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上田鍍金株式会社(能登中核工業団地)

顧客に近く、環境はクリーンに。「新時代のめっき工場」を構築

パソコン、携帯電話からテレビや冷蔵庫、自動車まで、電気を使う製品の部品にとって重要な役割を果たす「機能めっき」。上田鍍金株式会社<以下、上田鍍金(株)>は大正9年の創業時から機能めっきに特化し、電気部品の発展とともに成長してきた。生産力拡大に伴い能登中核工業団地へ進出したことで、自社のみでなく北陸地域にある大手取引先にとっての物流コストも削減。自社設計の自動化されたラインが並ぶクリーンな工場を地域に公開するなど、めっきという業種の新たなイメージの構築にも貢献している。

出荷先への近さは、めっき工程の重要な価値

電気を使って信号を流すために用いる部品は、材質にめっきを施すことで機能を実現することができる。電子部品のコネクターなどに使用するのは、異種金属を接触させて通電や遮断を機能させるための金めっき。電化製品の端子やスイッチ、ねじ、キャップなどにもニッケルなどのめっきが必要だ。正しく通電・遮断を行うためには、抜き差しの繰り返しによる負荷、精密部品を正しく組み立てるための薄さ、他の機能を邪魔しないめっき面積の小ささなども条件。半導体や自動車、電化製品の進化にともなってめっきの技術も進化している。
そんな中、大手企業との取引を順調に伸ばしている上田鍍金(株)。「生産力拡大を目指し広い場所への立地を検討した結果、取引先の石川サンケン株式会社<以下、石川サンケン(株)>の工場に近く、土地価格や電気料金への補助などのメリットも大きいという理由でこの地に決定しました」と常務取締役の上田悦信氏は語る。めっきを施す対象である部品は、部品工場から入荷し、めっきが終わると組み立てのためにメーカーへと出荷するが「めっきが必要な部品は限られており、製造工程上はめっき工程が追加されるようなもの。メーカーにとってはめっきに要する期間はできるだけ短くしたいはず」と上田氏。京都工場で石川サンケン(株)から業務を請け負っていたときの物流に2〜3日を要していたものが「即日納品できるようになりました。距離の近さは大きな付加価値につながりました」。もちろん物流にかかるコストも大幅に低減。「部品は1つを見れば小さいものですが、それが1ケースで200kg、300kgという単位になると物流コストは大きな課題。当社への入荷については顧客がコストを負うため、近くにめっき業者がいることは顧客にも大きなコスト削減です」。

(左)上田悦信常務取締役。/(右)社屋の外観。
(左)上田悦信常務取締役。/(右)社屋の外観。

自社内で設備を開発・製作。資産も資源も無駄にしない

めっきの難しさは「いかに薄く、小さくつけるか」と上田氏。製品が精密で複雑になるほどめっきの技術も難しくなる。部品の形状は製品のバージョンアップ等によって異なるため、作ったラインがそのまま使い続けられるとも限らない。上田鍍金(株)の強みの一つは、大部分のラインの設備を自社で開発、製作も社内で行うこと。「新しい仕事が入った場合、自社内でラインを立ち上げることができ、設備投資を安くあげられます。メンテナンスや修理、改変も自社製であれば使い勝手よくできます」。設備を担当する人材も長く勤めているため、知識や技術が蓄積されてきたという。
めっきの工程は前処理、めっき、後処理に分けられる。「部品工場から入荷した部品は油を落としてめっきの付きをよくするために洗浄。めっきの後はほこりの付着などを防ぐため洗浄し乾燥させます。納品時も汚れ防止のため丁寧に梱包して出荷します」と上田氏。洗浄用の純水を作る浄化設備も完備。水量も多く必要だが「工場内で循環して使用しています」と無駄にはしない。設備を十分に備えた北陸工場だが「購入した区画の半分はまだ空いていますから、今後新しくラインを立ち上げる楽しみがありますね。京都には技術開発センタなどがありますが、新しく設備を作るとしたらここが拠点。今後は“上田鍍金の本拠地は能登”となっていくと思います」と語る。

自動化された生産ライン。
自動化された生産ライン。

めっきの新たなイメージを構築、地域と共生する企業へ

「昔はめっき工場といえば、汚れや薬液の使用などでいわゆる3K(きつい、汚い、危険)の代表格のように思われていました。また“めっきが剥がれる”という表現もあるように、よくないイメージを持つ人も多いでしょう。だからこそ、この工場は操業時から積極的に公開しています」と上田氏。地域で行う企業展などにも出展し、工場業務の理解促進に努めている。また今後の労働力ともなりうる高校に対しては「説明会の際に高校の先生が、工場勤務中は薬液の使用などで汚れるというイメージを持っていらっしゃると聞き、見学に来ていただきました」。その教諭は、抱いていたイメージとは大きく異なる工場の環境に驚いたという。KES(日本版環境マネジメントシステム)の認証を取得している工場はクリーンそのもの。余裕のあるスペースに設置されたラインを、整然と流れて行く部品。仕上がり後の部品はめっきによって輝いている。「薬液の倉庫はカメラや警備システムで管理しています。何かあれば真っ先に疑われる存在ということを自覚していますから」と、地域との共生を第一に考えている上田鍍金(株)。ほぼ全員が現地採用の社員の「もくもくと取り組むまじめな気質」にも助けられているそうだ。
立地時は2ラインで操業を開始した工場も、現在はさまざまな機能をこなす6ラインに増設。京都本社の取引先であった東芝系の企業から加賀東芝エレクトロニクス株式会社へ紹介を受けるなど、信頼を糧にこの地でも地位を築いてきた。「お客様に恵まれていると感じます」と上田氏。先端技術を支えているめっきへの理解が進めば、今後はこの能登でも「めっきの会社で働きたい」と考える若者がさらに増えるのではないだろうか。(2010年8月取材)

(左)めっきを施された部品を検品し梱包。/(右)めっきを施された部品。
(左)めっきを施された部品を検品し梱包。/(右)めっきを施された部品。

▼団地の詳細情報
能登中核工業団地

 

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