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第9回 あえて若手社員を派遣【人吉校/経営管理者養成コース】

人材育成の現場から 中小企業大学校受講者の横顔

 有限会社原農場【事業内容】農産物の生産・直売所の運営(小売業)
【創業】平成8(1996)年
【資本金】1,000万円
【従業員】25人
 経営管理者養成コース(人吉校) 経営幹部、後継者、管理者として、経営の理論・実務的知識を体系的に習得し、自己の革新と自社の経営革新を実現するための総合的な経営マネジメント能力を身に付け、企業経営の中枢を担う人材の育成をねらいとする。  本コースでは、実務経験豊富な全国レベルで活躍する講師陣が体系的なカリキュラムに沿って、十分な時間をかけて講義と演習指導を行う。さらに、少人数指導のゼミナール(課題研究)では、仮説検証型の戦略策定法により実効性の高い改善策を立案する。

代表取締役 原 靖氏

成長ぶりに目を見張る

 

「まるで人が変わったよう…」若手社員が成長

原氏(右)と井上氏
「食の安全安心を笑顔でお届けする」原氏(右)と井上氏

 「まるで人が変わったように成長した」
 若手社員の井上博貴氏(28歳)の仕事ぶりに、原農場の原靖代表取締役は目を見張った。井上氏は中小企業大学校人吉校の平成25年度経営管理者養成コースを修了し、現場に戻ったばかりだが、「研修を受ける前に比べ、仕事に取り組む姿勢が明らかに前向きになった」と感じたのだ。
 熊本県南関町で農産物などを生産・販売する原農場は、これまでも若手社員を中心に、中小企業大学校に積極的に社員を送り込んでいる。原氏自身が平成15年から人吉校の研修を受講し、「もっと若い時から研修を受けておけばと悔やんだ」経験があるからだ。
 社員を採用するときに、「5年後には当社を卒業して、自分で業を起こせ」と伝えているだけに、「独立しても迷わないように、経営管理や仕事のノウハウを学ばせてあげたい」との思いも背景にある。

バラ園、塩トマト、野菜果物の直販と、10年をキーワードに変化

 原氏は、農協に4年間勤めたあと、昭和60(1985)年に「原バラ園」を開業して農業を事業化した。「一つ仕事は10年」という考え方から、トマト栽培に転向し、「塩トマト」を商品化して大手流通業者との直接取引を実現。平成8年に法人化し、現在の原農場を設立した。
 次の10年に当たる平成19年には、就農当時からの「自分で値付けをしたい」という思いから、地物野菜や果物などを直販する「特産品センター なんかん・いきいき村」を九州自動車道南関インターチェンジ近くにオープン。自社栽培農産物を「畑の天使」というブランドで売り出すとともに、地元の650軒の農家と契約し、生産者の顔が見える新鮮な野菜を提供することで、買物客を楽しませている。
 また、週に一度ずつ福岡市と熊本市で、商店の休業日の駐車場を借りて、採りたての野菜をテントで販売する「農家マルシェ」も展開、常連の主婦客から好評を得ている。

「マルシェの運営」を実際に任せ、生の「研修の課題」に

人吉校での研修風景
人吉校での研修風景

 井上氏が受講した中小企業大学校の経営管理者養成コースは、ある程度の実務経験がある人が対象だ。しかも、7月から12月まで毎月4日間を研修のために割く必要がある。このため、井上氏は当初、研修についていけるか不安を感じており、人吉校の研修担当職員も途中で投げ出さないか心配していた。
 ところが、あえて実務経験の浅い井上氏に白羽の矢を立てた原氏は、研修期間中に「農家マルシェ」の運営も井上氏に任せることにした。そこで、職員が助言し、ゼミナール課題を「農家マルシェの売上向上策」に決めた。井上氏は「策定した計画の仮説と検証を繰り返していくうちに、少しずつ自信がつき、アイデアが出るようになった。現場で実践したいことが増え、目の色が変わっていった」と振り返る。他の受講者や講師陣とも積極的に交流するようになり、時には悩みを聞いてもらう機会も得て、人間的にも成長できたという。

研修を終えて、より積極的に、楽しみながら仕事を

 職場に戻ってからは、「農家マルシェ」を盛り上げるため、原氏も巻き込んだイベントを矢継ぎ早に提案。顧客からの激励や、原氏の評価が自信につながり、より積極的に、そして楽しみながら仕事ができるようになった。
 「いきいき村」をオープンして5年。売り上げを伸ばす工夫など課題は明確だ。井上氏の意気込みと全社員一丸となって「いきいき村」を盛り上げていこうとする社内の空気に原氏は気づいている。原氏は、期待を込めて井上氏の背中を「ポン」と推し、今年も人吉校の経営管理者養成コースに社員を派遣すると言い残して、買い物客らでにぎわう店内へと足早に向かって行った。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年3月1日発行 第1115号