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第12回 「もの創り」の理念発展へ【三条校/経営管理者養成コース】

人材育成の現場から 中小企業大学校受講者の横顔

 株式会社有本製作所【事業内容】建設用・建築用金属製品製造
【創業】昭和27(1952)年
【資本金】1,000万円
【従業員】29人
 経営管理者養成コース(三条校) 経営幹部、後継者、管理者として、経営に関する基礎的な理論・実務的知識を体系的に習得し、自己の革新と自社の経営革新を実現するために必要とされる総合的な経営マネジメント能力を身に付け、企業経営の中枢を担う人材の育成を狙いとする。同コースでは、実務経験豊富な全国レベルで活躍する講師陣が体系的なカリキュラムに沿って、十分な時間をかけて講義と演習指導を行う。少人数指導のゼミナール(自社課題研究)では、仮説検証型の戦略策定法により実行性の高い改善策を立案する。

代表取締役 有本 哲雄氏

「組織化した人材」を承継

 

後継者をしっかり育てながら着実に成長を続ける

 新潟県三条市の主要産業である金属加工のルーツは、江戸時代の和釘づくりであるとされている。鍛冶、金物生産へと発展し、包丁、はさみなどの利器工匠具が製造された。そこで培った鍛造、研磨などの技術を基に、昭和に入り作業工具の製造を開始。戦後、大阪と並ぶ作業工具の二大産地となった。
 販路先としては海外向けと国内ホームセンターなどの量販ルートが中心だ。近年は安価な海外製品との競合などにより、規模の縮小や後継者不足で事業の継続が困難な企業が増えているという。
 そうした逆境を跳ね返し、後継者をしっかりと育てながら、着実に成長を続けている企業がある。三条市郊外の藤平工業団地に本社工場を置く有本製作所もその一つだ。

後継者として意識するようになったきっかけ

 同社は昭和27年に三条市の旧市内で創業。溶接技術を駆使して馬具などの製造からスタートし、農機具やタイヤチェーンなどの製造・販売へと事業転換を進めた。昭和61年に同工業団地に移転し、ペット関連製品の製造に着手。平成4年に現代表取締役の有本哲雄氏が創業者である父親から経営を引き継いだ。平成9年には建築関連分野に参入し、現在の主力製品である換気フードの生産・販売に乗り出している。
 有本氏が社長に就任したのは40歳の時。大学を卒業して入社したばかりの頃は、いずれ会社を継ぐのだろうと漠然と思っているだけだった。それが後継者として明確に意識するようになったのは青年会議所活動によるところが大きいという。多くの仲間に恵まれ、「事業として会社を経営していく自信ができた」と当時を振り返る。

当初乗り気でなかった研修だが

経営管理者養成コースでの研修風景
個別指導のゼミナール方式により、学習成果を高める(経営管理者養成コースでの研修風景)

 同社は現在、有本社長を筆頭に、長男の裕太氏が営業・業務担当の専務取締役、社長の夫人が総務・経理担当の取締役、長女が広報・品証担当の取締役と家族で経営を支える。製造現場はプレス・溶接部門の「製造第一グループ」と洗浄・梱包出荷部門の「製造第二グループ」の2部門があり、それぞれの部門を管理する2人のマネジャーがいる。従業員は全部で29人だ。
 有本社長が中小企業大学校三条校の研修に最初に送り込んだのは裕太氏だ。平成24年9月から翌年2月までの半年間、毎月4日間のペースで経営に関する理論や実務的知識全般を学ぶ「経営管理者養成コース(第19期)」を受講した。
 裕太氏は当初、乗り気ではなかったそうだが、優れた講師や業種・立場の異なる受講生との交流を通して、受講後は「すっかり研修に対する考え方や仕事への取り組みが変わった」と有本社長は目を細める。

ダメもとでやれ、失敗してもいい、失敗すれば一歩先に進める

有本社長(右)と専務の裕太氏
三条校での学びで「事業承継は大丈夫」と固い握手を交わす有本社長(右)と専務の裕太氏

 その後、今年までの2年間で部門マネジャーをはじめ延べ22人を三条校の「品質管理」「組織活性化」「製造現場改善」などの研修に相次ぎ派遣。その結果、有本社長は社内の雰囲気や仕事に対する社員の意識に徐々に変化が表れてきたと感じている。「ダメもとでやれ、失敗してもいい、失敗すれば一歩先に進める」(有本社長)との思いが通じつつあるのだ。
 有本社長は「(後継者である裕太氏に)“組織化した人材”を引き渡したい」と人材育成の狙いを強調。「(裕太氏を中心に)“もの創り”の理念を発展させていってほしい。そのためには今は失敗を恐れず、自分の思うように行動して欲しい」と熱く語る。
 一方の裕太氏も「わが社はプレス屋だが、幸いなことに地域を見れば多くの業種がある。地域の仲間たちとそれぞれの“強み”を活かしたもの創りを目指したい。自社だけでなく地場を発展させていきたい」と大きな夢を描いている。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年12月1日発行 第1133号