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三笠産業株式会社(山口テクノパーク)

新規参入ゆえの突破力。微粉砕技術で農業と健康に貢献

物体をミクロン単位まで細かくする「超微粉砕技術」を持つ三笠産業株式会社<以下、三笠産業(株)>。もともとこの技術は農薬製剤のために開発されたが、時代の変遷に伴いその技術をカラートナー製造に応用、さらには野菜に応用した「野菜ファインパウダー」という新分野の食材を開発した。本社に近い山口テクノパークに専用工場を設立し、わずか2年弱で首都圏のトップクラスのパティシエや大手菓子メーカーとも取引を開始。初参入のハンデをメリットに変え、現在では食品業界にも地元農業にとっても牽引役となっている。

時代に合わせ、技術で役立つことを指針に事業展開

三笠産業(株)の創業のきっかけは、戦後の日本で創業者が目の当たりにした食糧不足。「農作物の不作を改善し食糧の豊かな日本を目指そう、という一念で、農業資材や肥料、農薬の仕事を始めたそうです」と代表取締役社長の佐伯誠氏は語る。昭和24年に会社設立、昭和27年頃から農薬の製剤を始めたが、その時は輸入した粉剤をより細かくし石灰とまぜるなどして製剤していた。より効果のある農薬の形状を模索し、全国でいち早くジェット気流式の粉砕機を導入したことがきっかけとなり「農薬だけにとどまらず、様々なものを粉砕する業務を受注するようになりました」。中でも事業の柱にまで成長したのが、プリンターのトナー製造。「トナーは粉砕の形が整っていなければならず、非常に細かく粉砕する必要があるのです」と佐伯氏。現在はリサイクルされたカートリッジ用のトナーを開発し供給。山口、広島、島根、茨城のほか国外にも事業を展開している。しかし、「伸びている時期にこそ、次の事業を検討する必要があります。トナーについても、現在の技術の進化を見てみると、紙を使わない情報手段が発達していますし、異なる印字方法が出てくるかもしれない。いつまでも事業が続くと断言はできません」と佐伯氏。そこで世の中を見渡して気づいたことがあるという。「日本の農業は、高齢化や後継者問題、自給率の低さなど、衰退化をたどっている。農業の活性化のために何とかできないかと考えました。一方消費者については、摂取カロリーは足りているが、メタボや生活習慣病が心配。野菜の摂取不足というデータもある。野菜は調理して食べるまでに手間がかかるから、野菜離れになっているのでは」。世の中の動きを観察し、常に時代に役立つことを事業へとつなげてきた三笠産業(株)が行き着いたのは、超微粉砕技術の野菜への応用だった。

(左)佐伯誠代表取締役社長。/(右)社屋の外観。
(左)佐伯誠代表取締役社長。/(右)社屋の外観。

野菜パウダーで業界参入。ハンデをメリットに転換

農業資材の販売という関わりはあったが「食品の製造や販売は未知の世界でした」という三笠産業(株)があえてすべての工程を行う工場を設立したのは、食品のトレーサビリティを求める声に応えるため。「原料加工から製品化まですべて自社で行えば、自分の目で確かめられ、厳しい条件にも自社の設備で応えられる。新規参入ゆえ当初から当たり前だと思って対応していますから、他社からすれば厳しい条件でも、当社では何の抵抗もなく受け入れられました」と佐伯氏。製造ラインについては、これまでの微粉砕加工のラインと同様、「様々な機器を調達し組み合わせて、自社でラインを作りました」。殺菌、乾燥などの工程は始めてだったが、縁あって大阪府立大学との共同研究が実現。原料の菌の数を減らすための過程において「通常の設備よりも菌数を少なく加工できる技術を開発しました」と、さらなる差別化へとつながった。そんな佐伯氏が新規参入の厳しさを感じているのは「販路がなかったこと。特に食品業界は開発が始まってから実際の商品が売り出されるまで1年程度はかかるのが普通で、カラートナーの場合とは大きく異なります」。営業に本腰を入れ出してから約1年半が経ち、野菜パウダーは一流パティシエや大手菓子メーカーにも採用されている。「当社が開発を始めた頃、食品業界を知っている人に話をすると、これは面白いと言って下さる方が多いことや、すべての工程を自社で行う所が少ないということもわかってきました」と振り返る佐伯氏。「業界にとっては新参者。古いしきたりを知らないことが、返ってメリットにもつながっています」と佐伯氏。最近では野菜パウダーを使った食品でBtoCの直販を開始。技術のみでなく全工程にこだわる姿勢が、多くの支持者を生み出していると言える。

(左)野菜パウダーを使用した商品。/(右)野菜を乾燥させ微粉砕したパウダー。
(左)野菜パウダーを使用した商品。/(右)野菜を乾燥させ微粉砕したパウダー。

山口から農業起こし。日本の農と暮らしを元気に

本社に近い場所に絞って用地を探し、山口テクノパークに立地したのは「有料道路のインターチェンジや国道まで約1kmというアクセスの良さ」と佐伯氏。野菜パウダーの原材料は地元産に加えて全国の産地からも運ばれてくるため、陸路の利便性は重要だ。「地元の農家を見ていると、非常に実入りが少ない。出荷のための洗浄、選別、箱詰めなどの労賃が少し出るくらいで、精魂込めて作物を育てるということへの対価は正しく得られていないように思います」と、長年農家を近くで見てきただけに、状況や思いを深く知る佐伯氏。「野菜パウダーに加工する原料は、形が悪かろうが不揃いだろうが、いっこうにかまわないのです。生産していただければ、農地の荒廃を防ぐこともできます」露地物で育てた作物を仕入れることができる工場と、手間を抑えて作物を作ることができる農家。双方にとって嬉しい状況が生まれつつある。平成21年度には地元産の「源生林あしたば」を使った明日葉パウダーによって農商工等連携法に係る事業計画認定を受けた三笠産業(株)。株式会社おいしませファームやJAあぶらんど萩などの生産者と事業連携し、農業の活性化にも力を入れている。「来年は野菜パウダーの売上を10倍に」と明確な目標を語る佐伯氏。時代は移り変わっても、“超微粉砕技術が日本の農業と健康を救う”という信念は三笠産業(株)を貫いている。(2010年8月取材)

粗く刻まれた原料は、殺菌の後、乾燥させる。
粗く刻まれた原料は、殺菌の後、乾燥させる。

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山口テクノパーク

 

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