Project03 高度化事業 高度化事業~地域のつながりを「強み」へ~

Prologue)高度化事業とは?

高度化事業とは、複数の商店が集まってショッピングモールを作る、あるいは工場が集まって工場団地を作る、このような計画に地方自治体(主に都道府県)と中小機構が協調して融資を実施する事業である。1つの店舗のみで営業するよりも、多くの店舗が集まり商店街を形成した方が地域の人々の利便性も向上し集客につながる。また、製造業でもそれぞれの工場が集まって事業を行う方が配送などの手間を省くことができ、生産性が向上する。
高度化事業は昭和42年から現在までに約5兆円もの融資実績があり、全国で約2万先もの商店街や商業施設、工場団地などの整備に貢献してきた。また、近年では東日本大震災や、熊本地震などの災害時にも多くの無利子融資が実行され、復興への支援も行っている。
高度化事業とは、企業単体への融資ではなく、主に企業が集まった「組合」に対する融資である。融資金額に上限はなく、市場金利より利率が低く、かつ長期間にわたる返済が可能なため、民間金融機関では行いにくい条件で借入れることができる制度融資でもある。この高度化事業の流れや職員の役割について説明する。

(※1)
ハゥトゥー高度化

1)高度化事業説明会の実施

高度化事業の流れとして、はじめに、事業の活用を検討している事業者の方達を対象に、制度の説明会・勉強会を実施する。ここでは、高度化事業の制度全般と、どのような共同事業が対象となるのか、過去にどのような活用事例があるのかなどを中小機構職員が説明を行う。また、その際に事業者からも計画の内容や投資規模、建物設備の着工スケジュール等についてヒアリングを実施し、事業者からの質問などにも回答する。
本説明を担当している宮本は、「高度化事業の活用をご検討されている方がいれば、その地域に赴き制度の説明を実施するのが私の仕事です。説明の際には長期・低利・固定金利というような制度の良い面だけでなく、公的な資金を活用するために審査に時間がかかる点や、プロジェクトが過大投資にならないように、失敗事例も交えて説明をするように心がけています。また、過去にどのような事例があるか、審査のポイントなどの質問が来ることが多いので、過去の事例や関係法令について勉強して、説明資料の準備も怠らないようにしています。」と語る。

こうした制度の説明を受け、事業者側は高度化事業の事業計画書を作成する。実施計画の中身は事業計画、投資計画の詳細、図面、そして返済計画が盛り込まれている。

2)診断及び融資審査の実施

高度化事業は複数の事業者が共同で事業を実施することになるので、参加メンバーの思いや事業のベクトルをすり合わせ、メンバー間で共有することが重要である。そうした中で検討される事業計画の策定段階から中小機構は支援を行っている。共同事業の経験が無い事業者にも、企業連携支援アドバイザー(※2)を派遣し、事業の構想段階から参画し、客観的な立場から助言を実施することで事業実施計画の策定を支援している。
次に、出来上がった事業実施計画に対し高度化事業の制度や趣旨に適合したものか、投資計画は妥当なものか、「診断」を実施する。診断は、共同で融資を行う地方自治体の担当者とともに、中小企業診断士資格を持つ中小機構の職員、外部専門家などが行う。診断の内容は、中長期的なスパンで投資に対する効果があるか、地域への貢献が大きいか、償還能力があるかなどの点を事業計画の精査や現地調査・ヒアリングを通して確認するものである。
例えば、工場団地などの工業案件では、業界の中長期的な成長率や、投資による生産性の向上率などにも注視する。また、商店街アーケードなどの商業案件については、地域の中長期的な人口増減率や、投資による集客効果などに着目し診断する。このようにして行った診断を基に融資に向けた診断意見を提示し、事業計画に対しブラッシュアップを行う。

(※2)
企業連携支援アドバイザー派遣事業

3)都道府県との連携による融資後のフォロー

融資を実施した後は、融資先の管理に業務が移る。特に高度化事業は融資金額の規模が大きく、返済期間が長いため管理する期間も長期にわたることが多い。また、高度化事業は施設のリニューアルにも活用できるため、以前高度化事業を活用した工場団地や商店街から、設備のリニューアルのために再度高度化事業を活用したいという申し込みが来ることもある。
そして、融資先の中で当初の予定通りにいかず、返済計画が滞ってしまう融資先も存在する。そのような融資先に対しては、中小機構は都道府県と共同で経営改善サポートを実施し、プロジェクトチーム(中小機構職員、外部専門家、都道府県職員等)による支援を実施。中小機構の他部門や他の支援機関とも連携し、各企業・事業者への支援を行う事例なども存在する。

診断及び融資後のフォローを担当する職員である鈴木は中小企業診断士の資格を持つ。「全国の高度化事業の案件の診断業務や、高度化融資先の経営改善を担当しています。経営改善は大変なことが多いですが、事業者の方と一緒に取り組むことで成果が見えてくるのが嬉しいですね。例えば、あるショッピングセンターの経営改善で、惣菜部門や産直部門などの新しい取組みを提案し、計画作りを支援しました。このときは、事業者の皆さんが『本気で変わろう』と強い気持ちでがんばっておられたので、自分もどのように良い方向へ考えていくか知恵を絞りました。」と語る。

高度化事業のやりがい

宮本 有也

本事業は、『地域の産業集積を作る』事業です。商業・工業とも、一つの箇所に集まることで、効率性が上がり、それにより地域の雇用が増加します。そうした地域振興が、形になって見える、そこは大きなやりがいですね。そして、この事業を活用した中小企業の中には、全国規模の企業に成長する企業もあり、そういう姿を見ると励みになります。また全国の地域を飛び回ることも仕事の醍醐味。様々な地域で、その地域のよさに触れることは大きな刺激になります。

鈴木 学

高度化事業を活用した事業者の方が、20年後もそれ以降も存続しさらに発展していくために、自分が今何をできるのか、勉強することも多く大変な仕事でもあります。無謀な投資にならないように、現実にあわせた計画への修正提案などを行うこともあります。ただし、高度化事業は、お金を貸すだけでなく、事業者の方や地域の発展を支援するという制度という視点を忘れないようにしています。日本全国の地域経済の現場での仕事なので、大変なことも多いですが、そういった大変さも楽しんで一歩一歩進んでいける方、是非お待ちしております。

プロフィール

  • 宮本 有也平成13年入社

    高度化事業の担当を経て経理部門へ、その後関東本部での産業用地部門や近畿本部でのインキュベーション担当を経験。その後本部総務部門を経て、現職へ。全国で高度化事業の制度説明会での講師や、高度化事業の審査などを担当。

  • 鈴木 学平成17年入社

    中小企業総合展などのイベントの企画運営を経験後、共済事業を経て、中小企業大学校中小企業診断士養成課程へ派遣。その後中小企業庁出向等を経て高度化事業の担当へ。高度化事業に関する経営診断や、経営改善サポートなど全国で支援を実施。