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第8回 太陽電池の銅配線実用化へ【マテリアル・コンセプト】

伸びる!産業の先駆者たち─インキュベーション施設で事業化に挑むベンチャー

震災復興への貢献目指して起業─東北大学連携ビジネスインキュベータ─

 

マテリアル・コンセプト
【設立】2013(平成25)年4月
【事業内容】太陽電池、電子部品用配線材料としての銅ペーストの開発・製造
 
東北大学連携ビジネスインキュベータ(T-Biz)
【開設】2007(平成19)年8月
【居室】ウェットラボ(2タイプ)とオフィスが計36室
 

 

 「世界的な実用化競争の中で、当社が頭一つ抜け出しているという確認ができた」
 東北大学の理工系学部がある青葉山キャンパス(仙台市)の一角。マテリアル・コンセプトの小池美穂代表取締役社長は、中小機構が運営するインキュベーション施設、東北大学連携ビジネスインキュベータ(T-Biz)の一室で、8月上旬の台湾出張の成果を振り返る。
 同社は、太陽電池や電子部品の配線に使われている銀ペーストを銅ペーストに置き換える技術の実用化を目指し、昨年4月にT-Biz内に設立された。東北大学の小池淳一教授らの研究グループが開発した技術で、銀に比べ価格の安い銅を配線材料に使うことにより、太陽電池セルの価格を一気に2割下げられる。

太陽電池のセル生産シェア2位の台湾で手応え

銅ペーストの技術者
銅ペーストの実用化技術に磨きをかける技術者ら

 銅配線技術の研究は世界中で進められているが、銅はシリコン基板中に拡散しやすく、太陽電池の特性を劣化させてしまうことが実用化へのネックとなっていた。小池教授らのグループは、銅ペーストだけではなく、シリコン基板と銅配線の間に拡散を防ぐバリア層を形成する技術も開発することで、この壁を乗り越えた。
 小池社長は、台湾出張に際し、自社商品の名称を「Cu(カッパー=銅)ペースト」から「Cuペースト/バリア」に改めた。太陽電池セルの生産量で中国に次ぐシェアを誇る台湾のメーカーに、同社の技術の特徴をわかりやすくアピールするためだ。
 セルメーカーに新しい配線材料を売り込む際には、セル基板に配線を施した形でのサンプル提供を求められる。小池社長は台湾の技術者から、銅ペーストでそこまでできるのは、今のところマテリアル・コンセプトだけだ、との情報を得ることができた。

会社設立のきっかけは東日本大震災

小池社長
「この地(仙台市)を研究開発型ベンチャーの集積地に」との夢を語る小池社長

 同社設立のきっかけは、2011年3月の東日本大震災に遡る。大津波に襲われた石巻市を訪れ、その惨状に衝撃を受けた小池教授が何か復興に貢献する方法はないかと思案していたときに、楽天ゴールデンイーグルス(当時)の田中将大投手の活躍に地元の人たちが勇気づけられているのを見て、「自分たちの得意分野で活躍することが、いちばんの貢献になる」と気がついたのだという。
 震災で自動車産業などのサプライチェーンが国内外でマヒするなど、「東北にはものづくりのポテンシャルがあり、大学にも技術シーズがたくさんある。それらで事業を起こせば雇用が生まれる。自分たちはその起爆剤になりたい。そして、原子力発電に代わる低コストの再生可能エネルギーを補助金に頼る事なく普及させる一翼を担いたい」と考えた。
 小池社長は、政府系機関で大学の技術を事業化する組織の事務参事、科学技術コーディネータを経て、大学発ベンチャーの役員も経験するなど、研究開発型ベンチャーの経営には打ってつけのキャリアを持つ。創業の準備段階から、資金調達などにその才覚を発揮してきた。

まずは国内向け量産、そして数年後のIPOを目指して

 まず、文部科学省が大学発ベンチャーの事業化を支援する2012年度の「大学発新産業創出拠点プロジェクト(START)」に採択され、同事業によるベンチャー設立第1号となった。会社設立後の昨年8月には、「ダイムラー・日本財団イノベーティブリーダー基金」の支援金を獲得した。
 さらに、今年3月には産業革新機構と大和企業投資に第三者割当増資を実施。同5月には新エネルギー・産業技術総合開発機構の助成金制度「イノベーション実用化ベンチャー支援事業」にも採択された。
 一方で、大手総合電機メーカーのベテラン技術者を採用するなど、人材も順次増やし、実用化技術に磨きをかけてきた。
 すでに、銅ペースト供給先の候補は数社に絞った。その中から「今年中にプレーヤーを決め、サンプル供給から始めて2016年に量産に入る」(小池社長)計画だ。その前に、国内の電子部品メーカー向けの量産が先行する見通しだという。IPO(新規株式公開)も6年後の2020年を目指している。

 

東北大学連携ビジネスインキュベータチーフIM
大原 隆義 氏
早く成功事例を出したい
 
大原隆義氏

 東北大学連携ビジネスインキュベータ(T-Biz)は開設以来、インキュベーションマネージャー(IM)は専門家ではなく、中小機構の職員が務めています。私も、昨年4月に就任する直前は東京本部のインキュベーション事業課(現創業ベンチャー支援課)に勤務していました。
 入居企業からの相談として多いのは、販路開拓と海外展開ですね。東北大学発ベンチャーには、全国市場や海外市場を狙っている企業が多いのです。全国組織である中小機構がとくに得意とする分野なので、対応に力を入れています。
 昨年10月には入居企業の紹介や関連情報を掲載した隔月刊紙「T-Biz便り」を創刊しました。マテリアル・コンセプトのように可能性のある企業がたくさんあるのに、これまで情報発信ができていなかったからです。宮城県や仙台市などの関連部署に郵送しているほか、ホームページからもダウンロードできます。
 私の夢は早く成功事例を出すことです。震災の影響もあって、、ここを卒業して自分の工場を作ったり、株式を公開したりした事例がまだないのです。近年中に工場を建設する予定の企業があるので、今から楽しみにしています。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年9月1日発行 第1127号