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第7回 プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選─宿泊業と中小企業が「ウィン・ウィン」に─

販路開拓へスクラム 新連携・地域資源活用・農商工連携認定企業と支援ネットワーク

 

女性向け商品中心に売り込む

モノ・イチへ出展、3軒の旅館が試供品として

オーラテックの江口取締役
「どこでも売っているものでは売れない。商品に希少価値を持たせたい」と話すオーラテックの江口取締役

 「3年前に『椿なの』を発売し、大手の生活雑貨店などを通じて販売していたが、置いておくだけではなかなか売れない。そこで、ホテルや旅館の来客に効果を説明して使ってもらったところ、リピーターが増えた」
 1月24日に開かれた「プロが選ぶ日本のホテル・旅館100選」(旅行新聞新社主催)祝賀会場内に中小機構が設けた展示スペース「NIPPON MONO ICHI」(ニッポン・モノ・イチ)でこう喜ぶのは、オーラテック(福岡県久留米市)の江口さだ子取締役だ。
 「椿なの」は、久留米産の椿を原料にしたヘアケアローション。昨年のモノ・イチに出展したところ、3軒の旅館などが大浴場の女性用パウダールームに来客用の試供品として置いてくれた。天然原料だけにこだわった無添加と、水のようなさらりとした触感ながら、髪にうるおいと艶を与えるなどの効果を説明したポップ広告とともに設置したところ、宿泊中に実際に使って効果を実感した消費者から注文が相次ぎ、好評を博しているという。扱ってくれたうちの1軒の旅館から他の旅館も紹介してもらい、現在では10軒に配置し、「旅館での販売が店舗販売を逆転する」(江口取締役)までに育った。「使ってもらって初めて、商品の良さが分かってもらえる」と考え、販路を定めた同社の戦略が功を奏している。

自社の「特許技術」と原料の「椿」で国の認定、商品化

 「水と油」と称されるように、本来なら界面活性剤などを使わないと混ざり合わない椿油と水を、化学物質を一切使わずに混合させることに成功したのは、13件の特許を保有する同社独自の「マイクロバブル(超微細気泡)技術」のおかげだ。
 同社はもともと、10〜20マイクロメートル(1マイクロは100万分の1)の気泡をつくる技術で環境関連機器などを製造していたが、この技術を使えば「気泡が汚れを吸着するため、少量のシャンプーで汚れが落ちる」(同)ことから、7年ほど前に美容室や一般家庭向けシャワーヘッドを商品化。さらに、油をナノ(1ナノメートルは10億分の1メートル)サイズにすると水と容易に混ざるようになるが、「なかでも椿油が一番髪や肌に効果が高い」(同)ことが分かり、「椿なの」の商品化に至った。
 原料となる椿は当初、伊豆大島から仕入れていたが、椿の苗木生産量で日本一の地元・久留米産に変更。これで平成24年に国の地域資源活用計画に認定され、「売り方、マーケット分析、展示会出展などで中小機構からさまざまなアドバイスを受けた」(同)ことで、独自の販路開拓手法で成果を上げ始めた。「椿なの」シリーズは足に塗るフットケアローションなど4種類を展開するが、江口取締役は「目標は全国の旅館など50軒に置いてもらうこと」とさらなる販路拡大を見込む。

規格外の生姜を使用したことで国の認定、モノ・イチへ初参加

イトク食品の小倉代表取締役
来場者に商品特性を説明するイトク食品の小倉代表取締役

 モノ・イチで同じ女性をターゲットに、生姜を使ったハーブティーなどをアピールしたのが、イトク食品(広島県尾道市)。小倉一洋代表取締役は「生姜には体を温める効果などがあり、冷え症や便秘に悩む女性に適している。飲めばリラックスでき、よく眠れる」と効果を訴える。
 原料の生姜は、高知県産の規格外品を使用したことで、21年に農商工連携計画の認定を受け、これまでスーパーなどを販路としていたが、今回、初めてモノ・イチに参加した。小倉氏の狙いは、客室のテーブルに置かれている無料のお茶の代わりだ。まずは試飲してもらい、旅館などの売店で販売したい考え。展示会では「実際に女将さんらに興味を持ってもらえた」としており、手ごたえを感じたようだ。

 

旅行会社が選んだ『ホテル・旅館100選』へ、営業のチャンス

 「ホテル・旅館100選」は全国の旅行会社の投票によってホテルや旅館をランキングするイベントで、今回が39回目。会場には全国から宿泊業者や旅行会社など約600人が参集した。「バイヤーがいない旅館を販路としてとらえた」(中小機構の山本聖・経営支援部プロジェクトマネージャー)ことで、中小機構の地域活性化パートナー企業の旅行新聞新社との連携が実現し、2年前から祝賀会場でモノ・イチを開くこととなった。新商品と出合う機会が少ないホテルや旅館と、ものづくり企業とのマッチング機会として、両者から「貴重な機会になるという評価をいただいている」(同)。
 訪日外国人観光客は昨年、初めて1000万人を突破した。2020年の東京オリンピック・パラリンピック招致では日本特有の「おもてなし」が脚光を浴び、国内外の観光客をもてなす旅館やホテル業は今後、活性化が予想される。旅館やホテルの売り場に優れた商品をそろえれば、おもてなし効果がさらに向上すると同時に、宿泊業と中小企業の「ウイン・ウインの関係」の構築が期待できる。

有島誠氏

毎年、新しい商品提案を実現

旅行新聞新社取締役

有島 誠 氏

 

 ホテル・旅館業界は、団体客や宴会需要の減少などの経営課題に直面しており、どこで収益をあげるかという相談が当社にも寄せられました。解決策の一つとして、建物内の一等地にありながら手を着けられていなかった売店を改革しようと、5年前から当社が主導して「売場改革プロジェクト」を始めました。旅館などはモノを売る知識やきれいに展示するなどのノウハウは意外と乏しく、ここから変えようと思いました。現在まで18軒で実施しています。新しい商材発掘では中小機構に協力をいただき、石川・和倉温泉の加賀屋で、東日本大震災の被災地支援や地元・北陸3県の商材を展示販売したところ、販売増の成果が出ました。この手法をさらに他の旅館などにも展開していこうと考えています。
 これは、旅館側には他にない新しい商材を要望する声が強いからです。中小機構と協力して「日本のホテル・旅館100選」の会場で2年前から展示会を開催し、毎年、旅館などに新しい商品提案をしています。旅行需要や消費は女性が引っ張っています。ホテルや旅館の売店で、値段は高めでも、いいものを納得して買ってもらえるような女性向け商品を中心に充実させたいと思っています。

中小企業施策普及紙「中小企業振興」/平成26年3月15日発行 第1116号

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