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IKK東北株式会社(江刺中核工業団地)

世界と戦える最先端の半導体製造装置で、地域の産業発展に貢献

世界屈指の半導体メーカーに、製造装置を供給しているIKK東北株式会社(以下、IKK東北(株))。同社が本社及び工場を構える江刺中核工業団地は奥州市江刺区の中心から約1.5kmの丘陵に位置し、半導体などの電子部品産業のほか幅広い業種の企業が立ち並ぶ。平成7年4月に稼働を始めたIKK東北(株)の工場は、2種類のクリーンルームを含む高度な生産機能を常備。精密機械の製造に欠かせない清浄な空気や、工業団地内での企業同士の交流が、同社の着実な進歩を支えている。

ノウハウなしで始めた半導体事業が、今や地域の産業基盤の一角に

奥州市は、水沢市、江刺市、前沢町、胆沢町、衣川村の5市町村が合併し、平成18年に誕生した新しい自治体である。地域の歴史は古く、8世紀には蝦夷の軍事指導者アテルイ、11世紀には平泉を造営した奥州藤原氏一代目の藤原清衡を輩出するなど、独自の武家文化を育て、南部鉄器などの特産品でも知られている。
江刺中核工業団地は、岩手県南の産業拠点として造成された工業団地である。総面積161haを有し、陸上競技場や野球場等の公園や職業訓練校(江刺高等職業訓練校)を有するなど、企業同士の交流や人材供給を後押しするしくみを備えている。ふるさと融資、地域雇用開発助成金など、岩手県内でもトップクラスの優遇制度を利用することが可能で、首都圏からも遠くない東北エリアでの展開を考える企業のニーズに応えている。
同地で平成7年に創業したIKK東北(株)は、半導体産業には初参入というフレッシュな企業であるが、大正11年より愛知県で金属部品や表面処理装置の製造業を営んできた親会社(伊藤機工株式会社)には長年に亘る工場経営の実績があった。国内半導体製造装置メーカーの大手である東京エレクトロン株式会社<以下、東京エレクトロン(株)>が、増産計画の実施に伴って半導体製造装置の製造を伊藤機工に依頼したことが、IKK東北(株)設立の契機となったのである。「東京エレクトロン(株)様から全面的な技術支援を得てスタートしました。工場建設地として江刺中核工業団地を選んだのは、やはり協力企業である東京エレクトロン(株)様が同じ団地内を製造拠点としていたことが最大の理由です。」と語るのは、代表取締役社長の伊藤誠治氏。クリーンルームなどの特殊な環境を工場内に配備しながら、同社は15年でしっかりとこの地に定着してきた。

(左)伊藤社長。/(右)工場外観。
(左)伊藤社長。/(右)工場外観。

過酷なシリコンサイクルを、粘り強い労働力で乗り切る

半導体製造は大まかに約10工程に分けられるが、IKK東北(株)は、そのうち最も初期段階に行われる「成膜」に関わっている。これはシリコンウェハーに特殊なガスを吹き付け、化学反応を起こさせることによって膜を形成するというプロセスで、そのプロセスガスを供給し、さらに無毒化して排出させるための装置を製造しているのがIKK東北(株)である。ガスを媒介とする成膜装置を製造する上で、最大の敵は空気中の塵。そこでIKK東北(株)は、クリーン度1000およびクリーン度100という2種類のクリーンルームを備えている。クリーン度100とは、1立方フィートあたりの浮遊粒子がわずか100個という清浄度。外部から塵の流入を防ぐため、部屋内は1.2気圧の陽圧にして、気温も約23℃に保っている。クリーン度を高い水準に保つためには外気の清浄度も必要であり、江刺の清浄な空気が大いに役立っている。
国際的な競争が激しい半導体関連の製造業は、設備投資の見極めが難しい。「初期投資に工場の建設費を含めた数千億円の投資が必要であるということに加え製品価格相場などの影響で突如発注がキャンセルされるリスクもあります」とは伊藤氏の弁。さらに半導体業界にはシリコンサイクルと呼ばれる好況不況の波があり、ほぼ4年ごとに大きな冷え込みがあるという。しかしながら人材を大切にする同社は、社員の粘り強さにも支えられながら不況を乗り越えて着実に成長し、今では装置の出荷台数が順当なレベルに達しており、これからさらに増産の計画もあるという。

工場の心臓部であるクリーンルーム。
工場の心臓部であるクリーンルーム。

地元自治体の協力体制と活発な企業協議会の交流が、立地成功の鍵

「初めてこの地に進出する時は不安でしたが、創業時の求人では江刺市(現奥州市)商工観光課から心強い協力を得てスタートを切ることができました」と、伊藤氏は15年前を振り返る。奥州市は企業支援活動の一環として、岩手県全域の高校に広く就職を働きかけ、新規招致企業と一緒に高校訪問も実施している。最近では岩手大学や秋田大学との産学連携も活発化するなど、自治体からのバックアップは十分だ。また、工業団地内で組織する企業協議会などを通じて、近隣の企業と情報交換できることもこの地の魅力である。工業団地内ではお互いの工場見学などの交流も活発で、企業協議会の連携が人材の確保に役立つこともある。景気の影響を受けやすい産業も、こうした人材獲得方法のしくみを生かすことで、しっかりと地元に根付いていくはずだ。
また、質の高い人材も江刺の強みである。「当社の工場で働く従業員はみな現地採用です」と語るのは、工場長の菅野新一氏。「当社に骨を埋める覚悟の若者も多い中で、生産ピーク時の平成19年に増員した計28名の雇用を現在も維持している実績に誇りを感じます」と笑顔で語る。細かい作業が多く、熟練が必要な職場であるからこそ、視察に来る人たちはみな、仕事に打ち込む東北人の真面目さを絶賛してくれるのだという。
「地元で働きたいと願う若い層にとって、今やこの工業団地に勤めることはひとつのステイタスになっています」と伊藤氏。創設16年目を迎えたIKK東北(株)は、IT社会を支える新しい産業の波を発信する江刺中核工業団地のシンボルと言えるだろう。(2010年7月取材)

組み立て作業場。特殊な装置であるため組み立てには熟練が必要。
組み立て作業場。特殊な装置であるため組み立てには熟練が必要。

▼団地の詳細情報
江刺中核工業団地

 

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