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第7回 ソイチェックで“腸内大豆力”を検査【ヘルスケアシステムズ】

伸びる!産業の先駆者たち─インキュベーション施設で事業化に挑むベンチャー

今期目標は2万キット販売 3年以内に米進出へ─名古屋医工連携インキュベータ─

 

ヘルスケアシステムズ
【設立】2009(平成21)年3月
【資本金】1650万円
【事業内容】疾病予防・未病検査の受託分析、機能性食品の研究開発など
 
名古屋医工連携インキュベータ
【開設】2005(平成17)年11月
【居室】試作研究室、実験室、オフィスなど合計50室
 

 

 ヘルスケアシステムズは、疾病予防・未病検査の受託分析などを事業内容とする名古屋大学農学部発のベンチャー企業。設立は2009年3月、中小機構のインキュベーション施設である名古屋医工連携インキュベータ(NALIC)内に本社を置いている。
 同社の検査技術は、抗酸化食品研究の第一人者である大澤俊彦・名古屋大学名誉教授(現愛知学院大学心身科学部学部長・教授)の研究開発が基になる。大澤教授が保有する抗体作成技術と大手自動車部品メーカーのセンサー技術を合わせた産学連携により、簡便で高精度に測定できる検査機器を開発。従来法と同等の精度を約10分の1の費用での測定が可能になった。
 この検査技術の活用を目的として、大澤教授と共同研究などに携わっていた瀧本陽介代表取締役が事業化したのがヘルスケアシステムズだ。「誰もが簡単かつ安価で測定ができる検査システムを通し、疾病予防と健康長寿社会を実現させたい」と瀧本代表は起業の目的を語る。

今力を入れているのは郵送で手軽に検診できる「ソイチェック」

エクオールの検査
送られてきた検体からエクオールの有無を調べる

 現在、力を入れているのは郵送で手軽に検診ができる「ソイチェック」だ。健康志向が強まる中で大豆に含まれるイソフラボンは、更年期症状の緩和や骨密度の維持など、主に女性の健康に寄与する物質として注目されている。ただ、誰もがイソフラボンの“恩恵”を受けられるわけではない。
 「食品機能性と対応するバイオマーカーの研究を続けるうちに、大豆イソフラボンの効果に個人差があり、その原因は腸内細菌の有無にあることがわかった」と瀧本代表は説明する。大豆に含まれるイソフラボンは、腸内細菌の働きでエクオールという成分に変化し、これが骨密度の減少などを防ぐ働きをする。
 しかし、イソフラボンをエクオール成分に代謝させる腸内細菌を保有している人は、日本人で50〜60%という研究報告がある。欧米人は20〜30%と少ない。日本人でも若い世代は、食の欧米化が影響しているのか20%程度となっている。

販売数は右肩上がり、3年以内には米国にも進出を

 そこで海外で論文発表が急増しており、食品メーカーも研究対象として注目していたエクオールに着目し、簡便な検査方法の開発を始めた。イソフラボンもエクオールも摂取してから1日で体内から排出されるので、尿に含まれるエクオールを調べれば腸内細菌の有無がわかる。それもわずか一滴の尿があれば十分なので、郵送することが可能だ。
 当初は研究機関を対象に販売する計画だった。ところが、テレビでエクオールが紹介されたことで一般からも問い合わせがあり、消費者向けの郵送検診キットへと開発方針を切り替えることにした。とはいえ商品化した2012年の販売数は、わずか200キット。その後、雑誌で紹介され認知度が高まると検査依頼が急増。昨年は2500キット、今年は2万キットを販売目標としている。さらに「3年以内には米国にも進出したい」(瀧本代表)と意気込む。
 ソイチェックの事業を順調に伸ばせた背景には「普通のオフィスではできない尿検査、血液検査まで対応可能なNALICの施設であったから。入居企業同士の交流もでき、お互いのメリットを共有し合える取引も始まっている」という。

ソイチェックを足掛かりに分析、研究、食品開発など幅広い事業に挑む

瀧本代表
「事業を成長させ、早くNALICを卒業することが恩返しになる」と話すヘルスケアシステムズの瀧本代表

 一方、瀧本代表たちは多項目同時測定できる検査技術のメリットを生かし、5つの感染症を1ドルで検査できる装置を開発中だ。中小機構のF/S(事業化可能性調査)支援に応募し、インド南部で感染症検査の実態と現場ニーズの把握も実施した。「今後は検査装置の低コスト化など改良を行い量産化していきたい。まだハードルは高いが、やりとげたい」と瀧本代表は今後の方針を語る。
 事業展開は、ようやく軌道に乗りかけてきた。ソイチェックを足掛かりに分析・研究、食品開発など有望で幅広い事業に挑んでいく。「手掛けたいことは多いが、当面目指さなければいけないのは事業規模の拡大と安定した収益をあげること。そしてNALICを卒業すること」と瀧本代表は強調する。NALICに入居したからこそ「ここまでできた」と付け加える。

 

名古屋医工連携インキュベータチーフIM
石黒 裕康 氏
入居企業と“伴走”を運営方針に
 
石黒裕康氏

 当施設は、遺伝子組換え実験(P2まで)、病原体等微生物取扱い実験(BSL2まで)が可能なウエットラボをメーンとしています。この特徴に加え、入居者が自由に使える無料セミナールーム、入居者同士が情報交換や交流が図れるラウンジを備えていることも自慢のひとつ。
 大学シーズと連携し、現在、新ヘルスケア分野の事業を手がける企業は20社以上も入居しています。
 私は、制御系のシステムエンジニアを経て、医療機器メーカーで薬事承認など各種申請や技術営業などに携わってきました。この経験を生かせる場としてNALICの設立準備段階から関わり、今年4月、チーフインキュベーションマネージャー(IM)に就きました。日々の運営方針として心がけているのは、入居者と常に「伴走」することです。入居者から寄せられる事業推進上の悩み相談などに対し、これまで蓄積した知識を元に、中小機構の支援メニューを活用したり、行政、支援機関へつなげたり、適切なアドバイスを行ってきました。
 NALICは、中部地域における新事業創出を促進することを目的としています。そのためには設立から9年間で培ったノウハウやネットワークを最大限に発揮していくことが重要です。
 今後も地域企業にも活用してもらえる新ヘルスケア産業の育成・交流拠点となっていくよう運営していく考えです。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年8月1日発行 第1125号

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