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第9回 独自の新薬候補が事業化段階【エヌビィー健康研究所】

伸びる!産業の先駆者たち─インキュベーション施設で事業化に挑むベンチャー

創薬シーズの探究で差別化─北大ビジネス・スプリング─

 

エヌビィー健康研究所
【設立】2006(平成18)年7月
【資本金】5925万円
【事業内容】新薬開発研究の初期段階に特化した創薬
 
北大ビジネス・スプリング
【開設】2008年4月
【居室】ウェットラボ計31室
 

 

研究風景
創薬シーズ探究の研究風景

 「製薬大手が手を着けていなかった分野の創薬シーズ(種)の探究を手掛け、それが事業化段階に入りつつあり、成果が出てきた」。こう話すのは、エヌビィー健康研究所の高山喜好代表取締役だ。
 高山氏が「本命」とする生体の免疫システムを使った抗体医薬の開発では、「世界で誰もできなかった」という、ある機能性抗体の研究が国内の化学メーカー大手に評価されて共同研究したところ、「急速に技術開発が加速した」という。事業化も視野に入ってきたことで、同社の技術を使ってCOPD(肺気腫)や肺線維症などの呼吸器疾患、自己免疫疾患向けの創薬を目指し、国内外の製薬会社との交渉が始まった。
 これに加え、低分子薬についても、認知症の睡眠障害薬をオランダの企業とアライアンスし、共同研究に乗り出している。いずれも2019〜2020年には上市される見込みという。

誰も手掛けない最先端の研究をしたくて創業

 高山氏の「誰もやらないことをやる“逆張り”の発想」が実を結びつつある。COPDは「病気として認知されておらず、創薬を目指す企業も少なかった」。認知症薬についても、「大手は根治薬の開発に没頭しており、睡眠障害や徘徊、妄想などの個別の症状に特化した創薬は誰もやっていなかった」。だが、COPDについては薬で治せることが分かってきており、認知症も根治薬開発の困難さが表面化する中で、同社のシーズに注目が集まっているわけだ。
 東大で薬学博士号を取得した高山氏は、中堅の製薬会社に入社。その会社と、そこから派遣された米国の病院で、リウマチや免疫、呼吸器・循環器疾患などの基礎研究に携わった。ただ、組織の中では自分が思うような研究ができないことも多く、「誰も手掛けない最先端の研究をしたい」と、2006年に39歳で創業した。

まずは大手が失敗した研究テーマから

 とはいえ、最初は1人で独立し研究設備もなかったが、高山氏には勝算があった。会社勤めのころから、新薬研究の周辺情報はビジネスになると考えていた。もちろん、個別企業の研究内容などは知りようもないが、新薬研究用の機器メーカーや日本市場に参入したい外国企業向けなどに、新薬開発のトレンドや売り込み方などのコンサルタントを始めたところ、「すぐに軌道に乗った」(同)。
 転機となったのは、翌年に埼玉県川口市にあるインキュベーション施設に入居したこと。そこで、外部からの受託研究や動物試験の仲介などを始めたが、自ら研究をしたいという創業時からの願いを実現するため、専門の研究者を雇い、待望の医薬品シーズの開発が始まった。「新しいコンセプト」が高山氏のモットーだけに、まず製薬大手が失敗した研究テーマを復活させることから始めた。「過去に失敗した研究を、視点を変え、違うシナリオで、現在の技術を使って研究すれば成功する可能性がある」(同)ためだ。
 実際、抗体医薬、低分子薬とも高山氏が将来、問題になると予測して研究を進めてきた。とくに肺疾患については、工業化の進展による大気汚染が表面化しているアジア諸国で大きなテーマとなると予測。現に、「中国のPM2.5が問題となっており、マーケット予測が当たってきた」と、自身の読みに自信を深めている。

経営や営業などさまざまな支援を受けられる施設

高山代表取締役(左端)
「誰もやらないが、将来確実に問題となる疾患をテーマとする」と話す高山代表取締役(左端)

 研究内容や技術に自信はあったが、高山氏自身、「ウイークポイントは営業」との自覚はあった。まして事業化が本格化するだけに、営業強化は不可欠だ。
 そこで同社は一昨年、中小機構が運営するインキュベーション施設「北大ビジネス・スプリング」に移転した。札幌市出身の高山氏はもともとUターン志向が強く、営業や経営などさまざまな面で支援を受けられる同施設を転居先に選んだ。その後はインキュベーションマネージャーらから経営管理や金融機関との交渉、展示会・商談会への出展サポートなどで支援を受け、「企業の幅が広がり、非常にありがたい」と話す。
 高山氏の先見の明により、創薬分野で独自のポジションを獲得した。「抗体や低分子薬に続く次世代のシナリオは温めている」という同社が、札幌発の新薬開発で異彩を放ち続けそうだ。

 

北大ビジネス・スプリングチーフIM
松居 正道 氏
稼ぐ力をつけてもらう
 
松居正道氏

 ゼネコン(総合建設会社)で技術や営業を経験した後、北海道内で中小企業診断士として活動を始め、今年4月に北大ビジネス・スプリングのチーフインキュベーションマネージャー(IM)になりました。
 ベンチャー企業の課題は、資金調達、販路開拓、人材確保など多岐にわたりますが、とくにベンチャー企業は研究開発志向が強いため、支援するために重要となるのが事業計画書の策定だと思います。計画書は資金供給者や顧客、提携先などの外部関係者、さらに会社内部のコンセンサスを得るために平易な内容とすることが必要で、この点について入居企業と議論する機会を設けるよう心がけています。入居時の事業計画書をブラッシュアップし、修正計画を実行したうえで、さらに修正するというPDCAを回し、稼ぐ力をつけてもらうことを重要視しています。
 こうしたプロセスを経ていくには、入居企業との信頼関係を築かなければできないことであり、コミュニケーションをたくさんとっています。
 これまでの支援実績と、中小機構の他のインキュベーション施設の知見を生かし、道内の関連機関や士業らの専門家との連携、中小機構の諸施策も活用し、さらには北海道大学との産学連携も進めて実績を積み上げていきたいと思っています。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年10月15日発行 第1130号

ご紹介した施設の詳細

北大ビジネス・スプリング