中小機構について >  情報提供活動 >  中小企業施策普及紙「中小企業振興」 >  伸びる!産業の先駆者たち >  第1回 iPS関連技術を加速【iPSアカデミアジャパン】

第1回 iPS関連技術を加速【iPSアカデミアジャパン】

伸びる!産業の先駆者たち─インキュベーション施設で事業化に挑むベンチャー

外部企業との連携本格化─クリエイション・コア京都御車─

 

iPSアカデミアジャパン
【設立】平成20年6月
【資本金】3億円(25年5月現在)
【業務内容】iPS細胞に関する特許発明の実施許諾、同細胞の提供、同細胞関連共同研究・開発、同細胞事業化の支援など
 
クリエイション・コア京都御車
【開設】平成18年
【居室】実験研究開発室タイプ21室、オフィス研究開発室タイプ15室
 

 

村山昇作・代表取締役社長
「中小企業、製造業の技術をiPS細胞に活用したい」と話すiPSアカデミアジャパンの村山昇作代表取締役社長

 「平成26年3月期には創業以来、初めて黒字化しそうだ。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った再生医療の実現には時間がかかるが、創薬への応用は進みつつあり、2、3年内にiPS細胞を使うことが標準になるようにしたい」
 こう語るのは、京都大学発ベンチャー、「iPSアカデミアジャパン」(iPS-AJ)の村山昇作・代表取締役社長だ。
 iPS細胞は昨年、京大の山中伸弥教授がノーベル医学・生理学賞を受賞して脚光を浴びた。この“万能細胞”の普及を目指して特許許諾や関連技術の共同開発、事業化支援などを目的として平成20年に創業したのがiPS-AJだ。
 同社はこれまで、大企業からベンチャー企業に至るまで80件以上のライセンス契約を結んだり、細胞培養などの機器の共同開発の実績を積んできた。当初は「ロイヤルティーの料金設定も分からず、契約書も一から作るなど試行錯誤を続けてきた」(村山社長)が、許諾料を安価に設定したことなどで、「ライセンス許諾や細胞販売、有償の細胞取り扱い体験講習会などが上向いている」ことから、創業から5年を経て黒字を見込めるようになった。

中小の参入促す

ショールーム
iPS細胞自動培地交換装置などをそろえるiPSアカデミアジャパンの現在のショールーム。新拠点はここを拡張して設置する。

 さらなる成長を図るために同社がいま取り組んでいるのが、応用研究の加速や細胞の普及を目指した外部企業との連携だ。
 一つは、7月に設立を公表した「iPS細胞ビジネス協議会」。すでにiPS関連事業に参入している企業と、新規参入企業とのマッチング活動を展開する。企業同士の強みを合わせたり、弱みを補完することなどによって、関連技術を一層推進する考えだ。同協議会は会員制で参加企業を募集中だが、「100社以上の応募がくる」(同)と予想。個々の企業が自社技術などについて報告するミーティングを開くなど、8月から具体的な活動を始める計画だ。
 もう一つが、7月に中小機構近畿本部と連携協定を結んだこと。これに基づき、同社が入居するクリエイション・コア京都御車に共同でショールーム機能を備えたビジネス促進拠点を9月上旬にもオープンする。この拠点には中小機構の専門コーディネーターを常駐させ、情報発信や関連機器のデモンストレーションを行うほか、セミナーなどを全国展開して情報を発信する。とくに関連機器では、中小企業が持つものづくり技術を生かして共同開発し、事業への参入を促す。「iPS細胞の基礎研究では日本は世界のトップレベルだが、応用研究では海外に比べ相対的に遅れている。応用研究を進めるには、細胞培養や分析、計測機器などのハードが必要」との考えからだ。iPS細胞に関する要素技術やニーズなどを広く外部企業に知ってもらい、これら機器開発に必要な技術を集結して応用研究の促進につなげるのが狙いだ。

短期間で連携成立

 こうした連携が生まれたのも、同社が24年2月、中小機構のインキュベーション施設「クリエイション・コア京都御車」(京都市上京区)に移転したことが契機だ。常駐するインキュベーションマネージャー(IM)から、販路開拓や補助金・助成金申請、バイオ分野のマッチング機会創出などの支援を受けたという。
 こうした中で連携協定に至ったのは、中小機構近畿本部が「地域特性に合った今年度の事業を」(小渕良男本部長)と考えていたところ、iPS細胞の研究開発加速にはもっと中小企業の力を引き出す必要があると考えたIMが、村山社長らと話し合い、短期間で連携協定の調印につなげた。
 村山社長も、「新拠点設置では中小機構にかなりの部分を頼った。また、セミナーなどで全国に情報を発信することは当社だけでは無理。それを提案してもらい、実現できることは非常にありがたい」と評価する。
 世界から注目される日本発の最先端技術であるiPS細胞。関連機器の開発などが進めば、再生医療医療にとどまらず、創薬への応用も進み、新たな成長分野としても期待される。
 「患者を助けることがミッション」(村山社長)というiPS-AJの理念実現に向けた歩みが加速することが期待されている。

 

クリエイション・コア京都御車チーフIM
山戸 俊幸 氏
入居企業の特徴を前面に
 
山戸俊幸氏

 バイオベンチャー企業の研究員、バイオベンチャー支援企業を経て、2年前に当施設のインキュベーションマネージャー(IM)になりました。支援機関の広域連携やバイオ関連企業同士のマッチングなどを手がけていますが、ライフサイエンス分野の場合、経営支援するにも金額が大きくなったり、各社とも独自の最先端技術を扱うため、その内容を明らかにできないなどIMとしての出番が限定されるケースも少なくない。
 ただ、iPSアカデミアジャパン(iPS-AJ)さんが入居してきたことで、iPS関連産業の盛り上げ役として、当施設が一役買わなければならないと思っていました。常駐していることで、入居企業の人と毎日顔を合わせれば、コミュニケーションがスムーズになり、スピード感を持って動けます。今回の連携協定でも、支援する近畿本部と村山社長の意向のベクトルを合わせられたことで実現できたと思います。
 京都御車は京都大学や京都府立医科大学などからも近く、産学連携も盛んです。iPS-AJさんの入居以来、ベンチャーキャピタルや証券会社などが多く訪れるようになり、これら外部企業との連携も進め、入居されている企業が活きる支援を心がけたい。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成25年8月15日発行 第1102号

ご紹介した施設の詳細

クリエイション・コア京都御車