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第21回 自社工場のムダに気づく【三条校/工場管理者養成コース】

人材育成の現場から 中小企業大学校受講者の横顔

 株式会社増子【事業内容】漬物、惣菜、魚類加工品の製造販売
【創業】大正10(1921)年
【資本金】1,200万円
【従業員】約120人
 工場管理者養成コース(三条校) 月3日×全6回の18日間にわたる研修で、工場の管理者・運営の中核を担う“人財”を養成する。演習や課題研究(ゼミナール)を交えた実践的な研修を通じて、顧客の求める品質、原価、納期を満たすための効率的な工場管理とその運営ポイントを理解してもらう。
 1回目と2回目の合間にゼミ担当講師が受講生の派遣元企業を訪問して現場をチェックし、受講生・上長と面談したうえで、ゼミで取り組む自社課題を決定する。

代表取締役社長 増子 潤一郎氏

幹部を相次ぎ派遣、価値観共有

 

本で得た知識が一つにつながった

増子社長
主力商品のたくあんを手にする増子社長

  「素晴らしかった。工程管理、原価管理、品質管理など、それまで本で学んだものの今一つイメージがつかめなかった言葉に1本の芯が通ってつながったような感じがした」
 北海道から沖縄まで全国に販路を持つ漬物製造大手の増子。昨年5月に5代目社長に就任した増子潤一郎氏は、中小企業大学校三条校の「工場管理者養成コース」を受講した2012年度当時のことを振り返る。
 月に3日ずつ6カ月に及ぶロングラン研修である同コースはそれまで三条校にはなかったので、増子氏は第1期生になる。同コースの特徴の一つである自社分析に加え、三条校の場合は担当講師が受講生の企業を訪問して工場診断も行うなど、より実践的だ。増子氏がちょうど統括本部長に就任したばかりの頃で、一度も経験したことのない生産部門も管轄することになったため、自ら志願して受講したのだという。
 「修了後に、当社の工場を改めて見たとき、『うわっ、これはムダだらけだ』と思った」。増子氏は早速、生産部門の幹部による「生産会議」を創設して自ら主宰。三条校で学んだ動作分析などの手法を用いて生産工程のムダな部分を指摘し、改革に乗り出した。ところが、暖簾に腕押しの状態だったという。

改革に消極的な幹部が、受講後に変化

工場管理者養成コースの受講風景
工場管理者養成コースの受講風景(三条校)

 考えてみれば、職人気質が根強く残る老舗会社の工場だ。現場を知らない若造が何を言いだしたのかと、白い目で見られたのだろう。だが、「100人近い(当時)社員を抱える会社になったのだから業界特有の古い体質を脱し、できるだけ作業を標準化して、価値観、技術、知識を共有化する必要がある」と考える増子氏はひるまなかった。
 自分と同じ三条校の工場管理者養成コースをその幹部たちにも受講してもらうことにしたのだ。第2期の2013年度に3人、第3期の2014年度に1人、第4期の今年度も1人を三条校に派遣した。その結果、「受講する前と後では、(幹部らの)動きがまったく変わった」。受講した幹部の発案で、生産を中止して製造工程も廃止した商品もあるという。
 経営理念の一節に「人材の育成を通じ、社会に貢献する」と謳い、社是7箇条の筆頭に「人材の育成と能力の発揮を促進する」を掲げる増子は、もともと人材教育に熱心で、三条校との付き合いも長い。1994年に前会長、前社長ら7人がそれぞれ各種の研修を受けたのを皮切りに、これまで延べ61人が受講。増子氏が最初に校門をくぐったのは係長時代の2005年で、ロングラン研修の「経営管理者養成コース」の第12期生だ。

新たな試みも準備中

 現下の増子の業績は順調。2018年度(3月期)の売上高を2014年度比20%強増やす5カ年計画を推進中だが、2年目の今年度は2桁の伸長が見込まれている。一昨年には原材料の大根の不作に見舞われたが、当時副社長だった増子氏が全国を飛び回って調達。供給責任を果たすとともに、そうした事態に備える態勢も構築中だ。さらに、食品安全マネジメントシステム「ISO22000」の導入準備も進めている。
 もっとも、漬物市場は縮小傾向にあり、先行きは厳しい。「成長を維持するにはシェアを上げるしかない」と増子氏は見ており、これからも生産現場をはじめとするコスト管理の徹底が会社の命運を握る。「社会、お客さまに対する価値と社員にとっての価値の両方を創出しながら利益を出す」。増子氏が目指す理想の会社像だ。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成28年2月1日発行 第1161号