第7回 ブランド創る経営者が進化

小規模事業者の未来照らす 四国サイコーダイガクの挑戦
7人が独自の価値を発表
◆四国サイコーダイガクとは◆
四国の地域資源を生かした新商品・新サービスを開発して新たなビジネスを創出し地域経済活性化を目指す目的で、中小機構四国本部が平成21年5月に創設。毎年度、中小企業、農林水産事業者などを公募し、外部専門家らによる講習や中小機構専門家による個別サポートなどを約半年間にわたって実施。年度末に成果発表会を開いている。
 

四国サイコーダイガク祭開催

四国サイコーダイガク祭のようす
パネルディスカッション方式でブランドづくりについて語り合った四国サイコーダイガク祭

 中小機構四国本部は3月13日、約半年間にわたりブランドづくりに取り組んだ小規模事業者等が新ブランドを発表する「四国サイコーダイガク祭」を松山市で開催した。「ブランドとともに成長し続ける経営者とは」と題して基調講演したネイキッド・コミュニケーションズの吉田透氏から、参加者に対し言葉が送られた。
 「ブランドとは、他とは違う独自の価値で、ブランディングの基本は世の中に存在していなかった価値を提案する姿勢がまず求められる。その価値の根底には、経営者自身のぶれない“らしさ”(自分らしい顧客の愛し方)が必要不可欠。つまり、ブランドとは経営者の人格そのものと言ってもよい。進化しようと挑み続ける経営者こそが、ブランドを発展させることができる」
 続いて行われた参加者によるブランド発表では、蒲鉾、昆布、鱧(はも)など7人が新ブランドを発表した。その中で吉田氏の言葉を象徴するような参加者がいた。創業110年を超える石丸弥蔵商店(松山市)の石丸祥久氏だ。

消費者目線に立ちながらもぶれない姿勢でブランド化

石丸氏
いりこのブランド化に乗り出した石丸氏

 同社は、いりこ(煮干し)をはじめとした乾物の卸売・製造業を営む。石丸氏は神戸市の貿易会社で国内流通チェーンのPB(プライベートブランド)の企画や製造等に携わった後、2011年に同社に入社した。入社以来、五感を通して日々いりこと向き合うことにより、代々受け継がれてきたいりこの目利き技術を磨き上げてきた。また、仕入れから商品の開発、営業、在庫管理に至るまで会社のあらゆる業務に従事している。いりこには多様な価値があることから、若い世代には商品の選び方や調理法が難しいというイメージを持たれている。消費者の層をどう分類し、層ごとにどの価値を訴えるべきか、そして実は手軽な出汁素材であるという事実をどうすれば分かりやすく伝えることができるか、その答えを探すために四国サイコーダイガクへの参加を決めた。
 半年間、吉田氏から個別の支援を受けて石丸氏が気付いたことがある。「今の自社商品は、いりこのサイズや産地など訴求する点に統一感がなく、購入者にはいりこの知識があるという前提で商品の棚が構成されている。それがいりこを使うハードルを高くしてしまっていた」。
 そこで、いりこをまず食用と出汁用に分類し、出汁用をさらに初心者、中級者、上級者用に分けた。さらに商品を選びやすくするため、中級者用では、出汁の効き具合やメニューに応じて「あっさり」「濃厚」「煮込み使用」などネーミングやデザインにも工夫を凝らした。消費者目線に立ち、いりこの分類を見直すことができた根底には、同社の経営者がぶれずに、代々磨き上げてきた素材への頑ななこだわりと探究心がある。
 品質には絶対の自信があるいりこを、人々の用途に合わせてシンプルに紹介し、味わってもらう。「目利きの力」という独自の価値を活かした、石丸弥蔵ブランドならではの姿勢を示す新しいアプローチだ。
 石丸氏は、初心者用のいりこ商品群の名称を「ちゃんと和食」と名付けた。この名称には、出汁がある生活の豊かさを伝え続けるという石丸氏の覚悟が込められているようだ。
 この半年間で飛躍を遂げた石丸氏をはじめとする参加者たちの発表は、来場した約90人に刺激を与え、会場は四国地域が最高の場所になる期待感に溢れていた。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成27年5月1日発行 第1143号

─おわり─