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第16回 人材は最大で唯一の財産【直方校】

人材育成の現場から 中小企業大学校受講者の横顔

 株式会社イシマル【事業内容】OA機器・IT機器・事務機・事務用品の販売、システム開発・運用など
【創業】明治16(1883)年
【資本金】5,000万円
【従業員】168人
 中小企業大学校直方校 福智山ろくの豊かな自然に恵まれた福岡県直方市にあり、九州の北部4県(福岡、佐賀、長崎、大分)の中小企業経営者、経営幹部、中堅・若手リーダーなどの経営・管理スキル向上のため、中小企業のニーズに合わせた多様なカリキュラムを提供している。

代表取締役 石丸 利行氏

直方校は知識を磨く“専属機関”

 

企業の平均寿命の4倍以上の132歳

  かつて企業の平均寿命は“30年”という調査結果があった。時代は常に変化する。ビジネスモデルも同様。旧態依然とした経営を続けていれば、企業の寿命は30年で尽きるとの分析を調査は伝えていた。だが、イシマルは今年132歳。積極的な経営革新への取り組み、活気ある社内と行動力ある社員の姿からは、寿命の存在など感じさせない。
 1883年、長崎市内で石丸文具店が創業された。後に石丸文行堂に商号を変更し、現在も個人向け販売として九州北部地域で6店舗を構える。1973年に企業のOA化に対応して法人部門を独立させ、現在のイシマルが誕生した。働き盛りの42歳になる。

経営理念に人が財産であることを明文化

 イシマルの強さは、歴史の重みが裏打ちする信用にある。地域社会を重視する事業活動の積み重ねが信用を培い、その上で展開するIT(情報技術)環境への対応など経営イノベーションが“企業老化”を防ぐ体質を創り上げてきた。社員を大切にする考え、人材を育てる実行力が備わっているからだ。
 4代目となる石丸利行代表取締役は、「人材こそが最大かつ唯一の財産、との認識に立ち、社員に喜ばれ、社員が誇りとし、社員が家族に感謝される会社になる」と強調する。これは経営理念に掲げたビジョンのひとつで、企業が成長する上での原点である。
 オフィスにITの波が押し寄せてきた90年代後半、「新しい会社作りを社員とともに考え、21世紀を勝ち抜くための経営理念を策定した」と説明する。3年をかけ2001年にスタート。ここで人が財産であることを明文化した。

繰り返しの研修とリポート提出で能動性を養う

直方校の研修風景
直方校の研修風景

 経営理念を実践するのは社員だ。当時、人材育成を担当していた高橋憲一取締役相談役は「人間の幅を広げること、技術力を高めること、知識を知恵に替えること、などの考え方を備えた人材を育成する」との方針で、中小企業大学校直方校での社員研修を本格化させた。派遣する社員数は毎年30〜40人規模で「同じ社員を繰り返し研修させ効率的に力を付けさせた」という。
 終了後はリポート提出が義務。「同じ研修を受けても視点が違うせいか、三人三様の内容が出てくる。ピントがずれている場合は、厳しいコメントを返し再提出させている」とおざなりの研修姿勢は許さない真剣さがある。こうして直方校の多様なカリキュラムに参加し、新しい知識の習得や世の中の変化を感じ取ってくる社員が増え「自分たちの考えで提案してくるようになった。確実に力がついてきた」と石丸代表取締役は、研修の成果を語る。社員の能動性、創造性が養われてくることで、もはやトップダウンも不要になると思えるほどだ。

顧客ニーズを探る力を養う

石丸代表取締役(中央)を囲む長男の石丸太望社長室長(左)と高橋相談役
石丸代表取締役(中央)を囲む長男の石丸太望社長室長(左)と高橋相談役

 メーカーから供給を受け、商品を顧客に届けるビジネススタイルは、もはや通用しない。顧客ニーズを探り、メーカーへフィードバックする、従来の一方通行ではなく双方向性をもたなければ、激戦する事業環境に対応できなくなる。「今後も自分で考え行動する力を養うことに注力していきたい」という。
 経営理念を作成した2001年から、毎年予算化し定期的に社員を研修へと派遣する。「直方校は専属の研修スクールと位置付けている」と石丸代表取締役は言い切る。「研修内容以外にも首都圏まで派遣しないでいい近さと、料金の安さも魅力。研修コストが負担では続けられないから」と高橋取締役相談役は付け加える。
 今後は、自らモチベーションを高めていく「自己啓発的なカリキュラムが欲しい」と両氏は口をそろえる。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成27年5月1日発行 第1143号