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第13回 加賀茶の味と香りを研究【丸八製茶場】

伸びる!産業の先駆者たち─インキュベーション施設で事業化に挑むベンチャー

若手経営者と研究会にも活用─いしかわ大学連携インキュベータ─

 

丸八製茶場
【創業】1863年(設立1954年10月)
【資本金】2,000万円
【事業内容】日本茶の製造販売
 
いしかわ大学連携インキュベータ(i-BIRD)
【開設】2006年9月
【居室】試作ラボ4室、ウェットラボ33室、ドライラボ5室、スモールオフィス3室
 

 

 江戸時代後期、大聖寺藩(加賀藩の支藩)は農民に対し製茶奨励策を命じた。ここから加賀地方(石川県)に茶畑が広がったという。かつては加賀茶で知られたお茶の産地であるが、現在は加賀市打越町で生産されるだけ。この流れを戻し、全国から注目される加賀茶をつくるため、味と香りを探求する取り組みが始まった。

倒産寸前を乗り越えた過去

献上加賀棒茶
常識を覆した「献上加賀棒茶」が主力商品

  加賀市の老舗である丸八製茶場は、いしかわ大学連携インキュベータ(i-BIRD)開設と同時にお茶の研究に活用するため入居した。同社6代目代表の丸谷誠慶代表取締役(37歳)は「以前から土壌分析などを大学に依頼していたので、ここなら隣接する大学、工業試験場と連携しやすい環境が得られます。良質な茶葉が育つ土壌の分析や、味、香りに関する成分分析が目的です」と語る。
 創業は文久3(1863)年。153年の歴史に甘んじることなく、時代に対応した取り組みを追求する。経営危機を乗り越えた経験があったからだ。「高度成長期に海外の安い茶葉を輸入し加工する大量生産・大量販売をした時期がありました。黙っていても配達すれば売れた時代です。戦略を考える必要がない経営など長く続くわけがなく、次第に売り上げが落ち、応援してくれる人もほとんどいない状態になりました。倒産寸前となるまでの厳しい経営になったと聞いています」という。
 この危機を転機として、顧客から認めてもらえる取り組みを開始することになった。きっかけになったのは、ある食品コンサルタントとの出会い。食の安全・安心の必要性についてアドバイスを受け、力を入れる。「今では当然のことですが、誰も問題視しない30年前のことです。それと来県された昭和天皇に加賀棒茶を献上したことで、ブランド展開を始めることになりました」と語る。

常識を覆す一番茶による棒茶

丸谷代表取締役
「お茶の美味しさ、香りを科学的に評価したい」と話す丸谷代表取締役

 「天皇陛下の来県に際し、陛下が好まれるほうじ茶の注文が入りました。その時、祖父と父が工夫して、常識を覆す一番茶による棒茶を開発。『献上加賀棒茶』の名称でブランド化したのです」と話す。
 お茶の葉は、新芽を摘み取ってから1カ月半で再び芽を出し二番茶となる。さらに芽を摘むことで三番茶ができるが、摘み取りが遅くなるほど渋み、苦みが強くなるので、ほうじ茶などに加工するのが一般的。さらに葉とともに摘み取られる茎だけを使えば、安いお茶ができる。つまり、ほうじ茶は安く品質の悪いお茶というイメージが根付いていた。この考え方を根底から変える商品としたのが「献上加賀棒茶」だ。
 発売当初は見向きもされなかったが、雑誌に掲載されるなどで少しずつ認知度が高まり、現在は主力商品にまでなっている。いま求めるのは「お茶の客観的な指標です。お茶は、茶葉の状態や焙じ方で味や香りが変わります。焙煎時の火力など条件を同じにしても味と香りが同一とは限りません。現在は官能評価で美味しさが決められますが、科学的な評価ができれば品質向上につながります」という。

地域で加賀茶を全国にアピール

 もうひとつ、i-BIRDを拠点として石川県茶商工業協同組合の若手経営者7人と「加賀茶研究会」を結成し、加賀茶を全国に浸透させるための勉強会を毎月開催している。
 「味と香りの評価基準だけでなく、地元産のお茶を使いたいので、栽培農家と連携して土壌の研究などを進めています。地域で加賀茶を全国にアピールしたいと考えています。そのためにもi-BIRDを最大限に活用していきます」という。

 

いしかわ大学連携インキュベータIM
鈴木 浩吉 氏
産学官連携をサポート
 
鈴木浩吉氏

 いしかわ大学連携インキュベータは、金沢大学、北陸先端科学技術大学院大学、金沢工業大学、石川県立大学の4大学が生み出すライフケア、医療、環境、食品など研究成果の事業化とベンチャー企業の創出を目指して設置されました。施設は県立大の敷地内で、大学所有の最新研究機器の利活用が可能です。
 インキュベーションマネージャー(IM)の役割は、研究開発にかける人材、資金、時間を持てない中小企業などの企業ニーズを拾い上げ、大学とマッチングさせていくためのサポートにある、と考えています。この取り組みでは大学の研究シーズと企業ニーズを結びつける大切さを痛感しています。入居企業向けには、支援制度の説明会や情報提供、新事業に結び付けるためのセミナーの開催、支援施策を活用した全国の先進事例を紹介するなど、企業と大学の連携を進めています。
 私自身は、都市銀行で約30年間、融資、経営指導、財務分析などに携わり、その後、長崎県産業振興財団にて起業から事業化、株式公開まで企業の成長段階に合わせた支援を行ってきました。これらの経験を生かして企業のニーズ発掘に腐心しつつも的確な経営支援を行っていきたいと考えています。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成28年1月15日発行 第1160号

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