 • 第三者を通じて不適切な支払いを行うこと。このため、代理人およびパートナーを選定する場合は、入念に行う必要がある。もし予想される代理人が政府職員である場合、または政府職員と関わりがある場合は、特に注意を必要とする。 もっとも、全拠点に海外腐敗行為防止法に基づく統一ルールを展開しつつも、現地固有の慣習(例:日本における冠婚葬祭の支出)への対応は、現地の法令等にあわせて柔軟に運用しているという。グローバルにリスク対策を展開しつつ、現地固有の法令等を踏まえて柔軟に運用を変更するという方法は、贈収賄対策に限らず、お手本ともいえる取組みだが、これを可能にしているのは、リソースやノウハウが必ずしも十分ではない現地法人に対して、地域統括会社がフォローする体制が存在すること、「正しいことを正しく実践する、わからなければ聞く」という文化が醸成されており、相互のコミュニケーションが円滑に行われていることが大きいという。

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