【福島県】ハブ拠点の機能目指す

探訪よろず支援拠点 頼りになる相談所の素顔

クラウドファンディングも駆使
福島県よろず支援拠点 【所在地】郡山商工会議所会館 【コーディネーター】渡辺正彦氏 【サブコーディネーター】7人 【平成27年度(4〜12月)実績】
相談対応件数3061件、来訪相談者数808者

 

相談対応件数は前年度の倍以上

渡辺コーディネーター
「ハブ機能を持ち、それに対応する人材も育てることが強い願い」と話す渡辺コーディネーター

 「地元の商工会や商工会議所、金融機関など他の支援機関との連携により、当拠点への相談件数は大きく増えています」。福島県よろず支援拠点の渡辺正彦コーディネーター(61歳)はこう胸を張る。
 実際、平成27年度(昨年4〜12月)の相談対応件数は3061件と、平成26年度(平成26年6月〜平成27年3月)の1445件と比べ、9カ月間で前年度10カ月間の実績の2倍以上に達している。こうした支援実績は渡辺氏の経験によるところが大きい。
 渡辺氏は福島市を本拠とする東邦銀行で役員まで務め、数多くの事業再生やM&A(企業の合併・買収)の現場で指揮をとった。とくに、3軒の旅館を一体再生させた経験は「全国でも代表的事例となりました」(渡辺氏)。これに加え、福島大学の客員教授としてスマートシティの実装的研究を行うほか、県の中小企業診断協会の代表理事会長を務めるなど多方面で活躍し、県内経済界にも幅広い人脈を持ち、「他の支援機関との関係がよく、半分以上がこれら支援機関からの持ち込み案件」という。
 最近は、「金融機関からの経営に関わる重要な紹介案件が増えている」という。これは、福島市と郡山市、会津若松市の地方銀行、信用金庫、信用組合と毎月、創業を含めた経営相談会を開催している効果だ。今後は、県南地域の信金とも連携し、近く定期的に相談会を開く予定。これで全県をカバーする。

市町村からの相談も

 企業支援で心がけるのが「事業コンセプトから入り、具体的な事業展開方法まで計画案として見える化し、1件1件に全力投球すること」。例えば、県特産の織物メーカーからの相談には、長い歴史を持つことから、産業観光の視点までも取り入れて提案している。
 販路拡大や資金調達支援のツールとして特徴的なのが、インターネットによるクラウドファンディングを駆使している点だ。同拠点の支援第1号となったアニメ映像・ゲーム制作会社に対しては、廃校を利用したスタジオとミュージアム運営事業などについて、事業計画づくりから金融機関との橋渡しなどに加え、事業PRも考えてクラウドファンディングを提案。こうした取り組みがテレビや新聞に取り上げられるなど大きな成果を得た。
 昨年1月にはファンド運営会社最大手と連携し、「現在までに5社が事業を開始し、10件以上が計画中です」(同)という。さらに、福島発のファンド運営会社とも連携・支援し、こちらも数件のプロジェクトが進行中だ。
 「実は、市町村からの相談もあります」という渡辺氏は、国の重要政策テーマである地方創生への貢献から、創業支援にも力を入れる。「地方創生にはIターン、Uターンの起業家に頑張ってもらわなければ」と考え、昨年には同拠点の“卒業生”であるUターンの若手起業家らを招いて創業フォーラムを開いたところ、大人気だった。クラウドファンディングを含めた幅広い支援内容は、地方創生にもつながるわけだ。

補助金に頼らない自立型の事業支援へ

 渡辺氏がよろず支援拠点のコーディネーターに就任したきっかけは、県産業振興センターから要請があったとき、「東日本大震災という経験したことのない状況の中で、これからは補助金などに頼らない自立型の事業支援・再生が本格化する」と考えたためだ。こうした状況に対応した新たな支援枠組みの創設でも、渡辺氏は主導的役割を果たした。
 県は昨年10月、金融機関や商工団体、税理士会など600を超える県内すべての支援機関が連携した「オールふくしま中小企業・小規模事業者経営支援連絡協議会」を発足させた。福島相双復興官民合同チームが原発事故で避難指示が出た12市町村の事業者を支援しているのとは別に、同協議会は12市町村以外の事業者を中心に支援する。
 協議会は、税理士や信用保証協会など4人の委員からなる地域サポート委員会を県内7カ所に設置して支援方針を決定。ここでも支援が困難な場合は、渡辺氏が委員長を務める「オールふくしまサポート委員会」に上がり、よろず支援拠点が支援を引き受ける仕組みだ。
 今年から本格的な活動を始めるが、県全体が連携した支援体制だけに「全国のモデルケースともなり得る」と渡辺氏は強調。「他の支援機関と住み分けながら、その中のハブ(中枢)として支援モデル、ノウハウを積み上げ、県全体の底上げを図っていきたい」と、将来を見据えている。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成28年2月1日発行 第1161号