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第5回 血液で消化器系がんの有無を判別【キュービクス】

伸びる!産業の先駆者たち─インキュベーション施設で事業化に挑むベンチャー

近い将来年商5億円めざす IPOの実現も─いしかわ大学連携インキュベータ「i-BIRD」─

 

キュービクス
【設立】2004(平成16)年8月
【資本金】5730万円
【事業内容】遺伝子発現の受託解析、臨床研究におけるデータ管理・分析など
 
いしかわ大学連携
インキュベータ(i-BIRD)
【開設】2006(平成18)年9月
【居室】試作ラボ4、ウェットラボ33、ドライラボ5、スモールオフィス3
 

 

 職場などの定期健康診断で採取される5cc程度の血液で、胃や腸など消化器系がんの有無を識別するビジネスで急成長している企業がある。金沢大学発医療ベンチャーのキュービクスがそれだ。金沢大学との共同研究をもとに血液の遺伝子発現解析を行い、がんの検出感度が極めて高い「消化器がんマイクロアレイ血液検査」によるDNAチップを用いたスクリーニング事業を平成23年8月から医療機関向けに本格的に提供、中部地域を中心に東京、大阪などでこの事業サービスを採用する病院はすでに100機関を超え、さらに拡大する勢いだ。

4日かかっていた検査解析がわずか4時間に

マイクロアレイを使った血液検査の様子
マイクロアレイを使った血液検査の様子

 キュービクスの丹野博代表取締役社長は「世界で初の事業化だけに、国内および海外での関心も非常に高い。今後は消化器系以外の臓器にも検査対象を広げるとともに、検査体制の効率化を図り、これまで4日かかっていた検査を4時間に短縮、受託料金も安価な形で提供できるようにしたい」と意気込みをこう語る。
 現在、消化器系のほかに肺がん、乳がん、前立腺がんなどを判別するための臨床試験を医療機関の倫理委員会を通じて進めると同時に、検査作業の効率化、低廉化に向けた新システムの開発についても国内の大手医薬品製造会社、医療機器メーカー、金沢大学など5者による共同開発を進行中だ。
 「手作業による採血管から検査に使う物質を採取する今の方法だと、月間200例ほどで手詰まり状態になり、結果報告が遅れる。新システムは4時間で判別が可能となり、受託料金も3分の1程度の約2万円で利用できるようになる」(丹野社長)見通しで、2、3年後には消化器系以外のがん識別を含め開発が完了する計画。

ドイツやインドと共同開発契約を締結、今後も世界各国へ

 海外市場の開拓にも着手し、ドイツのバイオベンチャー企業、ZMO社と共同開発で契約を締結、昨年2月から臨床試験をスタートさせている。ドイツ国内で約200例の臨床試験を実施し、性能を確認した上で欧州各国での検診事業を展開する。キュービクスはDNAチップを輸出するほか、検査・解析の手法を指導する。また、昨年にインドのベンチャー企業、アベスタージェン社と共同開発契約を交わした。約300事例の臨床試験を行い、インド国内のほか中東やシンガポールでの事業展開を目指す。これらの臨床試験の検査・解析で異なる人種の解析データを収集、米国など世界各国への事業展開も実現可能な段階に入るなど、市場は大きな広がりを見せている。

苦しかったのは事業が立ち上がる前の資金繰り

丹野社長
「血液からがんを識別する世界初のシステムを国内外で広めたい」と話す丹野社長

 丹野社長がキュービクスを設立したのは平成16年8月。外資系医薬品メーカーで中部地域の病院や大学での営業を担当していた時、金沢大病院の金子周一教授から臨床データなど大学の研究成果を事業化する人材の紹介を依頼され、「その会社、私にまかせてくれませんか」と名乗り出た。19年1月に「i-BIRD」に入居、6月に金沢大学、キュービクス、北陸の主要な16の公的病院が集まり、血液で消化器系ガンを判別する臨床試験を各機関の倫理委員会の承諾のもと多施設共同研究としてスタートさせた。
 臨床試験の結果、21年9月にがんの有無を判別する遺伝子群を世界で初めて発見し、特許を出願。パテントは金沢大学、キュービクスは独占的な実施権を取得する契約を結び、22年にがんを診断できるDNAチップによる解析などすべての技術を確立、23年8月から検診や人間ドックでの自費診療サービスの提供を始めた。この間、石川県や国の開発補助金、中小機構などが出資する「大阪バイオファンド」からの出資を受け、設備投資や営業拠点を整備した。これまでに累計で2500例を医療機関から受託する実績をあげている。
 今年8月で設立10年になるが、「苦しかったのは、事業が立ち上がる前の資金繰り。i-BIRDに入居できたことで社会的な信用度が高まり、大阪バイオファンドをはじめ公的機関から資金調達できたことはありがたかった」(丹野社長)と振り返る。24年3月期に初の黒字を計上、26年3月期の売上高は倍増の2億円の見通しで、近い将来、年商5億円をめざす。丹野社長は「3年後にはIPO(新規株式公開)を実現したい」と闘志を燃やしている。

 

いしかわ大学連携インキュベータIM
鈴木 浩吉 氏
「活きる支援」実践が使命
 
鈴木浩吉氏

 平成19年4月に当施設のインキュベーションマネージャー(IM)に着任しました。入居企業をはじめ県内の企業や大学、支援機関、行政機関などとのネットワークの構築、情報交換に力を注ぎ、特にバイオ、食品、環境、医療分野の新事業創出に取り組む企業の研究開発や事業化をサポートしてきました。
 この6年を振り返り、大学の研究シーズをビジネスに結びつけることの難しさを痛感する一方で、地域の企業や大学の特徴を学ぶことができたことは大きな収穫です。
 キュービクスは、大学発ベンチャーとして、今後大きく発展する可能性を感じています。同社には知財に精通した人材紹介、資本強化策の提案、医療機関の紹介、助成金などの情報提供といった支援を行ってきましたが、30年近く勤めた都市銀行での経験やその後の起業支援のノウハウを駆使し、今後もより力強くサポートしていきたいと思います。
 i-BIRDのIMとして、引き続き研究開発における人材提供や資金調達など入居企業が抱えている課題や、ニーズを把握、大学とマッチングする機会を創出するとともに、入居企業および地域の中小・ベンチャー企業に対し「活きる支援」を行うことが使命だと考えています。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成25年2月1日発行 第1113号

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