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第3回 技術+アイデアで勝負【トーキーシステム】

伸びる!産業の先駆者たち─インキュベーション施設で事業化に挑むベンチャー

教育現場などのIT化を支援─岡山大インキュベータ─

 

トーキーシステム
【設立】2009(平成21)年8月
【資本金】100万円
【業務内容】デジタルサイネージシステム、eラーニングシステムの開発・販売
 
岡山大インキュベータ
【開設】2008(平成20)年9月
【居室】ラボタイプ28室
 

 

展示会でのeトーキー説明会
5月に開かれた教育関連の展示会では来場者に対し、「eトーキー」の模擬授業の説明がなされた(パナソニックのブース)

 「大手企業とも取引できるようになり、経営も軌道に乗りつつある」。こう喜ぶのは、トーキーシステムの岡秀明代表取締役だ。
 同社はIT(情報技術)を使った教育システム、eラーニング向けの「eトーキー」、デジタルサイネージ(電子看板)向けの「@サイネージ」の両システムを商品化。いずれも、急速に普及しつつあるタブレット端末を利用した。
 eトーキーは電子黒板と連動させ、黒板の画面をタブレット端末に表示できる。例えば、先生が黒板に文字などを書くと、それが生徒の手元の端末に表示される。逆に、生徒が書き込んだ内容をその数に応じて黒板を分割して一斉に表示するなどの機能も持つ。画像や動画などの資料も読み込めるなど、教育現場のICT(情報通信技術)化を大きく進められる。
 「黒板と端末間のレスポンスの速さ」(吉岡壱哲取締役)という特徴が評価され、パナソニックがトーキーシステムのソフトウエアを採用し、自社の電子黒板などと合わせてすでに首都圏の複数の小学校で試験導入されており、この9月から本格販売を始めた。
 一方の@サイネージは、タブレット端末で画像や音声、手書きの文字などのコンテンツを簡単に作成でき、サイネージに送信もできる。操作の簡便性や低コストが評価され、1年前から岡村製作所が販売、首都圏の大手スーパーでも採用されている。店舗では「本日のおすすめサービス」「タイムセール」など日替わりの店内告知に利用されているという。

施設に入居を決めた目的と理由

岡代表取締役、吉岡取締役と創業メンバー
オフィス内でタブレット端末を手にする岡秀明代表取締役(左端)、吉岡壱哲取締役(左から2人目)と創業メンバー

 岡氏らがトーキーシステムを設立したのは2009年。岡氏は地元・岡山で商業デザイン会社を経営していたが、吉岡氏らが開発したパソコンを使った独自の教育システムを知り、新規事業を探っていた岡氏が新会社設立を決心した。当初は「簡単に設立できる」(岡氏)という理由から、有限責任事業組合(LLP)だった。
 当時はタブレット端末が出始めの頃で、パソコンより安価なタブレットを使ったeトーキーの開発に成功。教育会社向けにOEM(相手先ブランドによる生産)供給したり、学習塾にも採用された。大手企業とも商談を始めたが、LLPだと取引口座を作るのも難しいこともあって、2012年に株式会社化した。同社は岡山大学病院看護部の教育用システムを開発した経緯もあって、岡山大インキュベータの存在を知り、「岡山のベンチャーではネームバリューもない。信頼感を得るため」(岡氏)に、同年秋にインキュベーション施設に移転した。
 移転したことで、地元との取引も拡大した。岡山大学教育学部付属中学校がこの10月からeトーキーの実験運用を始めたのだ。これは岡山大インキュベータの鈴木幸次チーフインキュベーションマネージャー(IM)の仲介で実現した。教育分野で新しい試みをしたいという同大の意向を知った鈴木氏がeトーキーの採用を勧めたためだ。メンテナンスやアフターフォローも同社が担うことになり、「現場の声を直接聞け、生のニーズを知ることができる」(吉岡氏)メリットが得られそうだ。

国の政策が更なる追い風に

 さらに追い風となりそうなのが、国の政策だ。総務省は教育現場のICT化を推進するため、10年度から「フューチャースクール推進事業」を展開。電子黒板とタブレット端末を使ったICT教育の普及を目指す。今年度で実証期間を終えるが、計画では14年度に全国100地域で生徒1人1台のタブレット端末を配布。19年度までに全国の小中学校に普及させる。eトーキーも採用されるシステムの候補に挙がっており、すでに総務省に「デモンストレーションした」(吉岡氏)という。大手企業のライバルもいるが、「当社のシステムの反応速度はライバルに勝っている」と自信をみせる。
 eトーキー、@サイネージとも、アンドロイド、iOS、ウインドウズなどいずれのOS(基本ソフト)にも対応可能。吉岡氏は「技術プラスアイデアがないとビジネスできない。今後も幅広い使い方を提案できるよう、外部企業と連携して開発を進めたい」と意気込む。岡山発のベンチャーが、教育現場や小売りの店頭などを大きく変える可能性もある。

 

岡山大インキュベータチーフIM
鈴木 幸次 氏
産学連携と助成金獲得に力
 
鈴木幸次氏

 当インキュベータの運営理念として、「新しいビジネスの創出・成長・発展を支援する地域の拠点となる」ことを掲げています。それを実現するため、岡山大学の敷地内にあるという立地の特性を生かして、まず地元企業と大学との研究開発テーマをどう発掘するかという産学連携に力を入れています。次に、開発テーマが決まったら資金が必要になりますから、研究開発助成金の獲得支援が重要になります。
 私は岡山県の産業振興財団で長い間、中小企業支援をしてきた経験から、助成金の獲得ノウハウも持っています。例えば2012年度の経済産業省補正予算で実行された「ものづくり補助金」では、当インキュベータ入居企業の8社が採択されました。また、13年度小規模企業事業者活性化補助金でも、トーキーシステムを含めて入居企業3社が採択されました。
 トーキーシステムは、とくに教育システムで優れた技術やビジネスモデルを持っており、岡山大学も教育学部ぐるみでICT化を進める計画です。こうした中でインキュベータとしても「教育」を大きなテーマとして掲げ、シンポジウムを開くなど教育システムのメッカにしたいと考えています。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成25年10月15日発行 第1106号

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岡山大インキュベータ