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株式会社ウイン・ディー(高岡オフィスパーク)

人材力が立地の要。未来を担う地域発のこだわり精神

自動車や家電製品などの開発過程で製作されるモックアップ。量産化される製品が立体的な形として表れる最初の工程であり、その後の製造可否を左右する重要な役割を担う。メーカーからの依頼を受けてモックアップ製作を行う株式会社日南<以下、(株)日南>の国内7番目の事業所としてスタートしたのが株式会社ウイン・ディー<以下、(株)ウイン・ディー>。「ものづくりのまち」として知られる高岡にデザインの風を吹き込み、新たな価値を創造したいとする富山県と高岡市、中小機構の願いを受け、高岡オフィスパークに進出した。

地元のデザインと産業の橋渡し役として、高岡へ

立山連峰から注がれる豊富な水資源と水力発電により、様々な工業が発達してきた富山県。特にアルミや銅などの金属加工においては独自の地位を確立。400年の伝統を誇る高岡銅器や高岡漆器など、独自のものづくり文化が発展した場所だ。高岡オフィスパークは、県内企業の新製品開拓のためのデザイン提案・商品化や、製作された製品の販売促進までをトータルに支援する「富山県総合デザインセンター」を敷地内に持つのが特徴だ。(株)ウイン・ディーの母体である(株)日南は神奈川県で昭和45年に創業。オーディオ機器などの家電製品を中心にモックアップ製作で力を伸ばし、昭和56年には六本木AXISビルのオープンに合わせて自社ブランドショップを設置するなどデザイナーに広く知られる存在に。「社長の堀江勝人は、故郷である宮崎県の西都市に“株式会社ウイント”を設立しましたが、富山県総合デザインセンターの初代所長である黒木靖夫氏も同郷。黒木氏に高岡オフィスパークへの誘致企業として(株)日南を挙げていただいたことが、進出のきっかけです」と語るのは、(株)ウイン・ディー専務取締役の落合三郎氏。黒木靖夫氏はソニー株式会社でウォークマン開発プロジェクトのリーダーを勤めた後、富山県知事だった中沖豊氏とのつながりで富山インダストリアルデザインセンター(現在の富山県総合デザインセンター)所長に就任、デザイナーと地域産業を結びつける取り組みを行った人物。高品質なモックアップ製作によりプロダクトデザインの世界で地位を築いていた(株)日南は、北陸地方のデザインと産業に貢献するという意義のもと、進出を決定。平成11年に中部日本事業本部として操業を開始、平成12年に(株)ウイン・ディーが設立された。

(左)落合三郎専務取締役。/(右)社屋の外観。
(左)落合三郎専務取締役。/(右)社屋の外観。

顧客のシビアな要求に、万全の設備・体制と情熱で応える

(株)ウイン・ディーで製作しているのは、携帯電話やデジタルカメラなどのモックアップ。「送られてきた図面に対し、内部をどのようなパーツに分けていくかを検討して3次元CADでモデリングし、マシニングセンターで削り出すなどして部品を作り、磨きなどの表面処理を行い、組立て可能かどうかテストし、顧客に送り出すまでが一連の流れ」と説明するのは開発部課長の岡英明氏。高岡市に隣接する射水市出身ながら自身も東京で大手音響機器メーカーのデザイナーとして勤務したという岡氏は「近年はデザイナー自ら3次元のデータを作成することもあり、作業は効率化しています。しかし納品までの期間が非常に短くなってきており、連日深夜になることも」と語る。しかし(株)ウイン・ディーでは25台の3次元CAD/CAMと複数のマシニングセンターを擁し、顧客のシビアな要求に応えている。(株)日南の方針でほぼ全社員を地元採用としているが「まじめで黙々と働く社員が多い。一週間、磨き作業を続けている社員もいます。根気がなければ続かない仕事」と落合氏。「1つの製品をチームで仕上げることが多い」とあってチームワークも必要。平均年齢27歳の若い職場だが、作業に打ち込み、また作業ごとにチームで相談し工夫をこらして要求をクリアしていく社員たちのひたむきな表情が印象的だ。
「夜中まで灯りが点いているし、機械はあるが工場のように出荷するものはないし、周辺からは“何の会社だろう”と思われているかもしれませんね」と落合氏。東京からの仕事が70〜80%を占めるが「交通アクセスもよく、納品物も翌日には届きますから便利なものです」。岡氏も「電子データのやりとりが主なので距離の問題は感じません。むしろ離れていることで集中できる。広くゆったりした設備のほうが創造性も高いようです」と語る。

3次元CADでモデリングしたデータをマシニングセンターで削り出す。
3次元CADでモデリングしたデータをマシニングセンターで削り出す。

ものづくりの精神は共通。地元で進むコラボレーション

「“他では無理でも、日南さんなら何とかしてくれる”といって依頼される件も多い」と岡氏。積み上げた技術を活かし、立地10年目のこの地でも企業から頼られる存在に成長してきた。「地元企業のモックアップ製作も増えています」と語る落合氏。交流が深まりつつある現在、落合氏が「岡のようにデザインができる者もいるので、地元産業のお手伝いもできれば」と語る一方、岡氏は「富山県や石川県は、伝統工芸はもちろん、サッシや仏具など工業製品の製作が盛んな場所。個人でやっている製作所でも、東京では見つけられないようなすごい技術を持っている方がたくさんいて、助けていただくことも多い」。市の政策でもある『ものづくり・デザインのまちづくり』は、現場でのコラボレーションによって着実に進行しているようだ。課長の室大介氏も「めっき処理は高岡市のめっき屋さんに頼んでいますが、ここには(株)日南のグループ全社で依頼しているほど。技術はもちろん、小ロットでも受けてくれます」と進出のメリットを実感している。「歴史に磨かれてきた技術を持つ企業と一緒に仕事をするのは楽しいですね」と落合氏。
近年では県主催のデザインコンペや金沢美術大学などの製作を手伝うこともある(株)ウイン・ディー。「我々の仕事は、デザインに込められた気持ちをどれだけ汲み取り、最高の形にできるか」と岡氏。デザインとプロダクトを結ぶこうした“精神”に支えられ、高岡は日本を代表する“ものづくりとデザインのまち”へさらに存在感を増してくるだろう。(2010年8月取材)

モックアップの組立・部品加工を行う工房。
モックアップの組立・部品加工を行う工房。

▼団地の詳細情報
高岡オフィスパーク

 

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